悪役の下っ端が遺した言葉

@786110

悪役の下っ端が遺した言葉

 ……やられた。それも、呆気なく。

 休日で人の多い遊園地に赴き、誰彼かまわず生命力を奪えという幹部からの命令があった。それに従って実行に移そうとしたのだが、オレが何かをする前に仲間たちが派手に暴れ回ったせいで、赤青黄黒緑の五色戦隊がすぐに駆けつけてしまった。

 オレは何もしていないのに、悪の組織の一員であるというだけで赤戦士から飛び蹴りを食らい、いまは地面にぶっ倒れている。

 意識はあるし、まったく力を使っていなかったから、戦うことはできる。が、オレみたいな下っ端は戦隊の眼中にはないらしい。すでに幹部にまで辿り着いている。なんなら、幹部が第二形態になったところだ。

 あ、幹部やられた。ぜんぜん苦戦を強いてないじゃん。「なにっ、まだ変身するのか!?」みたいな反応したはずの戦隊側の必殺技も反則級だし。なんだよ、一撃必殺って。だったら最初から使えよ。そしたらオレら下っ端も痛い目を見なくて済んだのに。

 だが、オレも悪役は悪役。幹部がやられようと、底意地だけはある。

 立ち上がり、勝利の余韻に浸っていそうな戦隊に向けて言い放つ。

「まだ終わってないぞ。最弱の底力ってやつを見せてやr」

 言い終わる前に、五人からの飛び蹴りで気絶した。

 容赦なさすぎるだろ……。

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