第16話 次のステージへ

「は、はやくしなさい!! ケガ人が出てしまいます」


 どうやら、お嬢様が戻って来たようです。


「はははは、いくら何でも我らは三十四人います。怪我ではすまないはずです」


「おばかーー!! 誰がアーサー様の心配をしていると言うのですかーー!! 騎士団の心配をしているのですよ!!!! ぴゃあぁぁぁぁーーーーー!!!!」


 ……「ぴゃあぁー」なんて悲鳴初めて聞きました。


「な、なんと!! こ、これは!!」


 お嬢様をかばうようにしている騎士が言います。


「ああああああぁぁぁ!!!! だから言ったでしょーーーー!!!! アッ、アーサー様ーーーー!!!!!!」


 お嬢様がひざからガックリ崩れ落ちました。


「はい!?」


「殺してしまったのですか? いえ、殺されても文句はありませんがそれでも……ああああぁぁぁぁー!!!!」


 私の目の前には、武器を構えて襲って来た騎士達が、三十人以上倒れています。


「うふふ、安心して下さい。全員生きているはずですよ。力は入れませんでしたから」


「な、なんと、精鋭三十四人を手加減して倒したと言うのですか」


「ふふっ、殺す気ならこの刀で、一刀両断にしています」


 私は、大和魂を半分ほど抜いて、刃文を見せました。


「な、なんという美しさ。身震いがおこります。な、なんという名の名刀ですか?」


 騎士が言いました。


「これは、大和魂という名の刀です」


 お嬢様が、騎士の肩にいたずらっぽく、ちょんちょんと触れました。


「な、なんですか? うおーーー!!!! こ、こちらもすごい!!」


 お嬢様は、レンカの宝刀を抜いて、騎士に見せています。


「これは、わが家の家宝になったばかりの、レンカの宝刀です」


「こ、これが……レ、レンカの宝刀……ほぉぉーー! す、すごい!!」


 騎士の両手が、ワキワキ動いています。

 触りたいけど恐れ多くて触れない、そんな動きです。

 お嬢様が鞘に納め、騎士の前に差し出しました。


「よ、よろしいのですか?」


 聞くと同時に、もう手に持って抜いています。


「いいですよ。どうせ、貴方が持つ事になるでしょう。ですが、その前にお父様に一度献上します」


「わ、わかりました。いや、すごい。聞きしに勝る名刀です。クラクラしました」


 騎士は鞘に納めると、お嬢様に返却しました。


「ラーケン、アーサー様の実力はわかっていただけましたか? それとも一度手合わせしてみますか?」


 どうやら、この騎士の名はラーケンと言うのでしょう。

 レンカの宝刀を所持するかもしれないと言う事は、一番強いと考えて良さそうです。


「ふふふ、それには及びません。私でも手加減してこの者達と戦って、勝てる自信はありません。恐らくアーサー様は私より実力は数倍以上、上でしょう」


「わかって、もらえたのならそれでいいです。アーサー様は私のお客様です。以後失礼の無いように周知徹底して下さい」


「ははっ!!」


「ギャング達は、森の奥ですがアーサー様が森を切り開いてくれました。それを進めば岩山の洞窟に閉じ込めてあります。全員逮捕してください」


「ははっ!! アーサー様、重ね重ねお手数をおかけしました。この御礼は後ほど、おい! 者ども行くそーー!!」


 そう言うと、倒れている騎士を次々起こしていきます。


「う、ううっ」


 騎士達が起き出しました。


「うわあああああああーーーーーーーー!!!!!!」


 ラーケンさんが驚いています。


「ど、どうしたのですか?」


 お嬢様が、ラーケンさんの声に驚いて目を見開いて聞きました。


「見てくださいこれを!」


 見ると、騎士の鎧に拳の形の跡があり、そこがべっこりへこんでいます。


「す、すごい!」


 お嬢様がさらに驚いています。


「アッ、アーサー様。もしかして、もしかしてですが、この者達と、……武器を持つこの者達と素手で戦ったのですか?」


「ええ、まあ、その、弱すぎだったので……」


「…………」


 お嬢様とラーケンさんが無言で私の方を見ています。あごが外れそうな位、口がひらいています。


 その後、洞窟へ行った騎士達は、蓋の岩が動かせないと増員をして動かしましたが、中から飛び出して来た賊達に蹴散らされ十名以上が命を落とし、取り逃がしたと聞きました。

 お嬢様いわく、あのギャング達は滅茶苦茶強い者だったそうです。

「ええっ、滅茶苦茶、弱かっ……」そこまで言ったら、お嬢様が驚きの余り、目玉がポンと音を出して飛び出しそうだったので、言うのを途中でやめておきました。






「うーーん」


 私は、鉄人達を楽々倒す、子供達を見て腕を組んでいます。


「レイカ姉、どうしたのですか?」


 四人の子供達が私のそばに心配そうに駆け寄って来ました。

 相変わらず、可愛い子供達です。


「いいえ、気にしないでください。独り言です」


 既に、人数分の紫の短刀が出来上がり、次々鉄人を倒していきます。

 宝石が、その都度地面に落ちますが、もう誰も感心がありません。

 後で木人に拾わせますが、既に大きな倉庫が半分ほど宝石の樽で埋め尽くされました。

 このままでは成長が出来ない……

 どうやら、子供達の成長は次のステージに来てしまったようです。

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