鬼嫁を持つ教師

とある中学校の教師をしているレーンは恐ろしい鬼嫁を持つことで有名だった。

勤務中でもレーンの携帯電話は鳴り響き、鬼嫁の声は学校中に響き渡っていた。

周囲の人間がそんな鬼嫁を怖がる中、しかしレーンだけが毎日嫌な顔もせず仕事をしていた。

休み時間、生徒と談話しているとまたもやレーンの携帯電話は着信を受ける。

見てみると案の定レーンの妻からだった。

『はい、もしもし』

『あなたね、今日も朝の洗濯物干さずに家を出たでしょ!』

スピーカーでもないのにレーンの妻の声は聞こえてくる。

その怒声はまさに憤怒を感じさせた。

『ごめんよ、次からは気を付ける』

『それを言うのも何回目よ! 口だけじゃなくて行動で示してちょうだい』

『うん、そうするよ』

『あと、また親御さんからうちにクレームの連絡が来てたわよ。授業の進度が遅すぎるって』

『……そうなのかい。それも改善しないとね』

『まったく、教育のプロなんだからそれくらいちゃんとしてよね!』

そう言うと、レーンの妻は電話を乱暴に切ってしまった。

そんな様子を見ていた生徒がレーンに気の毒そうに言った。

「レーン先生、相変わらず怖い奥さんですね」

生徒の様子とは裏腹にレーンはケロッとして答えた。

「いいや、良いところも沢山ある。最高の嫁だよ」

「どうして、そんなに楽しそうなんですか?」

「楽しそうかい?」

「はい、ぜんぜん怖くなさそうに見えます」

不思議そうに尋ねる生徒に向かってレーンは高らかに笑って見せた。

「そりゃあ、君たちの母親の方がよっぽど怪物だからさ!」

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