愛の温もり

冬彩 桜月

愛の温もり

「もう、またこんなところで寝てるの?」

研究室に女性の声が響く「ハルカ?……ということは また僕は寝ていたんだね」目を

覚ました男性はメガネを外し体を伸ばした。

「そうよ。何度も呼んだのにちっとも起きてくれないんだから いつも言ってるでしょう?寝るならベッドに行かないと風邪ひくって」

まるで母親のようにハルカは叱った。

「ごめん、ごめん。あともう少しで完成しそうだったんだ」ハルカは呆れたかと思うと

俯いた「そう言って完成した試しなんてないでしょう?……魔法騎士はトキのようやく叶った夢であり誇りだったのに私のせいで辞めざるを得なかったのはわかってる」トキは

子供の頃街が燃え野原となり両親を亡くした。だが騎士団と共に来ていた魔法騎士により命を救われ魔法を使えたトキは魔法騎士を目指すようになり血のにじむような努力をし自力で副隊長という座まで上り詰めた。あと一歩で隊長になれるという時にハルカと出会い結婚するにあたって死と隣り合わせの仕事を辞めざるを得なかった。「ハルカのせいじゃないよ。僕にはこんな道もあったんだって気づかせてくれたハルカに感謝してるくらいなんだよ?」トキはそう言ったが内心では本当は続けていれば隊長になれたのかもしれないと考えることもあったそうすればもっとハルカを自由にできたのに……と。「それよりお腹すいたなぁ。ハルカ何か食べるものない?」トキは立ち上がった「シチューならあるけれど」ハルカがそう言うと「やったー!ハルカのシチューは世界一美味しいよね。

そうだ 僕ハルカに紅茶入れよっか?」

まるで子供のように無邪気に笑ったトキを見てハルカも釣られて笑う「料理はトキの方が上手なのにいつも褒めてくれるよね、ありがとう。」「えぇ〜?僕は思ったこと言ってるだけなんだけどなぁ。ハルカの料理は

世界一だよ暖かくてホッとするし 本当自慢の奥さんだよ」たまに一緒に街に買い物に行ったり夫婦仲は良いしお互い一緒にいて隣が心地よく 喧嘩はたまにするけれどすぐに仲直り本当に幸せな毎日だった。

だからその幸せがまるで穴が空いたように

突然無くなるなんて想像もしていなかった。

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