写真家の一枚

ヘンドは有名なフォトグラファーだ。

最近の流行に乗り今日はパリでストリートスナップを撮影しようとしていた。

ヘンドは街を歩きかの有名なエッフェル塔の前でとある女性に声をかけた。

「すみません、いまストリートスナップをしていて、モデルになっていただいてもよろしいですか?」

「もちろんいいですよ」

女性は二つ返事でヘンドの頼みを承諾しヘンドがカメラを向けている方へ歩くと、近くの街灯にもたれてポージングを始めた。

しかしヘンドは最初こそ女性に向かってカメラを向けていたが、首を一度かしげるとすぐにカメラを別の方向へと移動させた。

「すみません、もう少し右に寄ってください」

「このあたりですか?」

ヘンドのカメラが捉える方向を見ながら女性は立ち位置を調整しまやもやポーズをとる。

「ああ、いいですね」

ヘンドはカメラを除きながら答えた。

しかし、ヘンドはまたも首を振ると女性とは全く別の方向へレンズを向けて写真を撮り始めた。

「あの?」

「…………」

女性は困惑しながらヘンドに尋ねるたが今度はヘンドからの返答はなかった。

呆れながらも女性はまたもヘンドのカメラを見て映している方向を予測しながら移動しポーズを取り始める。

そんなやり取りが数回続いて、今度はヘンドが満足気にカメラをあげて女性に言った。

「これで終了です。ありがとうございます!」

「カメラの方向を変えるなら何か指示してくださいよ」

女性はヘンドに向かって悪態をついた。

それに対しヘンドは真剣な眼差しで返答する。

「最高の背景を見つけると先に体が動いてしまうんですよ。それに撮った写真もいい出来でしょう?」

「まあ、たしかにいい写真ですね」

撮れた写真を女性に見せると女性は納得して帰っていった。

女性が完全にいなくなったのを確認するとヘンドは後ろを振り向き物陰に向かって手招きをした。

すると、物陰からスマホを持った男が登場し、ヘンドの前でスマホを操るととある画面を見せた。

「うまく撮れたか?」

「はい、もちろんです」

画面を見ると、動画撮影でヘンドがカメラの方向を変えるたびにその方向へ写りに行く女性が撮影されていた。

「いいぞ、よくやった。タイトルは勘違いした女だな」

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