召喚された幼女な勇者様と、巻き込まれJKの私
こう
第1話 …誘拐犯!?
「おかあさあああああああああああああああっ」
絶叫。
雷鳴。
とにかく耳を劈く、警報のように耳障りな高い声。
「みぎゃあああああああああああああっ」
子供の泣き声はよく通る。
小さい身体のどこから出ているのか。私はここよと全力で主張する、早く見つけてと親に訴える泣き声は鼓膜を潰す。
私の腕の中で海老反りになって、全力で腕を突っぱねて、しわくちゃな顔で涙鼻水涎を流す幼女は、全身全霊で泣き叫んでいる。
落とさないように抱きかかえても、やだやだと手足をばたつかせて暴れるので、満足にあやすこともできない。
全力の拒絶に、私も泣きたい。
「ちょっと、さっさとその子を落ち着かせなさい! 役に立たない子守ね!」
幼女のギャン泣きに鼓膜をやられた自称聖女が、両手で耳を押さえながら私に怒鳴る。
その怒鳴り声を受けた私は。
私は…。
「こ、子守じゃねぇえ――――っ!」
限界!!
私、
どっからどう見ても幼女な勇者におまけで召喚された、ガチで巻き込まれただけの女子高生である。
そう、私と幼女は異世界召喚された。
しかし私は完全に巻き込まれ事故。ミスでくっついてきた余分。
なんて理不尽なと怒り狂ったが、私の素行が悪かったから罰が当たったんだと思う。
肩に触れないボブカットは緑とインナーオレンジの夕張メロンカラー。テーマがメロンだったもんだから爪先も夕張色。カラコンは好きじゃないからつけてなかったけど、目元はオレンジと白でばっちばちに化粧をキメていた。
右に四つ左に三つ。両耳合計七つのピアス。制服のスカートは太ももが大胆に見える短さ。パンツ? 見る方が悪い。胸元のリボンは苦しいから引っかけているだけ。ブレザーのボタンなんか留めたことがない。だって胸元がメロンだからボタン苦しいんだよね。これを友達に言うと呪われる。
ワイヤレスイヤホンを装着して、大音量で音楽を聴きながら歩きスマフォでSNSを確認し、真っ直ぐ歩きたくて点字ブロックの上を歩いていた。
素行というかマナーが悪かった。
どこにでもいる女子高生の私。
学生鞄をリュックみたいに背負って、通学のため駅構内を歩いていた。
人混みマジうぜぇなんて毎日思っていた。学校かったるいなと思いながら友達に会うため足を動かした。ナンパもウザいしティッシュ配りもチラシ配りもお断りだし、宗教の勧誘も面倒だから外界の情報は全部遮断して歩いていた。
そんなんだから、自分が異変に巻き込まれたのに、気付くのが遅れた。
「や――――――――――っ!!」
自分の真横から響いた絶叫に、流石に驚いて顔を上げた。顔を上げて、飛び込んできた光景に絶句した。
だって、なんか紺色のローブを被った某児童書魔法ファンタジーに出てきそうな、あからさまな魔法使いです! なんて格好をした人たちに囲まれていたから。
なにこれ。どっきり?
呆然としたのは一瞬。
息継ぎの間を置いて、再び隣で悲鳴が上がる。
「おかああああああしゃああああああああああっ!!」
イヤホンしていてよかった。していなかったら鼓膜が破裂していた。
それくらいの大音量が真横から響く。
ぎょっとして真横を確認すれば、自分と背丈の変わらぬうさぎの人形を抱えた幼児が一人。
子供らしい細い前髪は、可愛らしいボンボンの付いたゴムでちょんまげ。白い袖に黄色いヒヨコ柄のワンピース着ている。
お尻がふんわり丸くて、おしめをしていることがすぐわかる幼児。足元は白い靴下に、ピンクのクマさんがついた靴。
明らかに五歳未満の幼女が、顔をくしゃくしゃにして号泣していた。
「おかああああああしゃああああああああああっ!!」
母親を求めて号泣していた。
なにこれ。
呆然とした私だけど…いやな予感で冷や汗をかいていた。
隣のギャン泣き幼女。
怪しいサークルを描く魔法使いコスプレの不審者。周囲には見慣れた格好に人が一人もおらず、皆怪しいローブ姿。
駅を歩いていたはずが、いつの間にか天井の高い、上品な室内。
外国の美術館とか教会とか、そんな格式高い建物っぽい。なんかでっかくてすごい柱が見える。あ、ステンドグラス。
ゆっくり周囲を見渡して、ギャン泣きする子供に視線を戻す。
母親を求めて泣く子供。
それを囲む怪しい集団。
見知らぬ場所。
腹の底が冷えた。
もしかしなくても。
「…ゆ、誘拐犯!」
甲高い声で叫んで、ギャン泣きする幼女を抱えてダッシュで逃げた。
素行もマナーも悪い私だけど、ギャン泣きする幼児を放置して逃げるほど人間性は捨てていなかった。
すぐ捕まったけど。
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