第3話「世界」

 家に帰り,部屋が薄暗くなってきた頃

 大翔は言った。


 大翔「何も聞かない。ほのかが言いたくなった

“その日” まで、待ってるよ」


 ほのかは少しホッとした顔をした、そんな気がした。



 それから数日が経つ。毎日朝と夜は二人で食事をしているが、相変わらず静かな時間が流れている。だが、大翔はそれでいいと思っていた。

 少しずつ、心を開いてくれるといいな。そんなことを思っていたからだ。



 ほのかが家に来て、9日がたった頃。


 大翔「そうだ!俺明日仕事休みだから、どこかに出かけよう」

「どこに行きたい?」


 ほのか「、、、海」

 大翔「海か〜。いいね、海に行こう」

 ほのか「、、、」


 大翔は何より,会話が続いたことが嬉しかった。普段ほとんど会話なんてないからね(笑)




 次の日

 車の窓からは海が見える。ほのかはずっと外を眺めていた。


 大翔「海、好きなの?」

 ほのか「、、、」


 答えてはくれなかったが、いつもより少し、ほのかの表情が柔らかく見えた。



 外れの小さな町。古風なお店が並ぶ道。

 ゆったりと、落ち着いた空気が漂うところだった。ソフトクリームを食べながら、少し歩いた。


 そして海の近く、砂浜を歩いている。前にはほのかが立っていて、海ではなく足元を見ていた。


 大翔「はぁー、海は広いなー!」


 海を見ながら、そう言って大きく腕を広げて伸びていると、それに反応してか、ほのかはまっすぐ海を見た。何を感じたのか、少し目が潤んでいるように見えた。


 〜〜〜


 海に来た。どこへ行きたいか聞かれて、咄嗟に出てきたのが “海” だった。本物の海を見るのは初めてだ。

 知らない町。ここには私を知っている人は誰一人いない。凄く居心地が良かった。


 そんな時、突然後ろから「海は広いなー!」と聞こえてくると、海が目に映った。

 日が反射してキラキラ光っている水面。空を自由に飛ぶカモメ。ずーっと先まで続いている。目に映る景色は、空と海でいっぱいだ。なんて大きいのだろう。


“知らなかった。世界はこんなに広いんだ”


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光と出会った一人の少女の物語 @Hanana_mirai

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