第9話 十三 流
『愛華がお昼を食べに行く少し前、雪乃視点』
お姉ちゃんに虫がつくようになってから
雪乃も頑張って登校してお姉ちゃんを監視するようになった
でも自分の病弱な体は中々言う事を聞いてくれなくて
保健室で寝ていた
あぁ、もうちょっとで授業戻れるかな……と思ってると
カーテン越しにか細い声が聞こえた
「先生、また絆創膏をくれませんか?」
「十三さんまた?よく怪我するわね」
同じクラスの十三(とさ)さん?
話したことない子だけど、こんな落ち着いた声してるんだ
ちらっとカーテン越しから覗くと
思った以上に十三さんは体のあちこちに擦り傷が出来ていた
「どこで何をしたらこんな怪我するの?」
「それはえっと……恥ずかしいので言えません」
先生と話してる間に、バッチリと私と目が合う
十三さんは一瞬目を丸くしてから視線をずらす
「すすすすみません!寝ていた方がいらっしゃったんですね!騒がしくしてすみません!」
「神楽さんのこと?少し体調が優れないだけだから大丈夫よ」
先生は「ね?」と私の顔色を伺うので
私はこくりと頷く
「それならよいのですが……」と私をちらっと見る
「神楽さん……もしや同じクラスの?」
「そうよ、この子病弱でね。よくここで休んでるのよ」
雪乃の事知ってくれてるんだ
雪乃、まだクラスに居た時間は1日も満たないレベルなのに……
「神楽さんは体調どう?授業戻れそう?」
「は、はい、なんとか」
「そう、じゃあ十三さん、ついでで悪いけど神楽さんも連れてってあげて」
「か、かしこまりました!」
十三さんは私に手を差し伸べて
「立てますか?」と気にかけてくれる
凄く優しい子だな…と思い、手を握ろうとすると
直ぐに手をひっこめられた
「すみません!私の汚い手はさわりたくないですよね!」
「そんなことない……綺麗だと思うけど」
「綺麗だなんてそんな……神楽さんと比べれば私(わたくし)なんてゴミも同然……」
すごいネガティブな人だな……
「大丈夫だから、早く行こ?」というと
ようやく「そうですね」と我に返った
廊下を歩いてる最中
一切の会話もなく歩いてると
目の前に不良達が道を塞いで喋っていた
「ここは通れないね……」
と雪乃が呟くと、不良達は雪乃達に気づいた
…いや、達というより、十三さんに気づいた
「あれー?なんで絆創膏なんかつけてんだよ」
「す、すみません、見える場所だったので……」
「わざとに決まってんだろ、他にもつけてやろうか?」
この人達、十三さんと知り合い…?
他にもつけるって、もしかしてあの怪我この人達が…
私は咄嗟に十三さんの前に立つ
「だ、だめ!」
「あ?なんだお前」
「ぼ、暴力は、良くない…と思います」
「神楽さん、いいんです。それでこの方達の気が晴れるなら、私は本望です」
「どうして……」
「どうしてもなにも、俺らはこいつと『遊んで』やっんてんの!だからどきな!」
不良達は雪乃を払い除けて十三さんの所に歩き出す
そんな……ひどい……
雪乃が病弱じゃなきゃ、助けられるかもしれないのに……
「助けて……お姉ちゃん……」
雪乃がそう呟いた瞬間
不良達の足が止まった
雪乃達と不良の間にドスン!という
何かが着地した音と共に
砂埃で前が見えなくなる
埃がダメな私は思わず息を止めようとするけど
すぐに砂埃を全てはらいのけてくれる人がいた
埃で見えなかったけど、誰がこんなことやったのかすぐに分かったよ
右手には箸、左手には食べかけの弁当を持ったままのお姉ちゃんだ
「雪乃、大丈夫?貴方も、怪我が酷いね……」
「お、お姉ちゃん、な、なんでここに……」
「雪乃の助けを呼ぶ声なら、例え宇宙でも行く」
「お姉ちゃん……♡」
「な、なんだお前!?」
「先生呼んだから、君たちが補導されるのも時間の問題だよ」
「ちくしょう!」とすごい雑魚感満載の捨て台詞を吐いてどこかへ走る
緊張の糸が解けて、また体調が悪くなる感覚がする
「大丈夫?雪乃」
「ありがとう……お姉ちゃん」
「すぐ来れなくてごめんね。貴方も大丈夫?」
「あの……神楽さんのお姉さん?は何故助けてくださったのですか?」
「妹が助けを呼んだからってのもあるけど、あなたのその傷だらけの体見て、放っては置けないから。じゃあ私、クラスメイト待たせてるから」
颯爽と来て颯爽と帰ったお姉ちゃんの背中を見て
昔ほど積極性はなくなったけど
やっぱりお姉ちゃんはかっこいい!!と思った
「今度、お礼をしなければなりませんね……」
「…ねえ、さっきの不良さん、遊んであげてるって言ってたけど、どういう意味?」
「私は昔から友達が居なくて、コミュニケーション能力も無いのですが、あの方達が『遊び方を教えてくれる』と言ったので…間違っていると脳では理解出来ていたのですが……中々勇気が出せず。」
色々苦労してたんだな……
この子となら…友達になれるかもしれない
でもどうやって……雪乃、今までまともに学校いなかったし
友達なんて出来たこともなかったのに
……怖がってちゃダメだ
お姉ちゃん、勇気をください
「ねえ、雪乃で、良ければ、友達に、なってくれない?」
「え、よよよよよよろしいのですか?」
「雪乃も、友達、居ないし……ダメかな?」
「ダメなんて恐れ多いです!十三(とさ) 流(はる)と申します!よろしくお願いいたします!」
「神楽雪乃だよ。よろしくね、十三さん」
「はい!神楽さん!」
やった、お姉ちゃん!
私、友達出来たよ……!
【おまけ】
紅葉「あ、無口ちゃん!急に居なくなったからびっくりしたよ!どうしたの?」
愛華「ちょっと妹の所に行ってた」
紅葉「妹ちゃん?すぐ近くだったの?」
愛華「1階かな?近く保健室あったし」
紅葉「え、1階?(ここ屋上だし4階あるはずなんだけど……?)」
愛華「うん、こう、柵をさささって」
紅葉「そうなんだ〜(あの柵3mはあるけど……!?)」
愛華「……なんか変だった?」
紅葉「え!?全然!!!!(妹ちゃんが無口ちゃんラブなのわかった気がする……)」
愛華(妹のためとはいえ目立ちすぎたかな……控えないと……)
【プロフィール】
十三(とさ) 流(はる)
高校1年生 162センチ
薄ピンクの短髪(肩にかからない程度)
かなりネガティブで常に怪我をしているボロボロ女の子
自己肯定感が低く、自己主張とコミュ力も少ないため
友達もいなく、かなりの期間いじめられ続けてきた
自分のことをゴミも同然だと思ってるので、すぐに身を投げ出そうとすることも多々
流されやすい性格だが小さい子への面倒見はいい優しい子
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