風変わりな仕事

美術モデル

美術モデルになるのは簡単だ。


モデルを募集している絵画教室にメールを送ればいい。


私はスタジオ撮影した宣材写真(これも特に予定も意味もなく思いつきで撮った)の料金のもとを取りたくて、ダメ元で送った。

全身と顔写真。


体感としては、美術モデルに美醜は関係ない。

クロッキーなら千差万別の体や顔の描き分けの練習台になるだけだ。

一枚絵なら容姿端麗が多く求められるのかもしれないが、クライアントの描きたいものによるから、別にどんな人が志願したっていい。


私はフリーで応募し、一件仕事したが、その後、専門の事務所に入って仕事をもらうのが一般的と知り、事務所に世話になり始めた。


ポーズはモデル自身が考え、その場でとる。

当日の衣装にしてもだ。

結構インスピレーションが求められる。


大勢の前でポーズをとることに抵抗を覚える人には向かないが、そうでなければ被写体となる人間の容姿の間口は広い。


描きがいのある良いポーズをとれた時は、自分を取り囲む鉛筆の音が乗る。


その時は生がとても神聖な時間に思える。


この仕事が好きかもしれない。


けれど、そういう仕事はなかなかもらえるもんじゃないし、私の容姿でのニーズでは食えるレベルにならないのだ。


世知辛いが、だからこそたまの仕事の張り合いが出ると言える。



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