第10話 八月一日 凪
『今回も雪乃視点で話が始まります』
お姉ちゃんと別れた後、美術室に向かった
ペアでお互いを模写するらしく
班決めが始まったタイミングだった
雪乃達が2人で帰ってきたのを察してか
先生は私と十三さんの二人をペアにしてくれた
でもクラスの人数的に1人余らない…?
「ちょっといい?」
そんなこと思ってたら赤髪のポニテの子が話しかけてきた
「あたい、余りそうだから混ぜてもろていい?」
「あ、はい、よろしいですよ。むしろ私が抜けて私が1人でやった方がよろしいのでは…!?」
「それ誰を模写することになるんや?」
「私でしょうか……?」
「寂し過ぎるから一緒にいてくれはる?」
「承知しました…」
十三さん、本当にネガティブですぐ居なくなろうとするの治して欲しいな
でもこの子、初対面なのに収め方すぐ分かってすごいな
というか関西弁…?なんでだ……?
「そういえば、あたいの名前分かるかな?」
「八月一日(ほづき) 凪(なぎ)さんですよね」
「ほづき……?」
「八月一日って書いてほづきって読むんよ、難しいよなぁ」
そ、そんな苗字あるんだ
珍しい苗字……
「私は十三と言いまして、こちらは神楽さんです」
「あぁ知っとるよ、2人とも保健室組で有名やからな」
「そんなに私保健室に行くイメージでしょうか?」
「そりゃあもう、流さんなんてこの前窓ガラス頭に刺さった状態で来てたやん」
「あぁ、私に犬が襲いかかってきて、その拍子に地面に頭からぶつけた話ですかね……?」
「そんなことある?大丈夫だったん?」
「なんとか気絶する程度で事なきを得ました」
「しっかり気絶しとるやん、事起きてるんよそれ」
ずっと2人が話してる間、中々会話に入れず
少しモジモジしてたら
雪乃が話に入れないのを察したのか
八月一日さんは「雪乃さんも体は大丈夫なん?」と聞いてきて
「大丈夫」としか返せなかった
ここに来てまともに学校に来てないツケが来てる
3人以上になると何話していいか分からなくなる…
上手く絞り出して出た会話が
「関西の人なの?」だったけど
「あぁこれめちゃくちゃエセやで」と返された
エセなのにすごく上手いな…
「2人とも美人さんだから、上手く描けるか心配やわぁ」
「そ、そんなことないです、八月一日さんも美人ですよ」
「お世辞は嬉しいけど、苗字呼び距離感遠くない?」
「そうですよね、苗字を呼ぶのもおこがましいですよね」
「そういうことじゃなくて、お互い名前で呼ぼうって話」
「それもおこがましいというか……」
「ほら、八月一日も、十三も、神楽も読みにくいやん。読者混乱するて」
「読者……?なんのことでしょう」
「サァワカンネェッスシャッス」
ここだ……!と思い、戸惑ってる十三さんより先に
「じゃあ……凪ちゃん。流ちゃん……」と言う
「はい、凪ちゃんですよ」
「えっと……凪ちゃん…さん?雪乃ちゃん…さん?」
「ちゃん込みの芸名みたいになってるから。難しいならさん付けでええよ」
「わかりました」
「あたいも2人のことは呼び捨てで呼ぼうかな」
「ねぇ。なんで雪乃達にそんな仲良くしてくれるの?」
「あたいもよくやんちゃして保健室組だったのもあるけど、おかんもおとんも医者関係だから、なんか親近感湧くんよね」
どっちも医者関係…
病院によく行くから分かるけど、それって余り家に親がいないって事にもなるよね
この子も、ずっと明るく喋ってるけど
寂しい思いしてるのかな…
この子とも、仲良くなれるかも……!
お姉ちゃん、また私に勇気をください……!
「雪乃、凪ちゃんとも、友達に、なり、たいなぁ」
「えらい途切れ途切れやけど、なんか腹話術でもしてるんか?」
「恥ずかしいから言わないで……」
「もちろん、あたいでよければ喜んで」
「ありがとう……」
「なんか二人共自己肯定感低くない?もっとポジティブにならないと」
「「努力はする」します」
「行けたら行くみたいなのをハモらすな」
「そういえばお二方、模写は終わりましたか?」
「そりゃあもう、目に入れても痛くない出来になったで」
「…雪乃もできた」
あまり上手く描けなかったけど、まあまあな出来かな
2人の絵を見ると
凪ちゃんはめっちゃ下手で流ちゃんの絵はめっちゃ綺麗だった
「凪さんはその……独特な絵ですね」
「褒めるとこないなら無理に褒めんで」
「…………下手」
「雪乃は辛辣すぎん?てか流は上手すぎんか」
「いえ、お二方の絵に比べれば燃やす燃料にしかなりません」
「ということはあたいの絵は燃えないゴミか?」
「……目薬って本当に燃えないゴミだしね」
「目に入れても痛くないというフラグの回収に全米が泣いたわ」
「流ちゃんは…もっと自信持っていいと思う。。本当に上手いから」
「恐れ多いです……!」
「…凪ちゃんは、その自信も、燃えないゴミで出そうね」
「ちょっと待ってそれも捨てたら友達しか残らんくなる!!!」
「……じゃあいいじゃん」
「ほなええか、とはならんのよ?」
「ふふっ何だか、御二方はかなり仲良くなりましたね。凪さんのおかげでしょうか」
「ほらみろ、あたいすごいでしょ」
「……うん、本当にいい人だと思う」
「大変、この子達、笑顔であたいを殺しに来てる!」
八月一日(ほづき) 凪(なぎ)
高校1年生 149センチ 赤のポニーテール(長め)
エセ関西弁で距離感が近めな女の子
ツッコミに最適だと思ってるだけで
本人は関西に行ったことがない
そこはかとなく友人はいっぱいいるが
なかなか馴染めず、保健室組と呼ばれる2人に少し親近感が湧いて仲良くなる
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