第4話 研究所の子供たち
しばらくしてルーナが落ち着いた頃、研究所内は未だ混乱に陥っていた。
「ルーナ、とりあえずここから出ようか」
「はい。ですが他の子たちはどうしますか?」
「ルーナはどうしたい?」
「私は. . . . . . みんなを助けてあげたいです。いきなりこんな状況になって困っているはずですし、これからどうすればいいのかもわかりません」
「わかった。とりあえず広い所に全員を集めようか」
「はい」
そうして、俺は空気の密度を少しいじって、声を研究所全体に響き渡るようにした。
「これを聞いている者は、声のする方へ来い。他の奴にも声をかけて広場に集まれ」
こんな風に命令口調にすると子供たちは言うことを聞きやすいと思った。
「よし、じゃあ、俺たちも行こうか」
「はい」
そうして、俺たちも歩き出す。
ルーナと手を繋ぎながら。
♢ ♢ ♢
広場には、多くの子供たちが来ていた。
俺はその子供たちを天井近くまで
ざっと見た感じ40人ぐらいだろうか。
「他にはもういないな?」
全員が分からないといった表情をしている。
まぁ、こんな地獄の中じゃ面識なんてないものだろう。
「お前たちにはここから出ても行く先があるか? あるやつは手を挙げろ」
そういうと、控えめに半分ぐらいの手が挙がった。
ここに来て生きているのは、連れ去られてまだ日が経ってない子供ばかりだ。
「お前たちはこの研究所から出るといい。だが、行く当てのない者はしばらくはここに残るしかない。ここの研究員は全員消したし、また他の奴が来てもお前たちの安全は保証してやる。この研究所にもまだ食べ物はあるだろうから、それを使いつつ生きる術を身に着けるといい」
そういって、ルーナのもとへ降りて、歩き出す。
「外へ出たい者はついてこい」
ほとんど全員がついてきていた。
こんな場所にはいたくないんだろう。
♢ ♢ ♢
外に出ると、この研究所が山奥にあり、近くの町は明かりが見えているが、歩くには少し距離があることが分かった。
「さっき行く当てがあると言ったやつで、あの町に行きたいやつは誰だ?」
そう聞くと、10人ぐらいが手を挙げた。
「連れて行ってやるから、騒がないように」
そうして、ルーナとその子供たちと共に町まで
その町までは30秒ぐらいで行った。
あまり加速しすぎるとルーナが苦しくなると思ったからだ。
正直、他の子供たちはどうでもいい。
そして町の中心っぽい所の目立たない場所に降り立つと、全員自分の家に帰って行った。
研究所へ戻ってきた俺たちは、行く当てがあるのに手を挙げなかった子供たちに事情を聞くと、どうやらどこの町かわからないらしく、帰れないとのことだった。
まぁ、俺の力で飛び回ってもいいが、今やるのは面倒だし追々やっていくとしよう。
しばらくその子たちは、この研究所で暮らしてもらうことになる。
俺もルーナも連れてこられた場所がどこかよくわかっていないし、ルーナはともかく俺はもう家族に何の興味もないから、ルーナとここで過ごすことになるだろう。
「まずは食糧を探してほしい。お腹が減っていると思うが、まだ食べるな。とりあえず場所と量を全員で確認してくれ」
俺がそういうと、全員一目散に探しに行った。
かなりお腹が減っていたのか、俺が怖かったのかわからないが、まぁいい。
「ルーナ、外で食べられそうな物があるか確認しに行こう」
「はい。ですが私はそのようなことを知りませんよ?」
「大丈夫だ。俺はさっき知識を手に入れた。ここで生きて行けるようにもなると思う」
そうして、ついでにここで消した研究員どもの死体を森へ捨てようと宙に浮かばせて運ぶ。
ルーナはそれを見て目を丸くしていた。
「ルフト様、すごいです。そんなお力が使えるなんて」
「ごめん、あまり見せるようなものではなかったね。それに、この力はこいつらの実験で手に入れた力だ。あまり褒められたものじゃないよ」
「それでも、ルフト様のお力はすごいです」
「そうかな」
そして外に出る。
幸い、今の季節は春の半ばぐらいでとても過ごしやすい気候だった。
ここはそれなりに深い森で、魔物のような魔力の気配もそこそこ引っかかる。
食べられる野草やきれいな川があるかを確認するために森を飛び回ると、近くに遺跡のようなものがあった。
俺が手に入れた知識では、これは古代の遺跡で、神話の時代の生物が眠っている。
ここに研究所を建てたのはここに眠る神話の怪物を蘇らせるためだったのか?
まぁ、後で調べてみるとしよう。
♢ ♢ ♢
最終的に、この研究所の近くにきれいな川が見つかった。
研究所内にはそれなりの設備はあるし、水源を確保できたから後は食べ物だけだが、俺の知識では魔物は食用にされることがほとんどだ。
強ければ強いほど、例外もいるが大概は美味になる。
初めのうちは俺が狩ればいいが、そのうちこの子たち自ら狩れるようになってもらいたい。
そして、子どもたちは1週間はもつであろう量の食料を見つけていた。
みんなお腹が減っていそうだし、今日は好きに食べるといいだろう。
俺もルーナと一緒に久しぶりのまともな食事にありついた。
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