完璧なセキュリティ
デントはセキュリティ業界で知られる天才だった。
その腕を買われ、とある大富豪から屋敷と財産の防衛を依頼された。
それを受けデントは世界中から物理セキュリティ、サイバーセキュリティ、心理学などあらゆる専門家たちを集め、大規模な会議を開催した。
しかし、初日から議論は迷走していた。
「まず、物理的な侵入を防ぐべきです。高電圧フェンスと赤外線センサーそして警備体制の整頓、これがあってこその防犯でしょう!」
そう、意気込んで答えた物理セキュリティの専門家だったがすぐに反論が飛んできた。
「それでは短絡的すぎますよ。フェンスやセンサーは壊される可能性がある。高度なサイバー攻撃が主流の現在では電子によるシステムは無効化されやすい」
「警備体制もなにもこの屋敷が何平方あると思っているんですか、待機所と人経費だけで無限の資産が溶けますよ」
それを聞いた他の専門家が新たに苦言を呈する。
「そんな話をすればすべての対策は意味をなさないだろ!」
あちこちに飛び散る会議にデントはため息をついた。
そして、全体に伝わるよう声を張り上げて言った。
「みんな冷静になってくれ。守る方法ばかり見ていてもセキュリティは完成しない。逆に攻撃者が狙いやすい脆弱な部分を洗い出しましょう。そしてそこを強化するのです」
会議室は静まり返り全員がその言葉に納得した。
そして、1人の専門家が手を挙げた。
「脆弱性という話をするなら、現段階でこの屋敷の物理的な警備はかなり手薄です。金庫周辺は警備員と監視カメラで管理されていますが他所で事件が起こるとそこに警備員が駆り出され金庫周辺はかなり手薄になります」
「なるほど、他に意見はないか?」
すると、専門家たちは次々に意見を出し始めた。
サイバーセキュリティの観点から銀行口座の脆弱性、心理的な罠を突破されるリスク、非常用脱出口の管理ミスなど、あらゆる可能性が議論された。
「よし、みんなありがとう。今日みんなが出してくれた意見をそれぞれまとめて俺のメールに送ってくれ。明日はそれをもとに具体的なセキュリティを考えていく。それじゃ解散!」
デントのその一言でみんなは解散していった。
その夜、大富豪の屋敷にはスリが入り、金庫の中は抜き取られさらには銀行口座も空っぽになっていた。
次の日の会議でデントは机を強くたたきつけた。
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