第18話 やっぱりダメだぁ〜
球技大会が終わって数日後
もうすぐゴールデンウィークが始まる
特に予定を立ててない私は
帰宅中ボケーと何するか考えていた
すると、急に雨が降ってきて
慌てて折りたたみ傘をさす
そのタイミングで「ひゃー!」という声と共に
私の傘に無理やり入ってきた人がいた
……早乙女さんか
「あれ?無口ちゃん偶然〜!」
「いや、あからさまに無理やり入ってきたでしょ」
「この前も相合傘してくれたじゃん!いいでしょ?」
そういえば、会って早々やったな
もう1か月前か、あれと思ってると
「あ、そうだ!」と家を指さす
「あれ、あたしの家なんだよね、良かったら寄ってかない?」
「え、なんで」
「無口ちゃんも濡れたでしょ?お風呂貸すよ」
そんな急に、と断ろうとするけど
雨はどんどん酷くなるばかりだ
これじゃまともに歩くのもままならない
……お言葉に甘えるか
「わかった」
「やった!」
早乙女さん家に入り、早速お風呂を貸してもらうことに
「湯加減どう?着替え置いとくね」
「早乙女さんは後で良かったの?」
「無口ちゃんのおかげでそんなに濡れてないから大丈夫!」
ならいいけど……
それにしても、クラスメイトの家にいて
お風呂頂いてるなんて、変な感じだ
……ドア越しにまだ気配を感じるけど
まだ早乙女さんいるのかな?
「無口ちゃんは、なんだかんだ言って優しいよね」
「一言余計じゃない?そんなことないよ」
「ううん、その優しさに甘えちゃってるから、ありがとね」
別に大したこと無かったのに
こんなに感謝されるとむず痒い
空気に耐えられなくてドアを開ける
「うわぁ!?急に出てこないでよ!タオルは!?」
「私の体なんて興味無いでしょ?」
「いやいやいや!普通は隠すの!」
早乙女さんは顔を真っ赤にして
タオルを押し付けて部屋を出る
女の子同士だし大丈夫だと思ったんだけど
……やっぱり人と接するのは難しいな
「本当になんなの……無口ちゃんの体、すっごい綺麗だった……」
「凄いいい湯だった」
「わひゃあ!もう!無口ちゃん暗殺の才能あると思う!!!」
「あんまり嬉しくない」
早乙女さんの服、あまりサイズが合わなくてダボッとする
主に胸が。
「無口ちゃんの方が身長高いから、合うか心配だったけど、逆に大きかったね」
「……多分その余計な脂肪だと思う」
「よ、余計とは失礼な!これでも気にしてるんだからね!」
羨まけしからん脂肪だけで、こんなにサイズ変わるのか……
雨も止まないし、なんだか今日はついてない
予報じゃ後2時間も降るのか…
早乙女さんの服を濡らす訳にもいかないけど
ずっとこの陽のオーラに当てられてたら私がもたない
「そうだ!ゲームでもする?弟達のやつだけど」
「……お姉さんなの意外」
「気になるのそこ?あ、わかった。あたしがしっかりしてないと思ってるんだ」
「うん」
「即答!?ちょっとへこむ〜」
オーバーなリアクションに、思わずクスッと笑ってしまう
しまった、きっと「今笑ったよね!?」って弄られる
と思って早乙女さんの方を見ると
何故かポカンとした表情で私を見ていた
「ど、どうしたの?」
「え?ご、ごめん!無口ちゃん笑えるんだね!!!」
「そっちも酷いこと言うね。この前お礼言った時も微笑んだつもりだったけど」
「お互い様でしょ!あ、あたし…むむ麦茶持ってくるね!」
急に早口で厨房の方へ走っていく
よくわからない子だな…と思いながら
スマホを開くと、妹からReinがきていた
『お姉ちゃんまだ学校終わらないの?(´・ω・`)』
しまった、妹のご飯を作ってやらなきゃいけないんだった
私は中途半端に乾いた制服に着替えて
「ごめん、もう帰るね。着替えた服は洗って返すから」
とだけ伝えて家を出た
早乙女さんの「えっ!?ちょっと待って!」という声が聞こえた気がするが
私は無視して家に帰った
【おまけ】
「行っちゃった……あたしが恋愛について教えないといけないのに、つい逃げちゃった…」
紅葉はそのまま風呂の湯に浸かる
「あたし、無口ちゃんのこと好きなのかな……うぅ、こんなの初めてだからわかんないよぉ」
「ねーちゃんまだ入ってんの?」
「やっぱりダメだぁ〜どうすればいいのかわかんないよぉ〜!」
「ねーちゃん早く上がってよ〜」
「こたろーにはあたしの気持ちわかんないだろーね!」
「急にどうしたの……?」
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