ショートショート集

ぶらんこス

勇者一行

魔王を倒す旅に出た勇者は困っていた。毎日のように部屋で悩み声をあげる勇者を心配した戦士は事情を聴きに勇者を訪ねた。

「何をそんなに悩んでいるんだ?」

戦士の顔を見た勇者はさらに顔を険しくして答えた。

「うちのパーティはどう考えても4人が限界だよな?」

「食料や資金を考えればそうだが、それがどうした?」

「4人目の仲間を引き入れたいんだがそれ以上に優秀な仲間と出会ってしまったらと思うとなかなかパーティに誘えないんだ」

勇者の心境を察した戦士は、お前は優しすぎるんだと続けた。

「なーに簡単な話だ、とりあえずパーティの数合わせにしてさらに優秀な奴がいれば足切りすればいいんだよ」

戦士の話を聞いた勇者は未だ浮かない顔で戦士を見た。

「でも可哀そうじゃないか? 本人の意思もあるだろう?」

「ばかやろう!」

戦士は声を荒げていった。

「世界は厳しいんだ。強いやつが残るのは当然だしパーティに入る時点でみんなそれくらい覚悟してるさ!」

それを聞いた勇者の表情は一転し、見る見るうちに活気に満ちていった。

「それを聞けて良かったよ! ありがとう、これでようやく解決した!」

「まかせろ」

戦士は胸を叩いて自慢げだ。

「それじゃあ次の街まではよろしくな!」

勇者は戦士の肩を叩いた。

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