第48話 ルーカスと旅の終わり
クラカの街を出発し、砂漠をキティタイガーの馬車が走る。
気温は高いはずだが耐熱の魔道具で汗一つかかない。
しばらく進むと、砂漠の中に大きな窪みがあった。
ドアのない入口からその中に入ると、所々砂が入り込んでいるがここは石造りの巨大な建物の中だった。
「くるぞ。ルチア、下がれ。」
「はい。サトウ様。」
「私もか弱いんで一緒に守ってもらってもいいですか。」
「あ、私も」
レダに続き、リナも下がった。
いや、リナは戦えよ。
洞窟の奥から現れたのは二足歩行の巨大なアリで、手に武器を持っている。
倒した冒険者から奪ったのだろう。
サトシのオーガが手に持つ片手剣で次々と無力化していく。
サトシ自身もアリの動きを封じてそのままテイムさせていった。
サトシは不意打ち食らわなければ無敵なんじゃないかと思う。
防御力とか関係なく、次々と敵をテイムさせていくのだから。
洞窟の中を階段を使って降りていく。
元の建物から考えると最上階から俺たちは入って一階に降りていっている感覚だ。
それにしても広い。
どんな建物がここにあったのだろうか。
途中から建物から土をくり抜いたような洞窟に続いている。
テイムしたアリの軍隊は20匹ほどになり、少しづつ出てくるアリを数でゴリ押しして倒していく。
洞窟が狭く、窮屈になるとアリはもう出てこなくなり、その先を抜けると広い石造りの部屋に出た。
部屋の隅を水路が流れている。
地下水だろうか。
「おっと、ここまで来る方は久しぶりですね。
私はルーカスと申します。
私を倒したらここの財宝を差し上げましょう。」
そう行ってでてきたのはコウモリの羽根に二本の角、真っ黒のスーツを着たデーモンだ。
「さあさあ、かかってらっしゃい。
待ってますから。」
「舐めやがって。聖剣召喚、光装束!」
オスカルの下から魔法陣が現れて聖剣が浮き出できた。
オスカルが聖剣を手にとってデーモンに斬り掛かる。
「あれ、斬ったはずなのに……」
オスカルの聖剣は確かにデーモンに届いたはずだが傷一つついていない。
何度も斬りかかるが同じことだった。
「これは聖剣ですか。
今代の勇者はこんなものですか。
ヌルいですねぇ。」
リナとラケーレに高濃度の魔力を流す。
ラケーレは瞬時にデーモンの懐に飛び込み、激しい連撃を放つが全てすり抜けているようだ。
リナは魔力を練り上げている。
「ラケーレどいて!」
ラケーレがスッと後ろに下がるとデーモンの周りに球状の結界が張られた。
「おっ」
次の瞬間球の中で爆発がいくつも起こった。
「あなた達2人はなかなかやりますねー。これまでここに来た人たちの中ではピカイチですよ。」
俺は周りに魔力を漂わせてデーモンの動き、魔力の流れを感じ取っていた。
攻撃がデーモンに当たる瞬間にデーモンは動いてはいなかった。斬撃、打撃、魔法そのものが当たった瞬間にどこかに消えている。
恐らく空間魔法だ。
「サトシ、俺に合わせろ。デーモンに触れずにギリギリのところでスキルを放て。」
「わかりました。」
俺は亜空間からヒヒイロカネの剣を出し、魔力を注ぎ込み、剣は紅く燃えるように眩しく光った。
「これほどの魔力……たまりませんねぇ……」
俺はサトシのスピードに合わせて、スピードを加減して近づき、剣を上に振りかぶった。
全ての魔力を使うつもりでその剣を振り下ろす。
「美しい……」
デーモンのすぐ横でサトシがルーカスの肩に手を向けた。
「サトウ様のしもべとなれ。」
俺のヒヒイロカネの剣は下に振り下ろされて床の石板を砕き底が見えないほどの溝を作った。
ヒヒイロカネの剣はやはりデーモンには届かなかかったが…
「あぁ、サトウ様と言われるのですね。
その美しい魔力……是非、私を配下に……」
サトシのテイムは成功したようだが変なのが仲間になってしまった。
「サトウ様の斬撃、凄まじい威力でした。」
ルーカスはそう言うと地面に手をついた。
ゴゴゴッと地響きがすると地面がみるみる埋まって元通りになった。
「これで大丈夫な筈です。
私を必要な時はお呼びください。
いかなる場所でも必ず駆けつけます。」
そう言うと足元から地面に沈んでいくように消えていった。
「何だったんだ、あのデーモン……そういえば財宝って言ってたな。」
ラケーレが部屋の中をキョロキョロと見渡すと奥に箱が有るのを見つけた。
「おっ……あったあった。
サトウ様!開けていいか?」
「ああ。」
「なんだこれ?種?
