雑然ダイアリー

狩本梢

やま

 太宰の富嶽百景を読んで、山のことを考えてました。


 あたしにとって、山は遠い存在です。

 山といえば、関西。ひとくちに関西といっても広いですから、山には無縁なひともいるかもしれないけど、それにしても、あたしは関西といえば山のイメージです。京都盆地。昔、関西に用事があって行ったら、ビル群の向こうに、なだらかな山々が見えたのが印象的でした。


 ある夏、山の中にある美術館に行きました。大自然の緑と茶色に囲まれた美術館の中で、深い青と白のうつくしい壺を見たのです。お客さんがほとんどいなくて、館内はしんとしてました。涼しい館内から外へ出ると暑さで溶けそうになったのを覚えてます。

 何も奇妙な点はなかったけど、現実や日常から離れた気持ちにさせられるというか、思い返せば夢の中だったような気がしてきます。


 富嶽百景の作中、バスの車掌さんが富士山に言及したので乗客がみな窓に顔向けて富士山を見る、というシーンがあります。以前新幹線に乗った際に、同じように「右手に富士山が見えます」というようなアナウンスが流れて、乗客がいっせいにそっちを見たのを思い出しました。

 千年後も、その頃にはなんかすごくSFチックで超ハイテクな乗り物が主流になってるのだろうけど、千年後も公共交通機関のアナウンスに富士山を教わりたいです。

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