第25話
真依に聞くと衝撃を受けたように口をパクパクとさせた。
「……き、……きいろくない!」
「は?」
真依の言葉に戸惑う俺に、周りがドッと笑う。
「あはは! 写真とは少し違って来るからねー。
けど、お兄ちゃん見たいな毛並みの良いライオンも世界中にいるんだよ」
「そうだぜ。ここのライオンさんは
「うぅん……」
凜人と道弘の言葉に相づちを打った真依。
けれど納得いかないのか、うーんと悩ましげに唸った。
「お兄ちゃん、髪斑にすれば?」
「毛先を黒くしてよー」
「……考えとく」
「「ブッハハハハッ!!」」
──ったく。お前等は調子良いな。
にしても、どうするかな。これは黒く染めた方が良いのか?
色落ちして金髪じゃなくなってるから別にしても言いが……。
周りが揶揄ってくるのはムカつくんだよな。
「真依、今でも十分似てるだろ?」
高い所で寝転びつつもこっちを見ているライオンと俺を見比べられるように真依の前に立つと、俺とライオンを見て真依は笑顔を取り戻した。
「にてるー!」
「だろ」
すると、こっちを見ていたライオンも頷くように「ガヴゥゥ」と鳴いて、最後に俺と目を合わせてから前足に顔を沈めた。
ハッとして振り向くと、真依と瑠輝が口を開けて固まっていた。
驚くよな。
突然鳴いたんもんな。
それも、返事をするように短く。
「性格も似てるよな」
「のんびりしてるし、面倒み良いけど、基本寝るって言う」
「そんで起こると暴れるんだよな」
「暴れてねぇ」
俺は凜人と道弘に素っ気なく答えるとライオンを見つめた。
メスライオンは近くで寝てるのか。
ふわぁぁ。やべぇ、ライオン見てると眠くなるな。
しばらく観察するように真依はじっと見つめていて、紀子さんとトラおじさんが呼ぶ声が聞こえるまで集団で屯しているようになっていた。
それから長い距離を歩いて、キリンやシマウマの所で混雑している広場へとやって来くると、キリンの近くで人参を与えている家族がいるように、少し離れた所で野菜スティックになっているエサが販売されていた。
最初は怯えていた真依と瑠輝は、俺たちがカメラを構えながら餌やりをしている間に慣れてきたようでビクビクしながらもササッと手を伸ばして人参や小松菜(?)を与えていた。
動物園の折り返しまで来ると、お腹を空かせていることに限界が来た。
ちょうど時刻は正午を回っていて、予め地図を見ながら予定していた通り、近くのガーデンニングがある飲食可能の広場で食べることにした。
持って来ているお弁当は、嶺川家とトラさんの分で作っているが、凜人と道弘、それに勝手に着いて来た紫苑たちの分はもちろんなく。
だから一言、凜人と紫苑に居場所だけ伝えてそれぞれ昼食タイムを摂ることになった。
移動する時に、隣りにいた真依と瑠輝が俺の服を引っ張って声を上げる。
「お兄ちゃん。まい、トイレー!」
「僕もぉ!!」
そう言うと、入場ゲートでもあった小屋を指して、我慢出来ないことを訴えているようにその場で足踏みをしだした。
その様子に紀子さんが真依を、俺は瑠輝を連れて、お手伝いになっている小屋へと入って行く。
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