第15話

「吹石暖?あの超人気俳優の吹石暖と仲良くなったの?」

莉子は食べかけの玉子焼を持ったまま手が固まっている。

「凄く気さくで優しい人なの」

「望奈、やっぱり芸能人なんだね…… 」

莉子は何度も頷いた。

「何よ、それ」

望奈は笑った。

「だって一般人が吹石暖と仲良くなるなんてまず無理だよ。それで好きなの?」

莉子は興味津々で身を乗り出して来る。

「そういうんじゃないよ。友達……というか、師匠と弟子というか」

「何なのそれ」

「私の演技練習見てくれてるの。演技になると凄く厳しいよ」

昼休みは教室の中はそれぞれ話に盛り上がっていて、うるさいぐらいなので2人の会話に聞き耳を立てている人もいなかった。

それにしても莉子とお弁当を食べるのも久しぶりだ。

「高原君とはどう?上手くいってる?」

望奈が話題を変えると、急に莉子の顔が赤くなった。

「先日のデートでキスしたの」

望奈は胸の痛みを感じた。

「そうか。上手く行っているんだね」

「吹石さん、望奈の事好きなんじゃない?」

「それはない。気の合う友達」

望奈はそう言うと、ご飯を口に運んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る