琴葉さんの言い回しは難解である
@JULIA_JULIA
琴葉さんの言い回しは難解である
「キミの心は、東京の空だね」
頬杖を突きながら眉間に皺を寄せつつ、そう言ったのは、
僕はついさっき、琴葉さんから言われた。『それ、一口ちょうだいよ』と。【それ】とは、僕が注文したカレーライスのこと。僕はその【お願い】を丁重に断った。彼女はちゃんと自分の食事を確保している。オムライスを食べているのだ。だから僕のカレーライスを、たとえ一口であろうとも、譲渡するつもりなどない。
「東京の空? ・・・排気ガス? 僕の心が汚れてる───って言いたいんですか?」
「違うよ。【狭い】って意味」
なるほど・・・。カレーライス一口を譲渡しなかったから、ケチだと思われているのか。
「そんなことだと、地球を持ち上げようとすることになるよ」
「いえ、しませんけど・・・。なにを言ってるんですか?」
「絶対にモテない───ってこと」
ほぅ・・・、辛辣だな。たかがカレーライス一口のことで、僕のモテ度を査定するとは。しかしまぁ、あながち間違ってはいない。僕はモテないからな。しかし、【絶対に】というのは聞き捨てならない。
「いやいや。僕だって、そのうち可愛い彼女が出来ますから」
「それは───、逆立ちをしながら蟻を捕まえようとする感じだね」
逆立ち? 蟻? ・・・う~む、分からない。
「あのですね、もっと分かるように言ってもらえますか?」
「徳島県三好市の、かずら橋のある地域だね」
・・・は?
「ワタシは、可笑しなシューズなのさ」
シューズ? なんのことだ?
「とにかく───」
「いやいやいや! ちょっと待って下さいよ! さっきから全然意味が分かりませんから!」
「・・・where、mosquito、Rakshasa、niece、vinegar、lever、clinic、stand?」
・・・なんで英語? っていうか、英単語?
「ほら、早く言いなよ」
「・・・なにをですか?」
「はぁ・・・。便秘なのかい?」
「違いますけど!? なんなんですか、急に!?」
「・・・本当に、分からないのかい?」
「分かりませんよ! こんなの、誰にも分かりませんから!」
「そうかい、じゃあ・・・。ワタシは尻尾が見えるよ」
「どこに!? いや、なんの!? なんの尻尾が見えてるんですか!? もしかして、怖い話ですか!?」
その問い掛けには答えず、琴葉さんは嬉しそうにオムライスを食べていた。心なしか、彼女の頬が少し赤くなっているように見えた。
琴葉さんの言い回しは難解である @JULIA_JULIA
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