サッカーモニタリングー高卒でトップ入り出来なったサッカー選手にチャンスを与える番組です

オルフェーヴル

サッカーモニタリング

今年度浦和Rのユースからトップチームの昇格者


 FW 大友優 一名




Jリーグのユースからトップ昇格が0と言うのも珍しくない確率。

それでも俺達はあのプロの世界を夢見て頑張ってきた。

輝かしい未来を夢見て、もしくは苦しい現実を見ないようにしてきたのかもしれない。


「そのツケがやってきたのかもしれないな」


枇々木宝は浦和RユースMFとして日本クラブユースサッカー選手権 大会制覇を成し遂げたチームの一員。

それでもトップチームに上がれるのは一人だけだってのは知識で知っていても、かなり抉られる。


「大学か~プロ入りは四年後か」


ユースから大学を経てプロ入りする。それ自体は日本のJリーグ入りの鉄板ルートではある。

18歳でプロ入りしても活躍できるとは限らず、大学サッカーでやってもらうことでクラブの負担が減る。

クラブからの推薦のある大学へ行ってそこから頑張ろう。


「そんな気になれないのはなんだろう」


ユースからトップチームへ最短でのプロ入りルートを現実にするためにやってきたからか、ってか今のままでは四年後ですらプロ入り出来ないかもしれない。


「大友は良いな」


十年に一度の逸材って言われてユースではぶっちきりの得点王だった。

MFの俺からのパスから点をもぎ取る姿には嫉妬すら覚えない。

あーゆーのが将来日本代表になったりするんだろうな、四年後にはオリンピックとかに選ばれたりして……


「大学行って新しい友達出来て、飲み会とかコンパとかも参加して、もしかしたら可愛い彼女も出来たりして……」


そんな満ち足りた大学生活を送っている時にふと、スマホにあるニュースが流れてくる。


『浦和R 大友優大活躍!!』


嫌いな奴じゃなかった、むしろ頼りになるエースとして頼りにしていた。


「うわあああああ!!!」




だけど俺は耐えられない。


その場所には俺が立ちたかった。


その時きっと心が死んでいく。






数日後。大学進学に向けての準備をしている頃。

突然その報せがやってきた。


「宝くん。なんか手紙が来ているよ」

「大学からか?」


突然やってきた手紙にはこう書かれていた。


枇々木宝様

貴方は強化指定選手に選出されました


「なんで……新手のトレセンかなにかが」


なんにも詳しいことは書かれてなく、自分が強化指定選手に選ばれた理由も分からないまま当日がやってきた。

そしてその手紙に書かれていた説明会の場所はTV局だった。


「あれ?浦和の枇々木君?だよね!久しぶり覚えているかな」


TV局の前で話しかけてきた爽やかな声をした高身長のこいつ絶対モテるだろうなって十人中十人は思ってしまうほどのイケメンはTV局に仕事のある芸能人ではない。


「グランド名古屋ユースの佐久間君。高円宮杯以来ですね」


グランド名古屋ユースのゴールキーパーの佐久間ヒカルは身長190CM越えのモデルのような長い手足によるセーブで何度も苦しめられた。

対戦した時はそんなに話したわけではないが、仲間へのコーチングはかなり仲間想いの爽やかイケメンだった。


「君のことはかなり印象に残っていてさ。君のドリブルとゲームの組み立てがあったから浦和の攻撃はかなりの脅威だったよ」


俺のことを覚えてくれていただけじゃなくて、こっちを上げてくれるとか性格もイケメンかよ。

なんか変な性癖持っているくらいのマイナス点が欲しい。


「じゃあ行こうか、なにするのか分からないけど。何か知ってる?」

「佐久間君もですか?俺も知らないんだ」

「敬語じゃなくていいよ。君付けもいらないし、よろしく宝」

「う、うん……佐久間」


いや、かなりぐいぐい来るなこいつ。

こういう性格の方がやっぱモテるし信頼されるんだろうな。

それはさておき、TV局の受付を済ませるとある一室に案内された。


「これは凄いな」


「大阪のトマホークの真中大輔、東京GREENの俊足のSB伊佐、広島工業のエースの毛利と高校の選手もいるぞ」


そこには俺とどこか見たことのあるサッカー選手達がいた。

広い部屋の中に百人はいる有名選手ばかりの部屋は異様な光景だ。


「もしかして年度代表を決めるとか……でもそれにしては時期が」


呆気に取られていると証明が落ち、舞台の上にスポットライトが当てられた。

そこには如何にも権威のある男と言った威圧感のある大男が立っていた。


「ようこそスター候補生(モルモット)たちよ」


なんかルビに不穏なものを感じたがあの男は説明を続ける。


「ここにいるのは高卒でプロ入り出来なかった百人の選手達だ」


ってことは佐久間や真中のような選手ですらプロ入り出来なかったのか。

そんな真実を他所になんでそんなプロ入り出来なかった選手を集めたんだあの男は。


「君達にはあるTV番組に参加してもらう。その名も『サッカーモニタリング』」


スクリーンのまるでバラエティ番組のようなホップな番組名が出て来た。


「君達には共同生活を送りながら24時間、練習風景、私生活まで全てTVでドキュメントとして放送される、この番組を通して世間に自分がいかに優れた選手かどうかアピールしてもらう」


これはなんだ、あいつは何を言っている?

自分達がTVで私生活すら放送される?


「もちろん放送分とは別にデータをクラブの強化部に見てもらう。優れた選手だとアピール出来たなら君達はすぐにでもプロになれる」


すぐにプロになれる。

その言葉だけは分かった、俺が最も欲しかった言葉そのものだった。


「これは高卒でトップ入り出来なったサッカー選手にチャンスを与える番組です」


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