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中学生になって一年が経ち、学年が上がって直ぐの事。放課後、一人で残っていると必ずソイツは現れた。
「また出やがったな…?」
「出てきちゃ駄目だったかな?」
「別に」
体育座りで此方に話し掛けてくる“オバケ”は、窓の外をぼんやりと眺めていた。今じゃ見慣れたこの光景も、初めの頃は突如現れた奴に驚きを隠せなかったのは言うまでもない。
なんせ、暗闇の教室で前触れも無しに顔の上半分がない奇妙な奴がいきなり現れたのだ。誰だってあんなのを見たら驚くに決まっている。
だが、不思議な事に当時の俺は驚きはしたものの怖さは微塵も感じていなかった。
もしかしたらコイツが────いや、それは無いか……。
その時のオバケは、姿を現したからといって別段悪さをするわけでもなく、ただ机の上に座ってぼーっと窓の外を眺めているだけだった。だからそれほど恐怖を感じなかったのかも知れない。
あるとき、気になって声を掛けてみたらオバケはちゃんと意思疎通出来る奴だった。普通に話せたし、会話だって通じた。だけどオバケの名前は本人にも分からないらしく、俺はオバケを“お前”と呼んだ。それからオバケと会うためだけに俺は放課後よく残るようになった……。
「お前は俺以外の奴と会ったことあるのか?」
窓の外を見ていたオバケに質問を投げ掛ける。
「あるにはあるけど、君みたいに話した事はないかなぁ…」
「ビビって逃げられたのか?」
「いいや。見えて無いんだよ」
オバケは俯き呟いた。どうやらオバケは俺にしか見えていないらしい。元気なさげなオバケを俺は紺色に染まる空を見つめながら鼻で嗤った。
「フン。まぁ、見えなくて正解かもなぁ…キモがられて嫌われるよりはマシだろ!」
視線を向けると、暫く黙っていたオバケは此方に顔を向けて口元を弛ませた。
「うん……それもそうだね」
オバケの返事は凄く穏やかだった。
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