十四時過ぎのフクロウ③

            五時間目後の休み時間


 とりあえず、鵜澤さんに確認してみよう。


 「鵜澤さん。」


 「どうしたの、梟木さん。」


 「私いま、晴風のラブレターを探しているの。」


 「え、あれマジで無くなっちゃったの。」


 「そうなんだよ。それで、登校したときのことを教えてもらえる?」


 「いいよ。先月の上履き盗難事件も解決した、A組の名探偵さん!」


 鵜澤さんの口調は軽いが、いつもより少し真剣な目をしていた。


 「室内で活動する部活の活動が始まるのは原則七時なんだけど、私今日ちょっと遅刻しちゃって、七時十分に昇降口に着いたんだ。」


 「うんうん。」


 「その時、晴風の下駄箱に小さな青い封筒が入ってるのを見たの。見かけ的にラブレターかなあと思ってね。」


 「なるほどね。ってことは鵜澤さんが体育館に着いた時には、体育館の部活はもう始まってたんだ。」


 「うん、そうだね。始まってた。」


 「うちのクラスの人たちは全員ちゃんといたのかな。」


 「うん、バスケ部と、バレー部の子たちはいたよ。二階でやってる部活動のうち、卓球部は確認してないけど、音がしてたから練習自体はあったみたい。格技場の剣道部の高山たかやまさんはやーっって声が特徴的だから、いたなってわかる。」


 「ありがとう、助かるよ。」


 「なにか他に、私にお手伝いできることあるかな?」


 「じゃあ、サッカー部と陸部とソフテニの人に今日何時に部活が終わったか聞いてきてくれる?」


 「サッカー部は今日戻ってくるのが遅くて、先生に怒られてたよ。八時十分くらいじゃなかったかな。うちのクラスのは三人とも怒られてた。」


 「じゃあ陸部とソフテニだけでいいや、ありがと。」


 鵜澤さんと別れた私は、卓球部の二人に今日何時に登校したかと聞き、二人とも六時五十分には体育館の二階にいたと聞いた。ちなみに二人とも青い封筒を確かに見たと言う。二人が共犯でない限り、卓球部も除外して良さそうだ。


 ちょっとお手洗いに行きたくなった。教室を出る時、一番ドア側にいる美術部の小岩井こいわいさんが青とオレンジのリバーシブルの折り紙で何かを作っているのが見えた。やはり美術部は器用だななどと考えながら、お手洗いで花を摘む。


 教室に戻る途中で帰宅部の高橋たかはしくんと吉田よしだくんが今流行っているラブコメ漫画について話しているのが聞こえた。どうやら眼鏡のヒロインがいいらしい。やはり心と時間に余裕があると、人は恋愛に惹かれるのだろうか。そんなことを考えながら席に戻ると鵜澤さんの短いメモが置かれていた。


 「陸上部、終了7:40、全員出席。 ソフテニ部、終了7:50、全員出席。」


 私は鵜澤さんに向かって合掌する。鵜澤さんはウインクを返して着席した。


              六時間目 数学A


 数学教師は順列について説明を始める。私はそんな授業をよそに、クラスメイトの登校の時系列を整理した。


・7:00 室内運動部活動開始。鵜澤さん以外の全員が昇降口を通過完了

・7:10 鵜澤さんが登校。ラブレターの存在を目撃。

・ラブレターが盗まれる、

・7:30 晴風登校。

・7:40 陸上部終了。

・7:50 ソフテニ部終了。

・8:10 サッカー部終了


 朝練のあったクラスメイトは全員、七時十分に来た鵜澤さんの前、または七時三十分に来た晴風の後に昇降口を通っていることがわかる。現時点で容疑者は、朝練がなく今日出席している美術部の小岩井さん、帰宅部の高橋くんと吉田くん、またはラブレターを仕組んだ本人とその周辺人物に絞ることができるだろう。


 あとは三人が昇降口に来た時間、そしてその時にラブレターがあったのかを知る必要がある。私はまた紙に、「晴風が来た時点で教室にいた人を全員教えて。①小岩井さん、②高橋くん、③吉田くん」と書いて前の席の晴風に渡す。晴風は後ろに手を回し、右手の人差し指と中指で作ったV字のうえに左手の人差し指で横に線を作った。これは②の高橋くんがいなかったということだろうか。そう書いて渡すと彼女は首を横に振り、「1、2、3、〇」と指でサインをした。さっきのはどうやら「全て」を表すターンエーだったらしい。数学の時間だからってわかりづらいわ。


 ともかく、三人ともいたということは、次の休み時間は忙しくなりそうだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る