猫だ。と思ったら神だった。
はお
第1話 死んだ。と思ったら引き継げた。
家の近所のコンビニでポテチとコーラを買ってとぼとぼ帰る。
というのも、今日も日がな一日自室でゲームをしていたら、当然ながら空腹を覚えた。二階の自室から出て一階の台所で冷蔵庫を漁ったがロクな食べ物がない。
母はこの時間パートに出ている。帰ってくるのはいつも七時過ぎだから、まだ三時間は待たなければならない。
冷蔵庫には肉やら野菜の食材は入っているのだが、僕が調理できそうなものは何もない。シンクの下の棚をごそごそ漁ってみたが、いつもはカップ麺の一つもあるのに、今日は、タワシやらプラスチックの食器みたいなものしかなかった。
しょうがないので財布とスマホを持って、近くのコンビニに行くことにした。最寄りのコンビニは歩いて15分ぐらいのところにある。
オタクニートのぼくにはコンビニに行くにも少し覚悟がいる。高校を卒業してからかれこれ10年近くニートをしている。最近人前に出るのが少し怖くて勇気がいる。
(まぁ、僕になどだれも興味ないか……)
そう思って、少し気が紛れた。
自己紹介が遅れた。ぼくの名前は須藤猛。
タケル。なんて勇ましい名前だけど。少しも猛ってないし、勇ましくもない。喧嘩をしたら子猫にも負けるかもしれない。
コンビニで特大ポテチとコーラを買った。夕飯も遠くないし、さすがに弁当などは買わなかった。財布事情もそんなに余裕はない。
コンビニの隅で立ち話をしていた女子高生が一瞬僕を見て含み笑いを漏らしたように思った。すぐに興味を失って立ち話を再開したが。
僕のようなデブヒキオタニートを見たら当然の反応だと思う。少しの悔しさを感じるが、しょうがない。ゲームやアニメの中のJKは好きだが、実際の女子高生は別物だ。改めて思う。
コンビニを出て、自宅までの帰り道をとぼとぼ歩く。
途中の小さな公園でベンチに座り。コーラのペットボトルのキャップを開けた。一口二口飲む。
(うめぇな)
名前も覚えてない公園だが、僕はこの公園でよく時間をつぶす。こういう、コンビニの帰り道。母と喧嘩して家を飛び出したとき。考え事をしたくて道を歩いている途中。けっこうお世話になってる公園だ。
コーラのキャップを絞めて、とぼとぼ帰途につく。
公園の出口付近に差し掛かった時、目の前を白い猫が横切った。
自然と目がその猫を追った。
猫は、公園の角の十字路で少し立ち止まり、とことこ交差点を横切って行こうとした。
「危ないぞ……」
僕はつい口に出した。
交差点の向こうから何やらぶつかりそうなタイミングで車が走ってきていたのだ。
僕は慌てて、猫の後を追って交差点に入った。
「早く行け!」
僕は猫がびっくりして走るように足でバタバタ音をさせながらオーバーアクションで追った。しかし猫は僕にびっくりして交差点の途中で立ち止まり、後ろを振り返って僕を見つめた。何やらピンクっぽい白に霞色のような薄く明るい緑の目をした猫だった。こんな状況じゃなければゆっくり眺めたかったかもしれない。それほど珍しく美しい。
「ばか。止まるなって!」
案の定、向こうから走ってきた車が、交差点を右折して、猫を轢きそうに……
なったところで、猫に驚いて、ハンドルを切りきれず、僕に突っ込んできた。
一瞬、体に激しい痛みと衝撃が走ったと思ったら、僕の意識はぷっつりブラックアウトした。
【プリンセス・オベリスクのレベル、スキル、アイテム、アクションを引き継ぎますか?】
(んぇ?何周もしたし、もう引き継ぎで……)
【・YES】
【チーターファンタジーのレベル、特技、スキル、アイテム、特性を引き継ぎますか?】
(これも、最初からやり直す気はないので引き継ぎで)
【・YES】
【タイタン・ファイティングの全データを引き継ぎますか?】
(今更全消しは辛い!)
【・YES】
【まっちょ・ブレイバーの…………】
(イエスで)
【・YES】
【エイリアンフロンティアの…………】
(…………)
【・YES】
【エンジェリカ…………】
【・YES】
【フリーズ…………】
【・YES】
…………
・YES
…………
・YES
…………
…………
…………
…………
……
……
…
…
.
.
目を覚ますと、空が宵闇色だった。
(あちゃ。こんな時間まで気絶していたのか)
(まずいまずい、早く帰らないと、オカンに、ど叱られる)
急いで起き上がると体の痛みはない、どころか体がやけに軽い。
あたりが暗いせいでよく見えないが、建物らしきものも舗装されたアスファルトも何もない。
よくよく地面を見ると、ひび割れた乾いた泥のような地面だ。
(あれ?ここどこ?)
一瞬間抜けな疑問が頭に浮かぶ。
ゲームやアニメに慣れ親しんだ僕は、すぐに、転生、異世界、などと言った言葉が出てきた。
そこに突然声がかかった。
「やぁ。のみこみが早くて感心感心。君ならそうだろうとは思っていたけどね」
誰もいないと思っていたところで突然の声だったので、心臓が飛び出そうなほど驚いた。
「わっ!」
恐る恐る周りを見回すと。ぼくの後ろに、白い猫がいた。
先ほどの猫のようでもあり、別の猫のようでもある。
どことなく、アニメじみていて、おまけに背中に黒い羽が生えているのだ。
「やぁ」
「なっ、なっ、なっ」
僕は、口がわなないて思うように口が回らない。
「いきなりですが、説明です」
その猫(?)はそういうと両手(?)を空めがけてかざした。
すると、空から、何か大きな岩のようなものが降ってくるのが見えた。
でかい!
とっさに僕は腕で体をかばうように動いた。
もちろんそんなことであの大きな岩から身を守れるとは思っていないが、咄嗟の反応でそうした。
ガッキーーーーーン!!!
すごい音がして、僕めがけて飛んできた岩が、僕にはじかれて砕けた。
「え。ま。うそ⁈」
「今発動したスキルが、シールドガードLV99」
「え?」
そのスキルは僕が、約20周回ぐらいして手に入れた『プリンセス・オベリスク』のガードスキルの最高レベルである。
ぼくはだんだん事態がのみこめてきた。
「そうです!私は向こうの世界で電脳経験値が高い個体を選りすぐりに選りすぐり、ようやく選び取ったのが君だということです!」
「君は今の時点でも、かなり化け物級にスキルを使えるし、これからさらにスキルを使えるようになる可能性まであります!」
「そして私は神である!エッヘン!」
その猫はどや顔して言ったのである。
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