新しい季節の訪れ

収穫祭の後、村の空気はさらに穏やかで、秋の色が深まっていった。朝晩の涼しさが心地よく、昼間はまだ暖かさを感じるこの季節。ミナと共に村の畑を歩きながら、秋の気配を感じ取ることができた。


「秋になると、畑の作物も一段と美味しくなるのよね。特にこの時期のカボチャやサツマイモは格別よ」


「そうなんですね。こちらの季節は、どれも新鮮で美味しそうですね」


歩きながら周りを見渡すと、畑の隅々までが豊かな実りに包まれているのがわかる。黄色く色づいたカボチャや、赤く熟したトマト、葉の色がほんのりと紅葉してきた茄子など、すべてが自然と調和し、穏やかに育っている。


「それに、秋は新しい作物を植える準備をする時期でもあるの。畑の土を休ませつつ、来年のための計画を立てるのが大事なんだよ」


ミナは手に持っていた小さな鍬を使って、土を軽く掘り返しながら話してくれる。その姿がとても頼もしく見えた。


「新しい作物を育てる計画ですか?」


「ええ、来年に向けてどんな作物を植えるかを考える時期でもあるの。村の皆と相談して、何を育てるか決めるのもまた楽しい作業だよ」


その後、村の広場に戻ると、村人たちが集まり始めていた。今日は、次の季節に向けての「植え付けの日」。秋の終わりに、翌年の作物を育てるための準備をする日なのだ。この日のために、みんなが少しずつ種や苗を持ち寄って、それを畑に植えていく。


「みんなで一緒に作業すると、いつも以上に楽しいわね」とミナが微笑んだ。


「本当にそうですね。一人でやるより、皆で協力してやるほうが何倍も充実感があります」


広場の端から、村の長老がやってきて、準備が整ったことを告げる。長老はその日を「新しい命の始まりの日」と呼び、みんなに向かって穏やかな声で話しかけた。


「今日、皆で植えるのは来年の命の源となる作物たちです。これからの季節も、大地と共に生きていけるよう心を込めて育てましょう」


その言葉に、村人たちは頷き、作業に取り掛かった。土を耕し、種を蒔き、苗を植える。あちらこちらで和やかな笑い声が響き、畑がまた新しい命で満たされていく。


自分も、ミナと共にその作業に加わった。最初は慣れない手つきで土を扱っていたが、徐々にそのリズムに慣れていった。周りの村人たちが手伝ってくれるので、安心して作業を進めることができる。ミナは何度も優しくアドバイスをしてくれ、次第に自分も楽しみながら作業に取り組めるようになった。


「ほら、これで来年の春には美味しい野菜がたくさん育つよ」とミナがにっこりと笑った。


「ありがとうございます。こんなふうに皆で一緒にやることが、大切なんですね」


「うん、そうだね。大地に感謝し、皆で協力し合って生きていくことが、この村の大事なことなんだ」


午後になり、作業が終わると、再び広場に集まって休憩を取ることになった。村の人々が持ち寄ったお茶やお菓子が並べられ、みんなで一息ついた。


「こうして、季節の移り変わりを感じながら、村の皆と一緒に過ごすことができて幸せだな」


ミナがそうつぶやくと、周りの村人たちも同じように微笑んでいた。この村では、どんな時でも皆が一緒に協力し、支え合って生活している。その温かさに包まれながら、ふと、自分もこの村での生活に溶け込んでいることを実感した。


「これからの季節も、この村で皆と共に過ごせるのが楽しみです」


村の人々と共に、これから迎える冬と、再び春を迎えるための準備が整った。その日は、新しい季節の始まりとして、村にとってまたひとつ大切な日となった。


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