観光案内バス

マーカスは旅行先で観光案内のバスに乗ることにした。

バスターミナルで待っていると二台のバスが到着しどちらも観光案内バスと表示されていた。

不思議に思ったマーカスは二台目のバスの前に並ぶ男に話しかけた。

「すみません、二台目のバスは周る観光地が違うのでしょうか」

すると、男は不敵な笑みを浮かべた。

「いいや、こっちのバスは現地住民のための観光案内バスだよ」

「現地住民のため、おかしな観光案内もあるものですね、どう違うんですか?」

「……現地の人間ならより楽しめるってとこだな」

「なるほど、ありがとうございます」

男の話を聞きマーカスは迷った果てに現地住民のためのバスへと乗り込んだ。

現地住民が楽しめるほどの観光案内ならよりこの土地について詳しくなれると思ったからだった。

『この度はわたくしが当バスの添乗員を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いします。それではバスが発車します』

添乗員のその声と共に一台目バスを追うようにバスが発車した。

なんとなしにバスに揺られていると一台目のバスが森の方へと入っていった。

しかし、マーカスの乗るバスはそのバスを追わずに迂回し小さな丘となっている駐車場へ向かうと停車してしまった。

そして添乗員が喋りだす。

『左手をご覧ください』

添乗員の言う通り左の方を見る。

すると、一台目のバスから降りた人々が岩を見ていた。

その岩はこの観光地で有名なパワーストーンだった。

観光客たちはパワーストーンの写真を撮ったりパワーストーンの前で手を合わせお辞儀をしたりお金を投げたりしていた。

『あちらが、パワーストーンに集まる観光客になります。ただの石ころにしめ縄を巻いて看板を立てただけで年間20万ドル稼ぐ天才たちが、ここにはいるんですよ』

添乗員がそう言うとバスの中では大爆笑が起こった。

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