第6話
初めて手に持ったバッテリーを十分に見たのか、俺の手に戻して来る真依。
渡された物をもとに戻すと次を取り出た。
「これはレンズ」
「レンズ!」
「ここの部分な。覗き込んで、撮りたいものの標準を合わせるんだ」
まぁ言っても分からないだろうけど。
そんなこと考えていると、真依は顎に手を添えて「ほうほう」と呟いていた。
探偵みたいに頷く姿は微笑ましい。
ほうほうって、本当に分かってるのか?
それからクリーナーや説明書を取り出しては戻していく。
しばらくして一通り見終わった頃、俺は部品が揃っていることに関心を抱いていた。
親父のヤツ、結構ガチでやってたんだな。驚きだわ。
カバーをして留め具を合わせると鞄を戻す。その時、小さい鞄もあったことに気づいた。
「……マジかよ」
「それなぁに?」
「なんだろうなぁー」
いや、この重みからしてカメラ入ってるよな?
どんだけ揃えてんだよ。
だんだん呆れが生じてくると、中を開いてカメラを取り出す。
「カメラ!」
「……これは、ビデオカメラか」
そういや運動会の時にお母さんが良く回してたな。あとお遊戯会の時とか。
「懐かしいな……」
これは俺も手に取って遊んでた気がするな。
何撮ったんだっけ?
「今度、凜人にも見せるか」
凜人は小学校の頃からの幼馴染みで、良く遊んでいたから映り込んでるかもしれない。
ボソリと凜人の名前を囁くと、真依が反応して姿勢を正した。続けてガバッと振り向く。
「──リンちゃん!?」
「あ、あぁ。凜人が撮れてるかもしれないなって……」
「……!! まいもとるー!」
「えー、あー……。まぁ、大丈夫か」
俺が触ってたくらいだしな。
いや、にしたって、凜人の名前に反応するって……。
どうしてあんな奴に惹かれるんだか……。
「これも充電しないとな」
「たのしみ!」
凜人は確かに頭も良くて、女子に対しての態度も良いが、その代わりに遊びが酷いもので、アイツの女関係には関わりたくはない。
とは言え経験値が高い分、距離感の掴みは感心するほどだ。
アイツの性格は今は良いか。
親父に報告することが増えたな。
「真依。他に何か入ってるか?」
「んー。はいってる!」
「じゃぁ、それお兄ちゃんに頂戴」
「わかったぁ!」
真依は立ち上がって一歩離れた所にしゃがみ込むと、1本のコードを掴んで立ち上がった。
同時に掴んでいたコードがスルスルスルと出てきて先端が現れる。
「はい!」
「ありがとな」
──これは一体、何のコードだ?
コンセントに差し込む部分と、丸い形の差込口になっているコードはそれなりの太さがあって、何かに差し込む構造になっているのは分かった。
「真依、他にはあるか?」
「あのね、コレとコレ!」
そう言って今度は二つの黒い塊を取り出してくる真依。
ありがとうと言ってそれをもらうと、一つの方が充電器の台になってて、差込口に合う穴があった。
もう一つの方はバッテリーだ。しかも、さっき見た一眼レフカメラのバッテリーと同じものだった。
多分だが、これだけあとから仕舞おうとしたのだろう。
「これにコードを挿してカメラを……」
持っていたカメラを充電器の台に合わせるとカチッと音を立ててハマった。
「──お」
完全にこれだな。よし、これで充電出来る。
「真依、見つかったぞ」
「ホント!?」
「あぁ、真依のおかげだ。ありがとうな」
手を伸べると抱きついて来た真依を片腕で抱きしめて、前髪に触れるだけのキスをする。
「えへへ!」
照れて笑う真依に充電器にハマったカメラを預けると、俺はビデオカメラとその充電器ぽい物を鞄から出した。
バッテリーを緑の方の鞄に仕舞ってから取り出した物を戻して引き出しを箪笥にしまう。
「さて、凜人と道弘でも呼ぶか」
「おうちであそぶ!?」
「あぁ。あ、ついでに泊まらせるか?」
「うん! おとまりする!!」
興奮して跳ねる真依に俺は笑いながら部屋から出るよう促した。
それからリビングへ行くと、紀子さんは瑠輝を抱えながら椅子に座っていた。
真依と俺が戻って来ると、メモ紙に何か書いていた手を止めるて聞いてくる。
「おかえりなさい。充電器は見つかった?」
「見つかった」
「あのね。まいが見つけたんだよ!」
そう言って持っていたカメラを見せると、紀子さんは頭を撫でて真依を褒めた。
「あら、すごいわね。じゃぁ充電しておかないとね。」
「うん!」
「コンセントの指し方は分かる?」
「うん! 分かるよ」
真依はテレビの所へ行くとテレビ台についている差し込み口に挿していた。
「あぁー。それで突然なんだけどさ、凜人と道弘呼んでいい?
ついでに泊まらせてぇんだけど……」
「ふふ、急ねー。大丈夫よ。呼んであげて」
「ありがと」
「──その代わり、少し手伝ってもらってもいいかしら?
夕飯の買い出しに行かなきゃなの」
「あぁ手伝う。ちょっと待っててくれ着替えてくるから」
「ありがとう」
俺は一度部屋に戻ると、ジーパンと黒シャツに着替えてから携帯と財布を肩掛け鞄に突っ込んだ。
下に行く前に洗面台で少し髪を弄ったあと下へ向かう。
泣いた後の目は特に腫れてはなく、問題なさそうだった。
リビングに来ると紀子さんたちの姿がなかった。
取り敢えず、さっきまでいた寝室へと行ってみることにした。
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