血に染まる聖女

美杉。節約令嬢、書籍化進行中

第1話 血を求める聖女

 皮を突き抜けると、まるで熟れた果実のような柔らかい感触が手に伝わってくる。

 そして吸い込まれるように、ナイフは体の中へと抵抗なく進んでいった。


 それはなんとも形容しがたい初めての経験。

 しかし罪にまみれたその行為は、私にはなによりも甘美に思えた。


「ど……どうして……」


 虚ろな目が私を見る。その目は先ほどまでの光を湛えることはなく、ただ絶望に染まっていた。

 私が彼女の体からナイフを引き抜けば、その顔が痛みと恐怖で満ち溢れる。


 今までこんな風に歪んだ自分以外の顔など、見たことがあっただろうか。


「ふふふ。綺麗ね」


 その顔も、この部屋を真っ赤に染める赤い血も。

 自分には似つかわしくない白で統一されてきた私には、新しい世界が開けたように思えた。


 だからこそ、よろよろと倒れ込む少女に馬乗りになり、何度も何度もその色を求めた。

 そう、それが動かなくなるまで。


「あら、もう駄目なのね。残念」


 ピクリとも動かなくなった少女の体と、切れ味のなくなったナイフを私は投げ捨てた。


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