よくわからないけどサトウ様に渡しておくよ。」
ラケーレから渡されたその種は少し大きく15cm程あったが魔力も特に感じなかったので亜空間に収納しておいた。
▽
クラカの街に戻り、領主に報告に行った。
領主より、褒美を貰えると言われたがあまり思い浮かばなかった。
「サトウ様!」
「うわっ」
突然何もない所からルーカスが現れた。
「サトウ様、驚かせて申し訳ありません。
先程、クラカの宝物庫に行きましたところ、聖剣の鞘がありました。
この鞘は剣を入れておくと聖なる闘気を纏う聖剣と同じ効果も持たせるものです。」
「そうか、それじゃ、それをもらうか。」
今後の魔物退治に役立ちそうだしな。
領主の使いに話して部屋で待つと真っ白で内側が光る鞘を持ってきた。
「これが聖剣の鞘です。
今後の魔王討伐にお役立てください。」
鞘を受け取ると俺の魔力を吸い、より眩しく輝くようになった。
とりあえずヒヒイロカネの剣を入れておくか。
亜空間からヒヒイロカネの剣を取り出す。
まだ前回の状態のままで赤くなっている。
少しづつ鞘に収めていくと鞘が形を変え、紅くなっていった。
「これが聖剣の鞘……凄まじいですな。
サトウ様、シャーム領主から勇者一向に招集がかかっております。」
「わかりました。」
次の日、クラカからシャームの街に馬車で行き、領主のところへと足を運んだ。
「勇者殿、またその一行の方々、これまでの数々の魔物討伐、ご苦労であった。
大陸内の主だった魔物は全て討伐された。」
領主取り巻きの人から歓声が上がった。
「これからはとうとう魔王がいる、魔大陸へと侵攻することとなる。それまでそれぞれ準備を整えよ。」
領主からお褒めの言葉を貰い、別棟へと向った。
「サトウ殿、勇者同行はこれで一区切りだ。
また招集されるかもしれねぇが、とりあえず世話になったな。」
「ああ、ラケーレ、元気でな。」
ラケーレはわずかな荷物をカバンに背負い、後ろを振り向かずにドアを手ていった。
「ちょっと!私まだ全然魔力もらってないんだけど!これじゃ、物足りないわ!契約継続よ!」
リナがドアからすごい勢いで部屋に入ってきた。
「ああ、それでいい。来たい時は来い。」
「もう……バカ……どっか行くときは連れていきなさいよ……」
リナは俺の胸で泣きながらキスをした。
「私はサトウ様の教会だからいつでもサトウ様に会えるもんねぇ。いいでしょー。」
ルチアはリナをからかいに部屋に入ってきた。
「もうっ、バカルチア!サトウ様にちゃんと勇者から守ってもらいなさいよね……」
「心配してくれてたんだ……ありがとうリナ……」
「当たり前じゃないの……」
「教会は魔力補充が必要だから定期的に教会に来てくれ、リナ。」
「うん、そうする……」
リナはそう言うと俺にキスをして涙を手で拭いながら部屋から出ていった。
「サトウ様…どっか行っちゃわないよね……?」
「これまで通りさ。」
「教会にいるけど私を頼ってね。」
ルチアは泣くのを隠しながらドアから出ていった。
「サトウ様、私、今日までのお仕えになります。最後はしっかり愛してくださいね……」
レダは話している途中から涙を流して言葉に詰まってしまった。
レダは泣きながら服を脱いで裸になり、目を瞑った。
唇を重ねると背伸びして俺を抱き締め、唇を強く当ててきた。
その日は夜遅くまでネットリ、ゆっくりとレダをかわいがってやった。
「サトウ様……本当に行っちゃうんですか……私……」
レダは終始泣きながら情熱的に俺の体を求め続けた。
▽
服を着て部屋を出ようとするとレダが服の袖を引っ張ってきた。
「あの……私……」
「レダ、言ってなかったが、今回の討伐一連の報酬でお前をくれと言って了承されているから一緒に行くぞ。」
「えー!もうばかー!意地悪……」
レダは泣きながら俺に抱きついて唇を強く当ててきた。
「もう……ずっとそばにいさせてあげる……」
その後また裸になり、昼まで体を求めあった。
「サトウのやつ気に入らねーな。あいつばっかり……」
「オスカル、次の魔大陸侵略のプランを練るわよ。ふふふ。楽しみだわ。」
エマヌエラは不気味な笑みをして笑った。
▽
「サトウ様、シャームに美味しい料理屋が出来たそうなので私をお誘いしても良いんですよ。」
レダは花が咲き誇る庭の、東屋に座る俺の膝の上でキリッとした笑顔で俺に進言してきた。
「そうだな。行ってみようか」
「うん!……いえ、はい。」
思わず笑みがこぼれたレダは急いで仕事モードの顔に戻った。
「ロベルタ!サトウ様と美味しい料理食べに行くわよ!」
「いいわね。すぐに準備しましょう。」
ここはシャームのロベルタの館だ。
ロベルタの植物魔法で年中、様々な花が咲く。
レダは料理が得意で、スイーツ作りが特に好きだったので、ロベルタの庭で採れる果物、砂糖などからケーキや自家製紅茶を作って開業している。
オープン時にはすごい人が来るが5日に1日程度、俺がいないときしかオープンしていない。
他の日はミリアム、モアナ、ヴァレリア、ルチア、レナータ、ココ、アリーチェ、イヴァ、カルメラ、グリゼルダ、ジュリアがゲートを使って遊びに来る。
「ロベルタ、早くいくわよ。」
「もう少しー。」
レダはクールな表情のまま、俺に抱きついてずっとキスをせがんでくる。
「レダずるーい。サトウ様ー。」
「ロベルタが遅いからよ。」
ロベルタとキスをして2人に挟まれてその店に向った。
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