第17話 初めての街

 次はどうすれば良いのかは分かっています。

 方法が分からないのです。


 どうするのかというのは、あの重い青と赤の金属のゴーレムを作り、どちらか弱い方を、子供達に倒させれば良いということです。

 ただ、この金属は産出量が少ない希少金属なのです。

 既にこの半年間、村の面積が四倍になるほど、岩山を削りましたがそれで取れたのが短刀四本分なのです。

 長刀四本分と、人形一体分となれば大きく地形が変わってしまうでしょう。地形を大きく変えすぎると洪水とかが心配です。

 それに、どの位期間がかかるか分かりません。


 半年間と言えば、大きい子達が巣立ってからも半年経っています。

 まだ、一人も帰って来ませんが、ちゃんとやれているのでしょうか。

 あの子達は、木人を倒せる程度の強さなので、弱すぎていじめられているのではないでしょうか。心配です。

 ここの子供達は、すでに鉄人が倒せるようになりました。大きい子達も一度帰って修行をした方がいいのにと思っています。何とか連絡手段を考えたいですね。




「みんなー! 少し相談したい事があるのですけどいいかしら」


 入手方法について一つ考えつきました。

 ただ実行する勇気が出なかったのです。

 私は何日か考えた結果、悩んでいてもしょうが無いので、考えついた入手方法を実行して良いのか、子供達に聞いてみようと考えました。

 それを夕食後の今から皆に相談するため呼びかけたのです。


「はっ、はい!!?」


 四人の子供達は、私が又突拍子も無い事を言わないか緊張して身構えます。


「実は、私は街へ行こうと考えています」


「ええっ!? それはなぜですか?」


「はい。あの重い金属を街で買いたいと思います。希少金属なので高いとは思いますが何とか手に入れたいと考えています」


 街に行くのは不安しか有りませんが、いつまでも避けていられませんし、どうしても子供達の成長には重い金属が必要なので決断したのです。


「……ゴーレムを造るのですね」


 イサミちゃんはすべてを理解してくれたようです。


「はい、そうです。ここから、一番近い街は、南の私達が逃げ出した港町です。でも今回は、そこでは無くここから北に向った所に少し大きな街がありますので、そちらに行きたいと思います」


「それは、何故ですか?」


 チマちゃんが良い質問です。


「はい。鳥型ゴーレムで調べましたが、ここは西に巨大な鉱山を抱え、鍛冶を産業にして発展した街のようです。ですから私達の目的の物が手に入りやすそうだからです」


「お金が沢山いりますね」


 シノブちゃんが心配そうに言いました。

 でも、街に行くのを怖がって反対する子はいませんでした。

 むしろワクワクしているようにさえ見えます。


「ええ、まずは下見に行って、村の物で売れそうなものを調べて取引をしたいと思います」


 私は街へ行く事を決断しました。




 翌日、鉄人に抱き抱えられながら森の中を街へ近づきます。

 道が見えたら、鉄人とは別れ子供達四人と道を歩きます。

 道に草木はありませんが、舗装はされていません。雨が降ると大変な事になるでしょう。

 私は、体が一番小さいし力が無いので荷物はないのですが、他の子供達は大きな樽を背負ってくれています。


「大きな街ですね」


 一番後ろを歩くイサミちゃんが言いました。

 私達は背の小さい順に一列に並んでいます。

 なので、私が先頭を歩いています。


「そうですね。大きな建物が一杯あります」


 街はかなり発展していて、街に入ると道も石で舗装されています。

 巨大な美しい石作の建物がその道沿いに建ち並んでいます。

 建物の一階はお店になっていて、武器の店と金物屋が続きます。さすがは鍛冶の街です。

 その他には食事のお店や、食材のお店などが並んでいます。

 屋台も少しありますね。


 街のメイン通りを抜けると、鍛冶屋さんの作業場が続きます。

 街の外れには、モクモクと煙を出す製鉄所が三カ所有ります。


「よう! お前達、さっきから何を探しているんだ?」


 きっ、来ました!!

 後ろからガラガラの低い声がしました。

 お決まりの悪い奴にからまれるイベントでしょうか。

 私達は、この街に友達はいません。

 それどころか知り合いの一人だっていません。

 そもそも、ここがどこの国でなんて言う街かも知りません。

 私達は、大通りを何度も往復する汚い服を着た、ただの不審者です。


「きゃっ!!」


 振り向いた私の目に映ったのは案の定、体の大きい毛むくじゃらのムキムキ筋肉の男です。

 山賊でしょうか。

 恐すぎて驚いて小さく悲鳴がでました。

 よ、幼児ですから、しかたがありません。こ、恐いです。


「クマさん、あんたが声をかけたら恐いだろ。お嬢ちゃんがおびえちまっているじゃないか」


 目の前の野菜のお店のおかみさんが言ってくれました。

 私だけは、髪を伸ばし女の子の姿をしています。

 だからお嬢ちゃんと言ってくれたようです。

 他の子達は、全員髪を短くして男の子に見えるようにしています。

 まあ、それでもかわいらしさが出てしまうほど全員可愛いです。

 女の子とは、ばれていませんよねえ?


「おい、チビ、この子達が困っているようだ。少し案内してやれ」


 どうやらクマさんは私達を気遣って、子供に案内をまかせてくれるようです。

 ひょっとすると見た目は恐いけどいい人ではないでしょうか。


「えーーっ、嫌だよーこんな奴らー! 汚らしい!」


 きっと、このチビと呼ばれた少年の方がろくな奴ではなさそうです。


「文句を言うな、ほら小遣いもやる。嬢ちゃん達に何か食わせてやれ」


「ちぇっ、しょーがねーなー。分かったよ」


 口調の割には、顔は笑顔です。


「うむ、俺は帰るから頼んだぞ」


 クマさんは帰ってしまうようです。

 この街は治安が良いのでしょうか。

 子供だけになりました。

 まあ、イサミちゃんは充分大人に見えますけど大丈夫でしょうか?


「はーーい!!」


 お小遣いをもらって、ご機嫌になっています。

 お子様ですね。


「ねえ、チビ」


 私は、少し聞きたい事が出来たので呼びかけました。


「はああぁーーーー!!!! なんで俺よりチビに、チビって言われないといけないんだよー!! ふざけんなっ!!!!」


 私が呼んだら、おこらせてしまいました。

 しかし態度の悪いチビです。

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