第24話 うれしい再会

「……」


 うれしそうに頬を赤らめて返事を待つイオ様、そして三人の侍女さん。

 その顔を見ると、うかつなことは言えない。

 俺は言葉に詰まってしまった。

 目を閉じると、なぜか遠くヤマト村を思い出す。そして、レイカ姉のちびっちゃい可愛い笑顔が思い浮かんできた。

 そのレイカ姉の口が動いた。ふふふ、レイカ姉はこんな時まで俺を助けてくれる。


「あの、聞いて下さい」


「はっ、はいっ!!!!」


 四人の返事が揃い、期待に胸を膨らませて潤んだ瞳でこっちを見つめて来る。


「俺の目標は知っていてくれますよね」


「はい、全世界の奴隷の解放です」


 イオ様が答えてくれた。

 俺はそれに大きくうなずいた。


「それが、終った時には……俺は、ヤマト村に帰ります。そこでひっそり、レイカ姉と兄弟と静かに暮らしたいと考えています」


「……!? は……はい……」


 四人が驚きの表情になり、その顔から笑顔が消えた。


「これを……」


 俺は、片膝をつき両手で腰の刀、ヤマト魂を取り頭上に捧げた。


「これは!!」


「俺の命より大事な刀、ヤマト魂です。これをイオ様にお預けします。これがイオ様の元にある限り、アーサーはイオ様に忠義を尽くし決して裏切らないことを誓います」


 イオ様は両手で大切にヤマト魂を受け取ると、まるで赤ちゃんを抱くように胸に抱きしめてくれました。


「そのように、父に……いいえ、陛下にお伝えします」


 そこには王女としての威厳がありました。


「はっ!!」


 俺は、ほっとした。

 きっと、ゆるんだ表情をしたのだろう。


「くすっ! でも安心して下さい。イオもヤマト村に押しかけますから」

「そうです。私達も押しかけます」


 イオ様が追い込みをかけてきた。

 それに侍女の三人も同調した。


 ――えーーーーっ!!!!


 まっ、まあ、その時には俺が女だと明かしてしまうから、大丈夫だろうと考えてこの事は記憶の中から消してしまった。

 こうしておれは、アーサー騎士団の団長として、フト国の四神将、青龍ドウカンの軍と戦うため最前線に向う事になった。






「おりゃーーーー!!!!!!」


 イサミちゃんが一番乗りで、一人で青いゴーレム、リムを危なげなく倒す事が出来るようになりました。

 赤いゴーレムはハルと名付けました。こちらは、まだ皆の実力ではせいぜい傷が付く程度です。

 半年という月日で、私も魔力が増えて二体のゴーレムを動かしても年齢を失うことはなくなりました。ふふふ、成長は止まったままですけどね。


「やりましたね!!!!」


 戻って来た、イサミちゃんを全員笑顔で迎えます。


「ふーーっ!! ふーーっ!! はいっ!!!! レイカ姉、やりましたーーーー!!!!」


 呼吸と髪は乱れていますが、イサミちゃんも、うれしそうです。

 落ちている魔石は、大きなおにぎりぐらいの大きさがあります。

 その魔石を拾って、胸の前に持ちうれしそうに見つめます。


「次はシノブちゃん」


「はいっ!!!!」


 シノブちゃんと、青いゴーレムのリムは戦いを始めました。

 キン、ガキンと音がしますが、イサミちゃんより攻撃力が落ちるので、その攻撃は表面を軽く傷つけるだけです。

 シノブちゃんの手には紫色の刀が握られています。

 赤い金属だけより、青い金属を少し加えた方が強くなるので、四人が持つ武器は四本とも紫色になっています。


「やはり、刀では傷が付く程度ですね」


 イサミちゃんが言いました。

 イサミちゃんの武器だけは紫の大剣です。

 他の子達は、重すぎて扱うことが出来ません。

 仕方がないので三人は攻撃力の落ちる紫の刀を装備しています。


「では、チマちゃん、ヒジリちゃん、参加して下さい」


「はい」


 二人が参加して、それぞれが同じ場所を攻撃して、傷を大きく深くしていきます。


「す、すごい! すごい、すごい!!!!」


 後で誰かが、滅茶苦茶驚いている声がします。

 私は、後ろを振り返りました。

 そこには驚きの人物がいます。

 ブワッと涙が一瞬でたまり、あふれ出しました。


「アサコ……ムガ……ムゴ……」


 アサコちゃんと言おうとしたら、凄い勢いで口をふさがれました。


 ――な、なにをするんだー! 感動の再会なのにー!!


 一瞬で涙が引っ込みました。


「みんなー、ちょっと集ってくれーーーー!!!!」


 私達全員が、集るとアサコちゃんが小声で言いました。


「俺は、今、アーサーと名乗っている。アーサーと呼んでほしい」


 アサコちゃん……アーサーちゃんの視線を見ると四人の美女がいます。


「わかったわ。あの人達に知られたく無いのね」


「ごめん、感動の再会なのにぶち壊してしまって……」


 そう言うと、アーサーちゃんは崩れ落ちて声を出して泣きだしました。

 それにつられて、全員が抱き合って泣き出しました。


「うおおーーいぃーーうおーい……おおぉぉーいぃぃーーーーぎいぃぃぃーーー」


 でも、結局私が一番泣いています。

 どこかが、大人でも全体は幼女です。しょうがありませんよね。


「みんな、紹介したい人がいる」


 ひとしきり泣いた後、アーサーちゃんが立ち上がり、後ろを見ながらいいました。私の涙は止まっていませんけどね。


「ふえええーーーんん、びえぇぇぇーーん」


 後ろにいる四人まで滅茶苦茶泣いています。

 私達の姿を見て感動して泣いてくれているようです。

 いい年をした大人に見えますけど……大丈夫でしょうか?

 まあ、とてもいい人というのは間違いないようですね。

 誰だかわかりませんが、歓迎しますよ。


「ふええーーん、ふぐっ、ふぐ、私はイオと申します。初めましてレイカ姉ーー」


「…………!?」


 イサミちゃんが驚いています。

 おーーい、レイカ姉は、一番おちびの私じゃーーい。

 イオちゃんは天然なのか、イサミちゃんにあいさつをしました。

 もう、帰ってもらおうかしら。

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