屑は踊る、いつまでも

@ebye

注意書き、またはプロローグ

 僕たちの学校から裏道から下校する時、へんぴな公園を見かけるかもしれない。そこは夏は木の葉たちが影をつくり、冬は木々が風を防ぐ。遊具はブランコ、シーソー、ジャングルジムといった定番の遊具を見つけることができるだろう。しかし、人々が印象に残るのは妙に高くにある時計に違いない。その時計はヒビが入っているせいで遠くから見ても正確な時刻はわからないだろう。となれば、人々は近くに歩いていくだろう。しかし、それは徒労に終わってしまう。何故なら、その時計の針は長針が六を、短針がニと三の間を指して止まっているからだ。それを見て人々は止まった憶測について、その時計の下で意見を出し合う。これは近所の悪ガキが石で当てたに違いない、いや、これは故意ではなく事故のはず云々。だが、結局のところ、その時計が動きだしたり、ましては摩訶不思議な力が発動して、逆回りで時間を遡行してその事件当時に振り返ることはない。過去あったことは消えることはないことは現代の物理学が証明しているはずだ。

 しかし、僕、いや僕たちはその時計が何故壊れているのかを知っているし、僕は現代の知識では説明つかないがあることを今現在進行形で体感していた。

「私が何故存在するしているなんていうことはさして重要ではないんだよ」

 霊、魂、心霊、精霊、英霊、幽霊、亡者、悪霊、死霊、怨霊、幽鬼、ゴースト等々と形容される存在はそう言った。

「さらに言えば、私が今後、成仏したり、君とまた結ばれるようなこともない」

 彼女はその一語一語を強調しながら、自分が本来持つべき出会ったはずの死者としての尊厳も踏み躙るように足元にある砂一つ一つを擦り合わせるように歩いた。だから、一言言い終わるたびにそのじゃり、じゃり、といった音が鳴り響く。

「けど、安心して」

 彼女はあらかじめあった台本に合わせて観客席に向き直る舞台役者のように僕の顔を見つめる。

「君を思う気持ちは変わらないから」

 そういって僕を見つめる彼女の目は生前の彼女と全く変わらない。瞼が目の半分を覆ってしまい、その裏の眼球は青黒く、メランコリックであたかも死んだような目をしている。

「改めましてよろしくね、ライラック君」

 小馬鹿にしたように、私のあだ名をいう彼女は生前の卯月蓮香そのものだった。

 僕は絶望してこう言った。

「犬はどこからやってきた、その前足はやっぱり敵以外の何ものではないではないか!」

「偽善の読者、──我が同類、──我が兄弟よ」

 白い悪魔は生前のように『荒地』の“死者の埋葬”に沿って返答をした。その直後、大きなカラスがやってきてこう言うかもしれない

──Nevermore、つつげて彼女はこういうのだろう。『ここをルッカリーと名付けよう』と。

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