翔ぶ鳥たちに風はふく

北前 憂

プロローグ


     これは 彼女たちの物語





 






     


 

バイクが好きだ。

   

シートに跨って ハンドルを握る。


愛馬と一体になれたような心地よい感覚に身を委ねる。


風と共に季節の移ろいを感じ、


愛馬は私を好きな所へ連れて行く。




彼女は振り返り、改めて自分の愛馬を見つめた。

" トライアンフ ・ スクランブラー “

街乗りでもラフ·ロードでも楽しめる。今の自分にピッタリだと思った。

今座っているこの砂浜にも、このバイクだったからこそ乗り入れる事が出来た。

道路脇から海が見えた時、日が沈む前にもっと近くに行ってみたいと思い、僅かな小道を見つけて下りてきた。

目の前に広がる景色は決して大きいとは言えなかったが、砂浜には足跡も轍も無く、まるで自分だけの特別席のように思えた。

その特別なひとときを、彼女はぼんやりと満喫する。


時折吹く風が彼女の長い髪と耳元のピアスを優しく撫でていく。

彼女はおもむろに、ウエストポーチからスマートフォンを取り出した。



 

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