私の、本音。

「………は?」


穴を見たカシアは、硬直した。混乱した。

そして、倒れた。


痛い。痛い。痛い。痛い。


感じる。体から熱が抜けていく。血が体外に出て行く。でも。

あぁ。これで。やっと。死ねる…








「やぁ。2度目の挨拶だ。」


何故か、目を覚ました。傷は無い。でも、痛い。瞬時に起き上がり、痛みで倒れ込む。


「おまっ…えっ……!私に…なにを…!」


また、嘲笑うかのようにXが語りかける。


「『禁忌魔法』の禁術さ。お前も沢山使っただろう?」


「…ッ」


『禁術・死者蘇生』

本来ありえない事象。完全に死亡した者も、死体さえあれば蘇る。


「それで……私を、起こした、のか。」


痛みに慣れてきた。普通に立ち上がれるくらいには。


「そうだ。ただなぁ。」


Xがわざとらしく、腕でも組んでいそうな感じで言う。


「こんな事、魔法さえ無ければ無かったんだよなぁ。」


「…はぁ、?」


カシアは困惑した。急にそんな事を言い出して、何が言いたいのか分からなかった。


Xは続ける。


「だってさぁ。魔法が使えれば、『禁忌魔法』なんて物は生まれなかったんだぜ?」

「しかも、その『魔法』なんて物は無くても人間って生きられるんじゃね?」


なにを、言っているんだ?

そんなの、まるで…


「それならさぁ。この世界、そもそもが間違ってるんじゃなぁい?」



カシアはこの言葉が何故か、何故か、よく理解できた気がする。


『魔法』

皆が使える。

私は?

なんで使えないの?

私だけ、仲間はずれ?


『魔法』

みんなのゆめ。

みんながあこがれる。

わたしのゆめは?

なんでわたしはあこがれることもできないの?


なんでわたしだけぜんぶすてられるの?


『魔法』

わたしにとっては




「「いらないモノ」」


言葉が重なる。でも、さっきみたいな嫌悪感はない。Xはここぞとばかりに、カシアに問う。


「そんなものが溢れる世界って、どーぉ?」


Xが囁く。

いないのに、耳元で囁いているかのよう。



カシアは、その言葉を気がつけば言っていた。

本当は、そんな事ない。みんな好き。

街の人も。ギルドの人も。家にいる人も…

みんな、みんな………



だれだっけ?




「…みんな……ぜんぶ…キライ。」




時間が動き出す。さっき展開された魔法は、もう無い。木々がざわめいている。久しぶりに吸う気がする空気。

嗚呼、なんて。なんて。


「…クソまずい!」


辺りを『空間魔法』で消し飛ばす。


視界が開け空を見上げると、なんと清々しい気分になろうか。空気に溶けた魔力が無い!ただ純粋な空気!この空気は、とてもおいしい!


「それじゃぁ。」


Xが問う。


「カシア。こんな世界、どう?」


カシアは剣に映ったような顔で。

しかし目には闇という光を宿して。


「この世界は、私を望まない!」

「私は愛されなかった!なら私もこの世界を絶対に愛さない!」


と、高らかに言葉を掲げる。


いつの間にか、姿も昔の姿に戻っている。

遠い遠い昔の、忌々しい姿。

だけど今は、この容姿がちょうどいい。


「さぁカシア。私とお前の世渡りの時間だ。」


Xが意気揚々と。


カシアは明るく、しかしどこまでも暗く。


私がこの世界に絶望と混沌を撒き散らす。






誰の味方でも無いカシアとXによる、

どこまでも自由な世渡りが始まる。


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