第2話 血に染まる研究所
俺の名前はルフト・ハルマール。
少し前――だいたい1か月ほどか、それぐらい前にこの研究室へ連れてこられ、地獄のような日々を送っていた。
連れてこられたその日に、寝る部屋が同じになった少女がいた。
名前はルーナ・ライトといって、彼女は連れてこられて3日が経っていたそうだ。
ルーナは俺と同じで、外にいたときに連れ去られ、いきなりこんな地獄へ落とされた。
3日という時間は、まだ5歳のルーナの精神を壊すのには十分な長さだった。
俺は虚ろな目をして機械のように動くルーナを一生懸命励まし、支えようとした。
そしてようやく1週間ぐらい前からは普通の子供らしく笑うようになったのだ。
その笑顔は、たとえ痩せ細っていてもその可愛さを十二分に伝えていた。
俺たちはそれから笑うことが多くなっていった。
こんな地獄を抜け出して、外で生きて行くことを夢見ながら。
そんなときに俺はあの研究員どもに呼ばれ、人体実験をされた。
初めは痛かった覚えがあるが記憶がおぼろげで、気づいたらこの
俺はそれを生まれたときから知っていたかのように、呼吸をするかの如く扱えるとわかった。
なにやらうるさく騒いでいるあの奴らに殺意がわいてくる。
するといきなり静かになった。
こんな奴らを生かしていてもルーナに害でしかないので、ここで消しておこう。
空気を薄く鋭い刃物のようにして奴らを切り刻む。
ただそうイメージするだけでできた。
こんな奴らにもう興味はない。
早くルーナのもとへ行こう。
さっき別れ際に泣かせてしまったからな。
♢ ♢ ♢
ルーナの気配を感じ取って、いつも働いていた場所へ
そこにはいろいろと通路を曲がる必要があったが、3秒とかからず着いた。
途中で見かけた研究員は全員、すれ違いざまに刻んだ。
ルーナを見ると、まだ涙の跡がしっかり残っており、しかし最初に会った時のように機械の如く働いていた。
あんなに可愛くてまぶしい笑顔はすっかり消えてしまっている。
俺がいなくなってしまったことで傷つけてしまったのか。
「ルーナ!」
俺はルーナの元まで飛んで、抱きしめた。
「っ! ルフト様. . . . . .?」
ルーナはいきなり抱きしめられて状況が理解できていないようだ。
「そうだ、俺だよ。ここから脱出しよう」
「えっ、どうしてここに. . . . . .」
――ドタドタドタッ
どうやら他の研究員が騒ぎに気付いたらしい。
「俺もよくわかってないが、とりあえず脱出しよう。ルーナを守る力は手に入れたから」
「?. . . . . . わ、わかりました。あ、でも. . . . . .」
「どうしたんだ?」
「他の子たちも. . . . . .」
まったく、ルーナは優しいな。
自分が生きていられるかわからない状況でも他の子供を心配するとは。
「わかった。ここの研究員を全員消そう。そうすれば他の子供たちも安全に出られる」
「. . . . . .できるのですか?」
「それがルーナの望みなら」
「っ、お願いします!」
そうして、研究所が血の海に変わり始めた。
♢ ♢ ♢
ルーナに頼まれたため、俺はまず研究員の魔力を感知し次第、そいつを切り刻んだ。
たとえ見えてなくても、俺が感知できればその場所に力を放てた。
俺が覚えている魔力は全員消したから、次はこの研究所を飛び回って研究員を消していこう。
ルーナに触れられないよう、空気の密度を高めて見えないバリアを体に沿わせて張る。
これなら爆弾が爆発しても通さないだろう。
「それじゃ、俺は他の研究員を消してくるから。ルーナはここで待っていてほしい」
「危険です。全員と戦うなんて」
「もう既に30人は消した。あとは俺が知らない研究員だけだ」
「でも. . . . . .」
「じゃあ、30秒だけ待っていてくれないか? 絶対に戻ってくるから」
「30秒だけですか. . . . . . わかりました。絶対ですよ」
「あぁ、絶対だ」
そう言って、部屋を出る。
すぐに飛び回り、視界に入った研究員を片っ端から刻んでいった。
すべての研究員が訳も分からず、自分が死ぬことにも気づかずに刻まれていく。
子供たちはいきなりバラバラになった研究員たちにパニックを起こし、逃げ惑う。
ついにこの研究所が血に染まるまで20秒とかからなかった。
♢ ♢ ♢
30秒かからなかったな。
余裕をもってルーナの待つ部屋へ戻る。
「ただいま。ちゃんと帰ってきたよ」
「ルフト様っ!」
「ごめん。できるだけ急いだんだが. . . . . .」
部屋に入るなり抱き着いてきたルーナの頭を撫で、優しく言う。
「いいえ、無事でよかったです。私のせいで何かあったらと思うと. . . . . .」
「ちゃんと無傷だ。ここの研究員ももう生きていない。みんな安全に脱出できるよ」
「ありがとう、ございます。 うぅ. . . . . .」
そして泣き出してしまった。
また俺のせいで泣かせてしまったな。
「ごめん、怖い思いをさせて。もうルーナのそばを離れないよ。絶対に」
「. . . . . . はい」
ルーナが泣き止むまでの間、俺は彼女を抱きしめて頭を撫で続けた。
――――あとがき――――
読んで下さりありがとうございます。
次回はルーナ視点でお送りするつもりです。
ルフトの力は多分すぐに明かすと思うので、今は気持ち悪いかもしれませんがご了承ください。
それでは、次回もよろしくお願いします。
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