第3話 転入と出会い
ついについた、ここが北彗星王立教会国。
正直めちゃくちゃ緊張している。この後どんな人たちに出会うんだろうな、とか、勉強ついていけるかな?とか。
でもそんなことよりも、
「やばい学校どこー!?」
やばいやばい!普通に道間違えたかな?道教えてもらってないからわかんないよ!どこもかしこも同じような家ばかりで、正直もう結構道がわかんなくなって混乱してきた…。やばいどうしよう…
…あ、でもわたし飛べるんだった。すぐそばの路地裏、人目のつかない所に来て…と、
〈紺の術〉その七
風雨は自分の身体を浮かすことができる技。
えーっと?
「あった、東の方向だ!」
飛んだままだとめちゃくちゃ目立って暗殺とかにも支障が出るかもしれないから、位置確認だけしっかりして、あとは走って行こう。そんなほんとにちょっとしたハプニングがあったけど、普通についた。
ここが魔法武芸専門北部高等学校、略して魔芸北高らしい。なんか大きなお城のような学園だ。
周りに人はいない、転校生は初日、少し遅れて来させるのが風習で、どんな転校生かはお楽しみですみたいなそんな感じらしい。
「これ学生証です。確認お願いします」
「はい、転校生の蜜奈さま…で間違いないでしょうか?」
「はい間違いないです!」
「それでは蜜奈さまはこちらへどうぞ」
私が連れてこられたのは、学校の中でも最も右端にある9-A組。この学校は成績順に学年が、あとはランダムでクラスが分けられるらしい。
10まである中、私は9の学年に入ることになる。まあ妥当なのかな?
そして教室の前。この大きな引き戸の先には、10人くらいのクラスメイトがいる。少し騒がしいかな?まあこの学校の転入生はそこまで多くないっぽいから物珍しいのかもしれない。
「では入って来てくださーい」
!?呼ばれた!平常心平常心、緊張しない緊張しない、落ち着け…落ち着け…
キイィィ…
コツコツコツコツ…
「それでは自己紹介をどうぞ」
「みなさんおはようございます、転入生の蝶乃 蜜奈です!好きなものは魔法と甘いものです!よろしくお願いします!」
普通に緊張したぁ…。前世の暗殺前でもこんな緊張した事ないのにな…。こんな短い自己紹介でもここまで緊張するものなのか。
さて、クラスメイトの反応は…?
「私は学級兼学年代表の
「あ、ははぁ…」
見ると確かに個性的なクラスだ。ゴテゴテの衣装のお嬢様みたいな人、なんか格好が小汚い人、めっちゃ本読むの速い人、なんか筋トレしてる人とか。
この学級代表の人は比較的まともな人って感じかな?黄色い髪で、一見ちょっとおちゃらけてるけど、芯がしっかりある良い人なのがわかるな。
「じゃあお前ら自己紹介させるぞー。とりあえず俺から…って囁華がもう自己紹介したか。まぁいい、おれはこのクラスの担任をしている、
「よろしくお願いします…!」
なんだか冴えない先生だけど、良い先生だなと思った。…うん。それだけ。
「こんにちは、わたしは
「はい!よろしくお願いします!」
え?かわいいこの人…!めっちゃ美人!薄い茶色の長い髪の毛に高い身長、モデルさんかな?
