第4話 星までの道
木々に囲まれた木造の一軒家。
陽光差し込むその部屋には無数の武器が飾られている。
「ラディ! 今日も横顔がステキね!」
そう短刀に話しかけているのは緑髪の少女、クレアだ。錬金術師である。
次々と武器に話しかけるクレアを、やれやれといった表情で眺める男が1人。
「おい」
「ペンドールちゃんは肌が荒れてるから後で研ぎましょうね~」
「……おい」
「ごめんねディスト君、もう少し裸でいてね。すぐに鞘を作ってあげるから」
「おい!!」
「ぎゃっ!?」
褐色肌の男――ロアンが大声を出し、ようやくクレアはロアンの存在に気付く。
「なによ、ロアンじゃない。アトリエに入るときはノックしてって言ってるでしょ!」
「ノックもしたし声も掛けた。気づかないお前が悪い」
ロアンはアトリエ内に充満する油臭さに顔を歪めつつ、クレアに近づく。
「ほら」
ロアンは自身の剣を鞘から抜いて見せる。剣はボロボロに欠けていた。
「いやああああああああああああああっっっ!!? ジキルちゃん……こんなあられもない姿に。ちょっとロアン! ジキルちゃんは女の子なんだからもっと大切に扱いなさいよ!」
ちなみに打ち鉄を使った武器が男、凌ぎ鉄を使った武器をクレアは女扱いしている。理由は打ち鉄は面が粗く、凌ぎ鉄の方が面が繊細だからそうだ。クレアにとって男は荒っぽいという印象が強いのだろう(おそらくヴィンセントのせい)。
「人間相手ならともかく、魔物相手だとさすがのお前の武器も壊れるな」
「いやいや! 魔物相手でも普通、こんな欠け方しないって! なにと戦ったの!?」
「……
「ばかぁ! 一角獣の角の三倍硬い魔物じゃない! そりゃこうなるわ!」
クレアは砕けた剣を
錬金窯は
「おい、分量も測らずに適当なことをするな」
「適当じゃないわよ。ほら、蓋閉めてちょうだい」
ロアンは不満を顔に出しつつも錬金窯に蓋をかける。錬金窯の蓋は特徴的で、大砲の筒のような物が中心にある。この筒から錬金物が出る仕組みだ。
錬金窯には手形がついている。これはマナドラフトと呼ばれるモノで、この手形に手を合わせると錬金術師の体内のマナとイメージを抽出し、窯の中の素材に浸透させるのだ。
素材+
クレアは手形、マナドラフトに手を合わせる。
すると蓋についた大砲からポン! と剣がシャボン玉に包まれて飛び出した。
シャボン玉はユラユラと木の葉の如く揺れて、ロアンの手元に落ちる。ロアンの手がシャボン玉に触れるとシャボン玉が割れ、剣が手元に落ちた。
ロアンは剣の出来を見て、息を呑む。
「……完璧に修復できている」
錬金術は分量が命。0.1gのズレで出来が天と地ほど変わることがある。
なのにクレアは一切分量を測らず完璧な錬金術を行使した。武器の錬成に関しては天賦……としか言いようがない。
「ふん、この調子なら昇級試験も大丈夫そうだな」
「昇級試験かぁ、私たちペア組み直したから
「ああ」
「ってことは次は
ヘルメス錬金騎士学園には8つのランクがある。
月に一回昇級試験を受けることができ、昇級試験に合格するとランクアップできる。
ランクが上がるごとに様々な特権が付与される上に進路の幅も広がるため、生徒は上のランクを目指して日々励んでいる。
「そういえばあなたはエヴァリーと組んでいる時はどこまでいったの?」
「……
「マジ!? すっご……」
基本、一学年の内に
ロアンがエヴァリーを手放したくなかった理由を改めて理解したクレアだった。
「やれやれ、この程度で『凄い』と言われても困るな。俺たちが目指すのはさらに上……3年に1ペアしか生まれないと言われる
「わ、わかってるわよ! それじゃ、早速試験の申込に行きましょうか。元
そう言って肩を回すクレア。
ロアンは呆れた様子で、意気揚々と駆け出したクレアの後を追っていった。
――――――――――
【あとがき】
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