枯れゆく悦
鷹野ツミ
第1話
「
シャンプーの香りを纏う女は、際どい下着姿を晒している。すっと息吹の横に腰掛けて、わざとらしく顔を覗き込んできた。女の長い髪がふわりと揺れる。
広すぎるベッドの端が二人分の重みで沈み、適当に選曲したBGMが夜の雰囲気を醸し出していた。
緊張が伝わるのは良くない。息吹は学ランのボタンをそわそわと弄りつつ、「初めてです」とぽそりと答えた。
「うふふ。じゃあ、おねえさんが楽しませてあげる」
悪戯っぽく笑う女の手が、息吹の頬をなぞって下へ下へと向かって行く。
「ひっ……」
情けない声と共に背筋が心地好く痺れた。ぐっと硬くなっている正直な自分に羞恥を覚える。
「あっ、あの、俺っ、風呂」
「いーよそんなの」
「うっ……」
耳元に掛かる生温い息に、息吹の脳内はどろどろとした熱で覆われていく。もうこのまま何も考えずに快楽へと向かえたらどんなに楽だろうか。ベルトを外され、下着を脱がされ、顕になった息吹の一部は健男児そのものだ。
「ふふ。可愛い」
からかってくる女に対し、息吹も余裕の表情を見せたいのに何も言い返せない。金髪も、ピアスも、香水も、全部見掛け倒しだ。もう高二だというのに童貞臭すぎる。涙が出そうになってきた。
──なあ、息吹、おれら親友だろ?
ふと脳内で再生された声に、殴られ過ぎて別人のようになった友人の顔が浮かんでくる。
ああ、そうだ。
こうなったのは全部、
枯れゆく悦 鷹野ツミ @_14666
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。枯れゆく悦の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます