奇襲

「…ユア!!」


カシアが駆け寄るが、ユアのコアは破壊され、胸には空洞が空いていた。


「一体どこから…」


ユイカが注意深く辺りを探るが、それらしき物は見つからない。


「『リペアリング』!」


カシアは直ぐにユアに『リペアリング』を展開し、ユアを直した。


「ごめんなさい…私の不注意だった。」


カシアが険しい顔でユアに謝る。

ユアは少し怯えている。


(でもなんで急に…?『サーチ』には反応がなかったぞ…?)


とカシアが思っているうちに、目の前にユアにそっくりな1人の少女が現れた。


「……驚いた。本当にいるなんて。しかも…」


少女はユアに目を向けた後、興味深そうにカシアに目を向けた。


「本当にすぐに直った…どう言う事なの?」


小声であまりカシアには聞こえなかったが、この少女は敵であると認識できた。


「お前、誰だ?」


カシアは言ってみる。


「私?…私はユリ。それ以上喋る事は無い。」


そう言うと、ユリは構えた。

はやり話し合いで解決は無理そうだ。


「ユア。あれが例の『成功作』ってやつ?」


ユアが若干怯えながら


「う…うん。そうだと思う。」


と答えた。それにユリは、


「…へぇ。そんな事まで教えるなんて…相当、その人達のことを信用しているようね?『失敗作』さん?」


ユリはユアを見下しながら言う。

その言葉にユイカは


「『成功作』と『失敗作』、何が違うんでしょうか?」


とユリを睨みつけながら言う。ユリは


「はぁ…さっき言ったでしょう。もう喋る事はない、と。」


と言い、ユイカとの距離を一瞬で詰めた。

もう少しでユリの腕がユイカを貫く所で、


「『クロノシリア』」


と、カシアの助けが入る。

『クロノシリア』を解除し、距離をとる。


「すみません、油断しました。」


カシアがユイカにデコピンして、


「前にも言ったでしょ。油断は禁物。」


と言い、『グラディオス』を展開した。


「あなた、面白い力持ってるのね。なんでそんなのに構ってるのか気になっちゃう。」


ユリが煽るが、カシアは動じずに


「さっきから『成功作』だの『失敗作』だの言ってるけど、結局強い方が『成功作』なんじゃない?」


と笑顔で言い返した。


「まぁ…『失敗作』に絡んでる奴らごときには負ける気はしないけど」


その言葉を言い終わった瞬間、

2人の刀と腕は交わる。


「手で刀を防ぐなんて、あんた随分余裕なんじゃない?」


カシアは力を込めて言う。


「貴方たちの為に獲物を出すのももったいないだけ。」


ユリは軽く弾き、少し距離をとる。


「…その手を見ても?」


ユリは自分の手に違和感を感じ、見る。すると、傷がついていることに気がつく。


「……驚いた。私に傷をつけるなんて。」


本当に驚いたようで、さっきまで変わらなかった表情が少し崩れた。


「…しょうがない、か。」


そう言うとユリは手を前に出し、


「…燃やしつくせ。『紅蓮』」


と詠唱する。そう言うとユリはどこから出したのかユリの身長以上の大剣を担いだ。


「これを出すのは久しぶり…だから」


ユリはカシアの目を見て笑い、


「精々、楽しませてね。剣使いさん。」


ユリは笑顔でいるが、その尋常ではない殺気にユイカは怖気付いていた。

そこにカシアの声が響く。


「ユイカ!ユアを連れて家に戻って!」


その言葉にユイカは状況を察し、自分に出来る事をすることを決意した。


「カシアさん!絶対、戻ってきてください!」


カシアはニコッと笑い、ユリの方を向いた。


「ユア。私達がいても邪魔。家に戻ろう。」


ユイカはユアの手を握り、ワープを展開しようとした。


「逃がすと思う?」


いつの間にかユリがユイカの後ろまで迫って来ていた。


「あ…」


ユイカは本当に死を覚悟した。大剣が目前まで来ていた。が、そこにカシアが飛び込んできて


「君の相手は私でしょ!」


間一髪、カシアがユリの大剣を弾き、ユリを蹴り飛ばす。木々をなぎ倒しながら飛んで行く。


「ユイカ!早く!」


ユイカはすぐにワープし、家に戻った。



「…逃がしたか。」


ユリは蹴り飛ばされ岩壁に叩きつけられたが、

すぐに体制を立て直した。


「ふっふー。残念でした。」


そこにカシアが来て、笑いながら言った。


「確かに逃がしはしたけど…貴方1人になにができるって言うの?」


ユリは大剣を構え直し、戦闘態勢に入る。


「貴方なら、私だけで十分だよ。」


カシアもそれに合わせて構える。



そして、2人の剣が交わる。

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