第35話 2年組で山登りだよ!
「絶好の山登り日和だよーーー!!!!!!」
早朝、まだ朝日も登ってない状態で
私と九十九さんは寝ぼけ眼で
紅葉さんの大声で鼓膜を突き破られる
頭に少しキーンと音が鳴るのが聞こえた
今日は紅葉さんからの誘いで山登りに来た
と言っても本格的な山という訳でもなく
2時間も登ってれば着くような場所だ
「お前さ……何時だと思ってんだよ」
「山と言えば朝日でしょ!!」
「どっちかというと夕暮れじゃね?」
「ピクニックとかすればすぐだって!」
「どんだけいる気なんだよ。3人しかいないのによ」
「ん?他にも呼んでるよ?」
紅葉さんが指さした方向には
2人の見覚えない子がいた
……いや、つい最近見た子達…というか榎木さんと黒マスクの人……!?
「ねーキャップ〜なんで僕だけここに来ないといけないのさ〜ねっむ」
「お呼ばれしたのよ〜ほらあそこ」
黒マスクの人に指さされ
眠そうにしてた榎木さんの顔がみるみる青くなる
「な、なぁんであんた達がいるの!?」
「そこのもみちゃんにお呼ばれしたのさ」
「うん!こないだのインターハイで仲良くなってね、呼んでみたんだ!」
よ、呼んでみたって
いつの間に絡んでたの。陽キャモンスター怖すぎ…
「僕帰る!こんなやつと山登りなんて死んでもヤダね!」
「あれ〜?いいの〜?そこに色ちゃんもいるけど」
「ひっ!?不良もいるのかよ!」
「不良言うな。愛華どうする?任せるぞ」
九十九さん見てビビるって
何したんだろ……
少し迷ったけど、紅葉さんも九十九さんもいるし大丈夫かな
「……いいよ。私は」
「ですって奥さん」
「ぐぬぬぬぬぬ……分かったよ!行けばいいんでしょ!」
はあ……なんだか幸先不安だ……
山登り、先頭は榎木さんと紅葉さん
中間に九十九さんがいて私と黒マスクの人だ
榎木さんはどうしても私と離れたいのか
結構ズカズカと進んでいる
「燈空ちゃーん、そんなにペース早いと途中バテちゃうよ?」
「うるさい陽キャ。僕は僕なりに進むの!」
「せっかく一緒なんだから仲良くしよーよーー」
「あーもーしつこいなあ〜!!」
紅葉さん折れないな……流石だ……
ちらっと私は隣を見るけど
黒マスクの人はその風景を見てクスクス笑っている
「楽しそうで何よりですな」
「え、あれがですか?」
「うにゅ。自分の学校にあんな風に絡んでくれる人はいないから」
やはりあっちでは浮いてるのか…
この人の名前聞きたいけど、中々切り出せない
と横目でチラチラ見てると
いつの間にか蝶々が黒マスクの人のあちこちに舞い始める
「蝶好きなんですか?」
「んー?なんかよく来るんだよね〜」
な、なんかマイペースな人だな……
「あ、あの……そういえばお名前聞いてなかったですよね…?」
「お〜そういやそうでしたな。失敬。自分は玄野(くろの) 菜子(なこ)でーす。こう見えても2年生だゾ」
玄野さん、と名乗った女の子は
「ブイブイ」とポーズを決める
に、2年生でキャプテンだったのか
凄い子なんだろうけど…やっぱり不思議な子だ
「そ、そうだったんだね、キャプテンだったしてっきり3年生かと」
「いんやー自分は断ったんよ?なんか流れでいつの間にか〜」
断ってもって事は余程の実力だったのだろう
榎木さんがキャップと呼んでるくらいだから
実力も認めてるってことなのかな……
じゃあ尚更私のことは認めない理由がよく分からないけど
「ちょっとキャップ!そいつなんかと仲良くしないで!」
「えー自分美人大好きだから。りーむー」
「こんの……」
…認めてるというより、何言っても聞かない説あるな
と思ってると私の腕をギュッと抱きついてくる
私もびっくりしたが
それ以上に他3人がビックリしていた
「玄野さん、な、なにを」
「さっきも言ったじゃないすか。美人大好きなんで」
「理由になってない……」
「お、おまっ!離れろ!」
「そーだよ菜子ちゃん!離れて、ね?ね?」
九十九さんと紅葉さんが急に焦りだして
玄野さんは引き剥がされる
表情はマスクのせいでよく分からないけど
なんだかニヤニヤしてる気もする
「なるほど〜そういうことでございましたか。自分は邪魔だったかもねぇ」
「キャップ……あんたわざとでしょ」
「なんのことだかさっぱり」
それからというもの
頻繁に玄野さんのボディタッチが増えた
急に手を繋がれたり、横腹をつつかれたり
その度に九十九さんが怒って
狼の警戒みたいな唸り声をするようになってしまった
「くそっ、こんなことなら別行動させれば……」
「そんないうなら〜あなたもしてみればいいと思うんです」
「はあ!?い、いや、迷惑だろ…」
「そんなことないって、ねー?」
「え?えっと…大丈夫だよ?」
「そ、そうか?」と九十九さんは凄くタジタジで私の指先をチョンと握る
……ん?手を握るわけじゃないのかな?
と思って私から握ってあげると
ボン!と顔から火が出るかのような音がして赤くなる
「大丈夫九十九さん?」
「ダダっだだ大丈夫だよ」
「あっ、一色ちゃんずるーい!あたしもあたしも!」
紅葉さんも無理やり加わってきて両手が塞がってしまう
なのに2人とも少しずつ恥ずかしくなったのか顔を赤くする
恥ずかしいならしなくていいのに、とは思ったけど
嬉しそうだし、まあいいか
「…………あんた、そんなに女作ってたのね」
「別に作るって訳じゃないよ。友達」
私の言葉に、「「ヴッ!」」と何故か2人はダメージを食らう
榎木さんは呆れたようにため息をつく
「バッカみたい。そんなんの何がいいんだか」
「いやいやいや、人のこと言えないでしょあかりん」
そう言って玄野さんはギュッと榎木さんに引っ付く
思わず「え?」と声を漏らす
「ちょ、ちょっと、引っ付かないでよ鬱陶しい」
「え〜ショボーン」
「2人ってそういう関係なの?」
「ち、違う。見てりゃ分かるでしょ?こいつのスキンシップよ」
スキンシップ……なのかこれは
少し違う気もするけど……
「愛ちゃんも彼女が出来れば分かるさぁ」
彼女、というワードで少しだけ想像したけど
なんだか小っ恥ずかしくてすぐやめた
あんまりそういう想像したことないしなぁ……
そろそろ山頂だ、まだ朝日も登ってないし、楽しみだな
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