知恵比べ


旅行中のワットはたまたま通りがかった居酒屋である一角が賑わっているのを見かけた。

不思議に思ったワットは隣に座る青年に尋ねた。

「あれは、何をしているのですか?」

「知らないのか? ライアンと知恵比べをしているのさ?」

青年が言うには、ライアンは村で一番賢いと有名で、世界各国から知恵比べをしようとライアンに挑む者も少なくはないらしい。

そして、青年はいつもこの居酒屋でお金を賭けて知恵比べを開催しているようだ。

「すみません、私も知恵比べをしてみたいのですが」

ワットはライアンの方へ近づき言った。

するとライアンは自信満々に答えた。

「いいよ、一回金貨1枚だ」

「わかりました」

ワットは金貨を取り出して机においた。

それを確認したライアンはワットを指さして言い放つ。

「地球上で唯一、夜でも燃え続ける太陽以外の『自然の火』とは何だ?」

「ええと……」

「時間切れだ。答えは火山だよ」

「なんと、全然わからなかった」

ライアンの賢さに皆が感心する声が上がった。

その声に酔いしれながらライアンは机に置かれた金貨を懐に入れた。

「おじさん、俺をしらない旅行者だろ? 本来ならもう一問あんたが出してゲームが成立するがここでやめてもいいぞ?」

「私が旅行者だと、そんなことまでわかるのですね」

「当然だ」

「では情けに甘えて、一つ提案をさせてください」

そう言うとワットは今度は金貨10枚を取り出して机に置いた。

その様子に驚きつつも平然を保ちながらライアンは尋ねる。

「何のつもりだ?」

「この金貨を担保にするので、あなたの質問に答えられれば金貨50枚ください」

ワットの提案に少し迷ったライアンだったが、すぐに承諾し袋に入った金貨の数を数え始めた。

「いいぜ、万に一つも負ける可能性はないが、負ければ金貨50枚支払ってやる」

「ありがとうございます。では……」

そういうとワットは人差し指で最速するように机を叩き始めた。

「ここに50枚金貨を置けってことか?」

「……はい」

言われるがままに、ライアンは金貨50枚を机に置いた。

すると、ワットはすぐに金貨を取り懐に入れた。

「何をしてるんだ!」

ライアンは激怒して声を荒げるが、対してワットはニヤりと唇をあげた。

「あなたが、ここに50枚金貨を置けばいいのか、と質問したので私は、はい、と答えたのですよ?」

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