魔法バカ
高山
第1話
転生したら、まずは視界がぼんやりと開けた。目の前に見えたのは、自分の小さな手。思わず動かしてみるが、ぎこちなくて、どうにも力が入らない。ちっちゃくて、柔らかくて、なんだか自分の手じゃないみたいだった。
周りを見渡すと、そこには銀色に輝く髪をした美しい女性がいた。その隣には、金髪に金色の瞳を持つ、整った顔立ちの男性。ふたりとも私を見つめるように抱きしめていて、優しい眼差しを向けている。恐らく、この二人が私の両親なのだろう。なんだか不思議な感覚が胸に広がっていく。
そう考え始めると、急に頭がくらくらしてきた。まだ幼い体には、考えることも体を動かすことも、少し無理があったのかもしれない。目を閉じると、徐々に意識が遠のいていく。小さな身体の温もりに包まれたまま、私は深い眠りに落ちた。
転生してから一年が経った。目が覚めたとき、小さな体の不自由さに戸惑い、目の前の銀髪の女性と金髪の男性に驚かされたあの日から、あっという間だった。
まず驚いたのは、ここが「魔法のある世界」だということ。前世の記憶があるからこそ、魔法の存在には心が躍った。どうやら母は魔法が使えるようで、私が話し始めた頃から、何気ない会話に魔法の話が出るたびに夢中になって質問をぶつけていた。最初は笑顔で答えてくれた母も、途中からやや困惑した表情を見せるようになったが、私はそんなことを気にする余裕もなく、魔法の話に夢中だった。
私の名前は「マグナート・フォン・ルーカス」。この家の跡取りとして生まれたらしいが、正直その事実よりも、魔法の方がはるかに興味深い。家柄や名前なんて些細なことに感じる。私はどうしてもこの世界の魔法を使えるようになりたい。まだ幼い体では、難しいことはできないかもしれないが、何とかして少しでも魔法に触れられる方法を探りたいと思っている。
そうして、日々の中で少しずつ魔法の手がかりを集め始めた。どうやらこの世界の魔法は、体内の「マナ」と呼ばれるエネルギーを使って行うらしい。魔法の訓練を始めるには、まずマナの流れを感じ取る必要があるとか。母に教わった通り、目を閉じて体の内側に意識を集中し、心を静める。そして、少しずつ体の中にある「何か」に気付けるようになってきた。
初めて自分の中のマナを感じ取ったときは、ふわりと暖かいものが体を巡る感覚に、思わず声が出そうになった。それから毎日、少しずつその流れを感じる練習を続けている。まだ魔法を使えるわけではないが、いつか自分で魔法を繰り出せる日を夢見て、一歩一歩進んでいこうと思う。
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