第191話:銀髪女騎士の想い

お土産を購入し、皇国貴族の顔面を地面に叩きつけ、名も知らぬ帝国貴族を助けた後、リュウとスティングレイは少しお高めのレストランへ。


現在、出された日替わりコース料理に舌鼓を打っている。

「美味しいですね~ここの料理」

「首都の店はどこも当たりだったが、俺はここの味付けが一番好きだな」

「私もです。なんというかこう舌に馴染むというか……」

「わかる。帝国寄りの味なんだよな。もしかしたらシェフが帝国出身なのかもしれん」

「なんやかんやで母国の味付けが一番ってことですね~」


食事を済ませた後、一服がてら紅茶を頼んだ。


「エリクサーの旅を思い出しますね」

「ああ、まだスティングレイが生意気だった頃の」

「それ言わないでください‼」

「俺を典型的な貴族家のボンボンだと思い込み、終始酷い態度を……」

「やめてください〜‼あの時のこと、ずっと反省してるんですから‼」

「今思えばとんでもない黒歴史だな。しかも理由がパパっ子という」

「あの……もう勘弁してください……」


スティングレイは自分を認めてくれない父が、なぜかリュウだけは認めていたため、対抗心というか嫉妬心を芽生えさせ、リュウに冷たい態度をとっていたのだ。

リュウ自身は全く気にしていないが、スティングレイはあの時の行いを未だに死ぬほど後悔している。


「首都に到着してすぐだったか。陛下に絡まれたのは」

「はい。今みたいにお高めのレストランで食事をしていたら、そこへ陛下がいらっしゃって。しかも絶海の魔術師さんもいたんですよね」

「最後に財布を忘れた事に気が付き、勘定を陛下に押し付け、俺達は逃げるように退散したんだったな」

「ふふふふ。あの時のリュウ様の情けないキメ顔、未だに覚えてます」


ここで紅茶が運ばれてきたため、一口含んだ。


「その翌日にエステルと初めて会ったわけだ」

「幽霊屋敷だの何だのと言っていたら、ドアから『のじゃー』って叫びながら飛び出てきたんですよね」

「そうそう。ぷんぷん怒っていたエステルを飴ちゃんで籠絡したんだよな」

「それでその後、エステル様とお話して見事エリクサーを獲得、と」

「あれがすべての始まりだったのかもしれんな」

「はい。今となってはそんな気がします。マンテスター男爵家との戦争はただの準備運動に過ぎなかったのかもしれません」


「スティングレイとは西方戦線も経験したな」

「カサ何とか男爵の暴走を尻目に、リュウ様が勇者二人を返り討ちにしたやつですね」

「懐かしいな。グレイス候とブラン伯爵とはあの時仲良くなったんだ」

「アリス様のお父上ですね~。ちなみに三人目の勇者って結局どうなったんでしょう?」

「俺が侯国の都市に忍び込んで、闇討ちした」

「……数年越しの謎が解けました」

「あれ、言ってなかったんだっけか」

「聞いてませんよ‼」


詳しくは女勇者の肉体を龍王バハムートの器にしたというのが真実だが、特に闇討ちと変わらないだろう。


「そしてリュウ様は私を置いて、エステル様と共に日ノ丸へ」

「その言い方やめてくれ」

「ようやく帰ってきたと思えば、エステル様とレナ様のお二人と婚約しているという……」

「別にそれはいいじゃないか」

「私にひとことくらい相談してくれても良かったんじゃないですかね?」

「何を相談するんだよ……」

「それは……あれですよ、あれ。一緒に二ヵ月旅をし、同じベッドで寝た騎士として、結婚相談くらいはしてほしかったというか……」

「だから変な言い方やめろ。勘違いされるだろう」

「事実ですし~。でもまぁ今回ダンジョンに誘ってくれたので、チャラにしましょう」

「よくわからんが、ありがとう」

「いえいえ。ふふふ」


スティングレイは窓の外を眺めながら呟いた。

「いつの間にか、あのお二人に全部先を越されちゃったわけです……はぁ」

「先を越された?一体何を言ってるんだ」

「これ以上うじうじ言うのは騎士らしくないのではっきりと言いますけど、実はあのエリクサーの旅の時から、ずっとリュウ様のこと好きだったんです、私」

「…………」

思わぬカミングアウトに、リュウはしばし黙った。


「……なら直接言ってくれればよかったのに」

「言えませんよ~。だって最初の態度が酷すぎたので、内心リュウ様に嫌われてるんじゃないかって、ずっとひやひやしてたんですから。それを払拭できたのが、西方戦線の護衛に指名された時ですね。しかし戦争の時にそんなことを言えるはずもなく、気が付けばリュウ様は日ノ丸へ……」

「そういうことだったか」


リュウは紅茶を飲み干した。


「スティングレイには申し訳ないが、すでに俺には二人の嫁がいる。彼女達のためにも、これ以上その話には乗れないんだ」

「それがですね、リュウ様。実はもうエステル様とレナ様、それとアイリス様(リュウの母)の許可はとってます」

スティングレイはピースした。


「…………スティングレイ」

「なんでしょう」

「まだ俺のこと好きか?」

「はい。好きというか大好きです。エリクサーの旅の時から。ずっと。この先も」

「じゃあ俺と婚約してくれないか?俺はもうスティングレイを誰にも渡したくはない」

「………………」


スティングレイは満面の笑みを浮かべ、

「はい、こちらこそ‼︎ 末永くよろしくお願いします‼」


彼女の瞼には、うっすらと涙が溜まっていた。


◇◇◇


───帰り道。

「なぁ、スティングレイ」

「はいはいはいはい。なんでしょうかリュウ様」

「婚約後に言うのもアレなんだが、俺実は人間じゃないんだ」

「じゃあ何なんです?」


「ダンジョンの中で緑色の龍と白銀色の龍がドンパチやってただろ?」

「はい。衝撃的すぎて鮮明に覚えてますよ」

「あの白銀の方が俺だったり」

「へぇ~‼ ではこれからはリュウ様と……!」

「なんじゃそりゃ。ちなみに緑色の方が龍真な。俺にフルボッコにされてた方」

「なんとなくそんな気はしてました……龍真殿、可哀そうに……」


スティングレイは手をポンと叩いた。

「もしかして、婚約したということは、リュウ様のお背中に乗せてもらえたりするんですか‼」

「もちろんだ。良いもんだぞ、空は」

「楽しみにしておきますね‼」

「あと鱗のペンダントも作ってやるからな」

「やった~‼えへへへ」




スティングレイは徐に蒼天を仰いだ。

「はぁ……やっぱすごいですね、リュウ様は」

「周りに支えられてこその俺だ。一人じゃ何もできん」

「これからは私も支えますから‼」

「ああ、期待している」



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