第8話 遭遇
任務中、私の水魔法は大いに役立った。
水の塊が瞬時にしなる縄となり、敵の動きを封じ込めた。次の瞬間には鋭い槍の形を成し、敵の隙をついた攻撃を繰り出す。隊員たちの目が驚愕に見開かれているのが見て取れた。
先ほど、からかってきた隊員は、「ぁ、え」と戸惑っていた。
そして、隊長なのだろうか。
なんだか偉そうな人に「おい!クラス、キャスル!さっさと動け!」
2人は「はい!」と返事をしていたけれど、二人の顔は紅潮し、うつむいた視線を私の方へも向けられずにいた。
今までの軽薄な態度が一転し、ただ屈辱をこらえて立っている様子が、私にはなんとも滑稽に見えた。
隊長にはその後、飴を貰った。
飴を手渡しながら、『街で見つけてな』と、さりげない笑みを浮かべてくれた。隊長の厳しさと親しみのある優しさが垣間見えた気がした。
しばらく歩いていると、青年に出会った。
ニさんとよく似た色合いの黒髪の青年で、顔には布を付けていてよく見えなかった。
そんなので、前が見えるのだろか、と思ったが何事もないかのように歩いているので、魔法陣かなにか書いてあるのだろうと思った。
鍛錬期間中、私はそういう魔法陣を利用したものや、仕組みを何回か見かけたことがあったからだ。
隊員たちが瞬時に戦闘態勢に入る。黒髪の青年はその様子を気にすることなく、ゆっくりと歩み寄ってくる。その姿には、戦士であるはずの隊員たちでさえも簡単に近づけないような威圧感が漂っていた。
「ミユキさん、あれは反国組織そ頭領です。そして――」
「元・1/2番街の管理人!」
と、心做しか嬉しそうに話した。
「何のようですか。」
隊長(仮)さんが、警戒しながら問いかけた。
「別にゾランと戦おーってわけじゃないから。」
素っ気なく話し、彼は歩を進めた。
「はじめまして、ミユキさん。君に、このセカイのことありったけ話そうと思う。近年の制度は僕、知らないけれどそれでもきっと、君の力になる」
彼はにっ、と笑った。
彼が手に触れた瞬間、冷たい水が頭の中に流れ込むような感覚が広がった。見たことのない風景や言葉が次々と頭をよぎり、まるで彼の記憶を一瞬で共有したような錯覚に陥った。
まさか、この異世界の真実に触れられる日が来るなんて…。驚きと共に、彼が何を語るのか、期待と不安が入り混じった感情が胸の中で渦巻いていく。
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