世界と向き合う



亮は魔物の咆哮に対抗するように一歩踏み出した。彼の心には恐れも迷いも残っていたが、それ以上に「自分がここで戦わなければ、誰が村を守るのか」という強い思いが湧き上がっていた。自分の使命感がまだ完全に固まっているわけではない。だが、この村にいる人々の笑顔や感謝の言葉が脳裏をよぎり、自然と彼の足を前に進めさせた。


「俺にできることは限られてるかもしれないけど…やるしかない!」


亮は「パラレルワールド」を発動し、またしても別の可能性へと飛び込んだ。異なる世界の重なりが見え、彼はわずかでも魔物の力が弱まるような並行世界を探す。瞬間、彼は目の前の魔物がわずかに力を抑えられた姿で現れる並行世界にたどり着いた。


「この世界で…行ける!」


彼は意を決してスキルを維持しつつ、魔物に向かって突進した。手には村人から借りた剣が握られているが、亮の真の武器はその異能の力だ。「パラレルワールド」を駆使して、少しでも有利な状況を作り出し、相手の攻撃をかわしながら徐々に距離を詰めていく。


しかし、魔物の一撃はやはり強大だった。亮はギリギリのところでかわすものの、土埃が舞い上がり、その風圧に吹き飛ばされそうになる。彼の中には、スキルで戦況をコントロールできるという確信があったが、同時に体力の限界が近づいていることも感じ取っていた。


「このままじゃ…持たない…!」


そんなとき、村の方から何人かの若者が剣を手に駆けつけてきた。彼らは亮の教えを受けていた村人たちであり、亮の姿に触発され、自らも戦いに加わろうとする気概を見せていた。


「亮さん、俺たちも手伝います!」


その言葉に亮は驚きつつも、内心で温かいものが込み上げてきた。自分がこの村で学んだこと、そして村人たちと築いた絆が、彼らを勇気づけたのだ。


「分かった…けど無理はするなよ!」


亮は一瞬、自分の体力を回復するために「パラレルワールド」で時間をずらしながらも、村人たちと連携して魔物に攻撃を仕掛けていく。村人たちの一撃一撃は小さいが、それでも確実に魔物を追い詰めていった。彼らの存在が亮の背中を押し、彼自身もさらに力を振り絞ることができた。


そしてついに、亮が渾身の一撃を放つと、魔物は苦しげに咆哮をあげ、崩れ落ちた。村人たちは息を切らしながらも、勝利の瞬間を喜び合った。亮もその中心で、心の中で何かが変わったことを感じ取っていた。力だけではない、仲間と共に戦うことの意味を、初めて理解したのだ。


村に戻ると、村人たちが笑顔で出迎え、感謝の言葉を亮に伝えた。彼はその言葉に頷きながらも、心の奥で静かに決意を固めた。この異世界で、自分の力と役割を見出し、さらなる使命感を育んでいくために――。


「俺にはまだやれることがある。村を守るだけじゃない、この世界全体を…」


亮は、少しずつだが確かにこの世界での自分の道を歩み始めていた。

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