目と耳が使えない
「なあ、目見えなくてと耳が聞こえない状態でお腹が空いていたらどうやって食べ物をもらおうとする?」
ニコルがハンクに向かって嫌味な笑みを浮かべながら尋ねた。
それに対しハンクは顔に疑問を浮かべながら聞き返した。
「目と耳がなんだって?」
「目と耳が使えない状態で食べ物をもらうんだよ。やってみてくれ」
そう言うとニコルはハンクの耳を塞いで、ハンクに目を閉じるよう伝えた。
「えーと……こうか?」
ハンクは手で目の前に円を描くと、そこでナイフとフォークを操る真似をした。
「いや……違うよ」
ニコルは口元を抑えて答えた。
「それなら、こうか?」
言いながらハンクはお腹を押さえて今度は口に何かを入れるような仕草をした。
それを見てニコルはまたも笑みを顔に浮かべながらも、しかし今度は
「ああ、悪くないね。じゃあ今度は飲み物をもらってみてくれ」
と言った。
言われるがままにハンクはそれに従い、今度は手に円柱を持つような真似をして、それを思い切り口元へ運び、首を横に振りながらその円柱を逆さまにした。
「今度はどうだ、かなり良かったんじゃないか?」
自信満々に言うハンクに耳を塞いでいた手を解いたニコルはもう笑いを隠さずに言った。
「ほんとうに、そうやって飲み物をもらおうとするのか?」
「じゃあ、どうやってやるんだよ?」
怒りを交えて言うハンクに対しニコルは手のひらを下にしてなだめるようにして言った。
「目と耳が聞こえない状態だろ?」
そう言いながらニコルは目を閉じ耳を自分の手で塞いだ。
「おい、それじゃあ手が使えないだろ?」
心配そうに言うハンクにまたも破顔しながらニコルは言う。
「何か、食べ物と飲み物をくれませんか?」
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