会敵…?

「確かボスの部屋は…こっちだね」


カシアは『サーチ』を展開し、ボスの部屋らしき所へ入る。


「本当に、1人も居ませんね。」


洞窟内を歩いていてもさっきまで湧いて出てきた賊が今や1人も居ない。


「しょうがないよ。あんなに派手に呼んじゃったんだし。今思うとあの時の私はどうかしてたのかもね。」


「は、ははは…」


割と本気で怖いのでユイカとしてはやめて頂きたい所存だった。


「…お、あったあった。」


カシアはおそらく賊のボスの所有物であろう物を手に取った。


「カシアさん、それは何ですか?」


よく分からなかったので聞いてみる。


「これはねぇ…鍵と地図。多分見取り図と金庫の鍵かな。あとはー、短剣のあまり分と、なんか変なやつ。」


鍵は恐らく金庫とかを開けるやつであろう。

地図も他の賊グループの場所や、資金を置いてある所が書いてある。短剣も2本ほど入っていた。あと残っていたのは、ボタンだった。結構厳重に固められていた。


「ねぇユイカ。これ、押してみない?」


期待を込めた眼差しでユイカを見つめる。

その目はとてもきらきらしている。


「私は押さない方がいいと思いますけど…カシアさんが押したいなら、押せばいいんじゃないですか?」


ユイカは少し距離をとった。


「ふっふっふ…これを見て押さない方がおかしいでしょう。そーれ、ポチッとな」



…………




何も起こらないように思えた。


「何も、起こりませんね。」


「そうだね…なんで固められてたんだろ…」


2人見つめ合っていると、


「…【起動】【プログラムを実行】」


「…排除を開始します。」


と聞こえた。


「な、なんの音でしょうか。」


ユイカが部屋を見渡していた。


「ユイカ!」


カシアがユイカを弾き飛ばす。

瞬間、ユイカの頭があった所に、剣が通った。


「…なんだ…?あれ…」


姿形は人間の少女。服は何故かメイド服を着ている。良くも悪くも機械、といった感じの容姿だ。肌はとても白く、目も青い。

だが、腕には剣が生えている。だとすれば、恐らくさっきの機械音もあれから発されたとみて間違い無いであろう。



「回避を確認。『モード・ガン』」


そう聞こえると、いつの間にか少女の腕は剣では無くマシンガンの様なものがついていた。


「『クロノシリア』!」


ギリギリ詠唱が間に合い、打たれそうになっているユイカを抱え、距離をとった。

『クロノシリア』で時間を止められるのは精々

5秒くらいだ。実験をするには少しリスキーだが、やるしかない。


「『グラディオス』!」


剣を飛ばしたが、案の定弾かれた。

機械とはいえ、機械を動かしている原動力は生物が得るエネルギーと似ている為、生物と認識されているのだろう。


「チッ…やっぱだめか…!」


カシアは『クロノシリア』を解除する。

時が動き出し、ユイカがいた所には無数の弾丸が打ち込まれた。


「カシアさん、ありがとうございます。」


「お礼はいいから、あれに集中して!」


そう言った瞬間、また弾丸が飛んできた。


「「『身体強化』!」」


2人は限界まで体のスペックを引き上げ、弾を交わしながら作戦を練る。


「ユイカ!隙を見て魔法を打ち込んで!」


「分かりました!」


2人で高速に動きながら狙いを定める。

そして1歩、カシアが踏み込んだ。


カシアの刀は容易く受け止められた。だがこれでいい。カシアが作った隙にユイカが後ろに回り込み、魔法を射出する。


「『ファイアボール』!」


密度を限界まで圧縮し、スピードと威力を数段階上げた『ファイアボール』を機械の少女に打ち込んだ。が、背中側に直撃したはずだった機会の少女は無傷だった。


流石に煩わしかったのか、手の銃をぶっぱなして来たので、また2人で距離をとり、作戦を考え直す。


「どうしよう…硬すぎて刀が通らないや」


「魔法も通用しません…」


(でもさっき、一瞬だけ背中が光った気がするんだけど…)


と悩んでいると、


「『モード・ソード』」


手を剣に変えた機械少女がこちらに突っ込んできた。


「カシアさん!避けましょう!」


ユイカが焦って横に呼ぶが、カシアは動かなかった。機械少女はカシアに向かって猛スピードで突っ込んで行く。


「カシアさん!」


ユイカがこちらに手を伸ばす。

カシアが貫かれる直前まで少女は来ている。

しかしカシアはニヤリと笑い、


「いや、これでいいんだ!」

「『クロノシリア』!」


時間を止める。焦るユイカも突っ込んで来た少女も完全に停止した。

カシアは少し急ぎめで先程ユイカが魔法を打ち込んだ所を見る。




「…やっぱり。こう言うのは基本、相手から見えずらいところにあるよね。」


カシアが見つけたのはこの機械のコアだった。

ちょうど先程の魔法で背中だけが焼け、コアの部分が露呈していた。

あまり大きくないのでさっきは煙で見えなかったが、今は煙も晴れていてよく見える。


「『クロノシリア』解除」


『クロノシリア』を解除した瞬間、

『グラディオス』で生成された剣でコアをぶっ刺した。バチバチと電流が流れる。


「【コア損壊を確認】【動作を停止】」


そう聞こえた頃には、機械の少女は止まり、場は静かになった。

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