sativa

梅室万智

第1話 夏

しゅ。たたたたたたた、た。


かるくて情けない音を残して、何もない駐車場の夜空に切り取り線ができる。夏が待ちきれなくて、梅雨もまだ来ていないGW明けに、花火したい、と言ってみた。

君はいやな顔ひとつせずにポケットにロケット花火を一本だけ突っ込んでやってきて、いたずらしようとしている少年のように口元を緩ませていた。

てっきり線香花火ができると思っていたものだから、私はびっくりしてしまって、仕組みの分からないロケット花火に君がライターを近づけるのがちょっぴり怖かった。


あっという間に消えて、きっと一秒もなかったあの瞬間を、夏の匂いがするたびに、私は反芻する。



また、タバコの匂いがする。気がする。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る