「僕は
「はい!頼りにしてます!」
眼鏡で赤髪の生徒会の将星、頼りがいのあるオーラがあるしなかなかに体格が良くて、悪い人じゃないな。
「こんにちは、
「うん!よろしくね!」
水色で長めの髪の毛の男子で、にちょっとちっちゃい体。多分天然なタイプの子なんだろうな。
「やあ!俺は
「あ、えっと、
「シャキッとしてないわね!いつもの威勢はどこいったのよ!…おっと、お見苦しい所をお見せしました。私はこの国の次期女王のサリア・シェークライト・ルーズメイトです。皆さんからはサリアと呼ばれていますので、蜜奈さんも是非そう呼んでいただけたらなと思います」
「じょ、女王様ですか…!よろしくお願いします…」
「そんな畏まらなくてもいいわ。気軽にタメ口で話してくれた方がいいわ」
「…そう!じゃあよろしく、サリア!」
「なんか、いいところ持ってかれた気がしたんだけど?」
「いいじゃないか、いいじゃないか!はっはっは!」
相性良い3人組だな。金髪でいかにも女王様って風格の次期女王のサリア、普通にえぐくないか?蓮華は黄緑の長髪でもうひょろっひょろ。小豆は深緑の短髪で物凄い筋肉がついてる。
「
「れさちゃん、よろしく…!」
格好が汚いけど、ものすごいオーラを放ってる。よく見たらこの子がこのクラスで一番強いのかな?そんな印象を覚える。艶のない黒い髪の毛で顔が見にくいけど、顔は結構可愛いかも。
「…
「え、あ、うん。よろしくね…!」
ちょっと淡々としてる子だな。悪い子ではないとは思うんだけど。
「じゃあオレが最後か。オレは
「あ、うん!よろしくね、深矢!」
紺色の髪の毛に、馴れ馴れしいけどうざったらしくない。そんな印象を覚えた。
「じゃあ蜜奈は深矢の横の席だ。お前らもちゃっちゃと席につけー」
『はーい』
大学みたいな繋がった机の中で一番後ろの席が私の席だ。これからこのメンバーで授業受けていくって考えたら、めちゃくちゃ楽しみ!
そんな感じで、学校紹介を多少されて、今日1日は終わった。
次の日
今日から待ちに待った授業の日!すっごい楽しみだなぁ…って思って教室に着いたけど、みんななんか元気が無さそうな感じがする?
「みんなどうしたの?なんか元気ないよ?」
「そっか、蜜奈ちゃんは初めてだから知らないんですよね」
「胡桃?今日なにかあるの?」
「入学最初の授業がこれって、蜜奈、結構運悪い感じだ?」
「え?なになに?ほんとに今日何があるっていうの?」
胡桃も囁華もなんかどよーんとしてる。
「今日はね、10学年との合同授業なんだ。この学校では1ヶ月に1回くらいのペースで合同授業をやるんだよ。1学年は2学年と、3学年は4学年とって感じでさ。で、僕たち9学年は10学年との合同授業なんだけど…」
「10学年と仲が悪いんだ?」
「そう。しかも9学年と10学年でも相当な実力差があるから、実質こっちが身分低いみたいな立ち位置なんですよね…」
将星くんがここまで嫌がるって事は相当な奴らなんだろうな…。
「はーいお前ら席に着けーって、立つ元気もないか…俺も結構今日は憂鬱だが、やるしかないんだから元気出すぞー」
『はーい』
まだどんな授業かもわからないのにここまで憂鬱にされると不安になるよ…。
「今日は9、10学年合同授業の日ですね。10学年、号令」
「気をつけ、礼。よろしくお願いします」
『よろしくお願いします』
この合同授業はグラウンドで行われるのだが、ここのグラウンドはよく整備されていて、スポーツの世界大会でも開催できそうなレベルだ。
「そちらには転校生がいるとのことなので、10学年のみんなに挨拶をさせましょうかね?じゃあお願いします」
体格のいい赤茶色の髪の男が、みんなの前にある壇上に立つ。
「俺は10学年A組学級兼学年代表の
「ほらね、私たちが10学年を嫌ってる理由わかったでしょ?嫌味ばっか言ってきたりして気持ち悪いのよ」
「確かにうざかったかもな…」
9学年から恨み言のような言葉は所々で聞こえはするが、誰も言い返せていない。多分誰も言い返せるほどの実力は持ってないのだろう。
そしてある程度の10学年の人たちの自己紹介が終わって、授業になった。
「君たちは9学年と言うだけあって、戦う事くらいならできると思いますので、今日は実践練習をやっていきます」
いちいち嫌味ったらしい。結構イラッとくるものがあるな。
というわけで今日の授業は2人1組になって実践練習をしていくらしい。
あれ?みんな嫌がってた割には10学年の人たちとぱっぱとペア組めてるな?
なんて呑気なこと思ってたら、
「思いっきり余った…」
みんな手際よくペア組んじゃって、9学年は私だけになっちゃった…。
周りをよく見たら10学年も1人だけ余ってる。
…けど、
「あーはいはいなるほどね」
私の視界の先にいる1人の男。みんな彼を避けるためにペアを組んだんだ。
でも私は彼と組むしかない。
私は、浅条 柘榴とペアになった。
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