第7話 冒険者ギルドでの騒動
俺が研究所を乗っ取って3年が過ぎた。
俺たちは8歳になったわけだ。
ここでの生活も慣れたものになり、俺がいなくても魔物退治ぐらいはできるようになっている。
ただ、まだ知識は十分でなく外の世界もあまり知らないため、俺とルーナが外で本を買ってきてやった。
ちなみにこのお金は、俺が魔物を討伐して得たお金だ。
どうやら町には大抵一つ、冒険者ギルドなるものがあるらしい。
それなりにいい稼ぎになるので、たまに行って買い取ってもらっていた。
最初に行ったときはかなり面倒なことになったが。
♢ ♢ ♢
「ルーナ、町に買い物に行かないか?」
「はい。何を買うんですか?」
「本とこの辺で手に入らない食べ物かな。魔物の肉と野草だけでは良くないからね」
「なるほど。しかし、お金はどうするのですか?」
「どうやら町には冒険者ギルドがあるらしくて、そこに魔物の肉を持っていったら買い取ってくれるそうだ」
「ならばルフト様はたくさん稼げますね」
「まぁ、何が必要になるかわからないから、それなりに稼いでおこうと思ってる」
そして町に行き、冒険者ギルドを探していると、見覚えのある魔力の持ち主が近づいてきた。
「あの、この前はありがとうございました」
そう、この町へ送ってあげた子の一人だ。
「町に何か御用ですか?僕が何かお役に立てるかもしれません」
あの時の恩返しがしたいのだろう。
ちょうどいい。
冒険者ギルドなるものの場所が分からなかったんだ。
「冒険者ギルドってどこかわかるか?」
「冒険者ギルドですね。こっちです!」
頼られて嬉しそうに案内してくれた。
その子について行くと、剣が2本交差されたマークの大きな建物へ案内された。
「ここが冒険者ギルドです。何をするんですか?」
「魔物の買取をしてもらおうと思ってな」
「なるほど。僕はここに入ったことないんですけど、冒険者ギルドは登録が必要らしいです」
「わかった。案内ありがとう」
「はいっ、どういたしまして!」
笑顔のまま去って行った。
残った俺たちを冒険者ギルドに出入りする大人たちがじろじろ見てくる。
俺を見るのは構わないが、ルーナをじろじろと見るのは気分が悪いな。
――ゾワッ
「ルフト様。殺気が漏れ出てますよ」
「ん? 本当だ。悪い」
いきなり大人どもが止まったかと思えば、殺気が漏れ出ていたようだ。
しかしこの程度の殺気でビビるのなら冒険者など辞めてしまった方がいいだろう。
「じゃあ、中に入るか」
中に入ると、全員が俺たちの方を見てきた。
ルーナをできるだけ隠すように立ち回り、受付の人の場所へ行く。
「こんにちは。今日はどのようなご用件でしょうか」
「ここで魔物の買取ができると聞いた。どんな魔物なら買い取ってくれるのか教えてほしい」
「ほとんどのものを買い取っておりますが、魔物は冒険者に登録して、依頼を受けて討伐する必要があります。冒険者登録されていない方の魔物を買い取ることはできません」
「なら冒険者登録をしたいんだが、可能か?」
「可能ではありますが、まだその年で魔物を狩りに行くのは危険ですよ」
まあ、見た目は確かに不安になるだろう。
しかしここにいる冒険者の誰とやりあっても負ける気がしない。
「忠告ありがとう。それで、どうやったら冒険者登録できるんだ?」
「こちらの紙に名前を書いて、この装置を使ってギルドカードを作ります。そうすれば登録完了です」
「わかった。ルーナ、ここに名前を書いてくれるか?」
もらった紙を浮かび上がらせてルーナに渡しながら自分の名前を書く。
「はい. . . . . . 書きました」
「これで2人分の登録を頼む」
ルーナへ渡した紙を凝視して、受付の人は固まった。
「なにか不備があったのか?」
「い、いえ。では、ルフト・ハルマールさんとルーナ・ライトさんですね。こちらに手をかざしてください」
ルーナが手をかざすと、その装置のガラス玉の部分が眩く光った。
「おぉ、これはすごい魔力量ですね!きっと将来はすごい魔法使いになってると思いますよ」
さすがはルーナだ。
毎日頑張ってるし、思い出したくもないが、あの研究所でみんな連れてこられた日に死なない程度の実験はされている。
それにどうやら、あの遺跡がみんなの力に多少影響しているようだ。
「ルフトさんもどうぞ」
手をかざすと、装置が一瞬だけ光り、パキッとひびが入って壊れてしまった。
「え?装置が壊れた? すみません。新しいものを取ってきますね」
たぶん、次も同じく壊してしまうだろう。
この装置は、手をかざしたものの魔力を吸収して、カードに織り交ぜるものらしい。
そうすればカードの持ち主かどうかすぐに判断できるからなのだろう。
そしてカードに織り交ぜる際に、余分に吸収してしまった魔力はガラス部分で光に変換する仕組みのようだ。
さっき壊れたのは、俺の魔力が強すぎたのか多すぎたのかわからないが、その魔力のせいで壊れてしまった。
魔力の動き的に壊れかけていたわけでは無さそうだったから、次も同じことになるだろう。
「はい、もう一度手を翳していただけますか」
そうして手を翳すと、案の定、壊れてしまった。
「あれ?また壊れた?. . . . . . もしかして、魔力に耐えきれなかったの?!」
「この場合はどうしたらいいんだ?」
「っ!少々お待ちくださいっ」
そういって、部屋の奥へ引っ込んだ。
おそらくもっと上の人を呼んでくるのだろう。
この建物の一番上にそれなりに強い気配を感じる。
「おい、そこのガキ、ここはガキが来るところじゃねぇ。邪魔だから帰んな」
「ルーナ、ああいうのは無視するんだ。面倒な奴は関わるだけ無駄だからね」
「はい。わかりました」
なんかうるさい人が来たが、こういうのは無視されるのが一番心に来るだろう。
心を無くしていても知識はあるから原理は理解できる。
そう考えてルーナと話していると、思った通り心に来たのか、さっきよりも怒った口調で近づいてきた。
「おいっ!無視すんじゃねえ!ガキが来る所じゃねえって言ってんだよ!」
そういって、あろうことかルーナに手を伸ばそうとしたので、そいつを空中に浮かび上がらせる。
「あ? 何だこりゃ?! 何が起きてるんだよ!」
「黙れ」
そういって殺気を向けると、冒険者ギルド内が恐怖に震えた。
「ひっ」
「ルーナに手を出すとはふざけた事をしてくれたな。お前には生きている価値はもうないと思うんだが. . . . . . ルーナ、こいつはどうしたい?」
「確かに掴みかかろうとしてきたのは良くなかったですが、消すのはダメです。冒険者登録が済んでませんし、ルフト様のお手が汚れてしまいます」
「俺のことは気にしなくていいんだが、ルーナがそういうなら. . . . . . おい、ルーナに感謝するんだな。次同じことをしようとすれば消す。わかったか?」
そう問いかけると、その男は必死に頭を動かして頷いていた。
「ルーナもそれでいいね?」
「はい、次はありません」
そうして殺気を収めて床に落としてやると、一目散に逃げて行った。
受付の方では、ここのギルドマスターが目を丸くして固まっていた。
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