気ままで消極的な転生
XYLITOL
序章
転生
(まさか、自分が転生することになるとは…)
正直なところ、自分は死後の世界や転生なんてものは存在してほしくはなかった。
生きるということは思っているよりも苦痛ばかりで、世間ではよく「生きていれば良いことがあるから」なんて言って人を慰めたりするが、そんなものはまやかしだ。
8:2か、9:1と言っていいほど苦痛の方が人生の大部分を占めていると個人的には思っている。
だからこそ、人生なんて一度きりで十分だと心の底から思っていたし、できることなら死後は完全な無であってほしいと常々願っていた。
まあ、無意識に「転生したい」という気持ちが多少なりとも存在した可能性は否定できないけど。
(まあ、魔法とか死ぬまでに一回は使ってみたかったしなぁ。興味がまったくなかったって訳でもなかったし)
そう、おそらくだが男なら誰もが人生に一度は魔法を使ってみたいと夢に見るものだ。
生前、自分はそういったファンタジーという名の栄養を摂取するためによくネット小説やライトノベルを好んで読んでいた。ゲームも色々プレイしてきた。
好きでもない現実から逃避するためでもあったし、これらは生き甲斐でもあった。
まあつまりは、ファンタジー自体は大好きなのである。生きることが億劫な自分にとって、そういったファンタジー作品を体験して、自分ならこの状況この状態でどのような選択をして自分がどう思うのかを想像するのが、密かな楽しみでもあった。
(あの時代のVRじゃあ、現実と見紛うほどのものは体験できなかったし、本当に魔法を使ってみたいと思ったら、異世界に行くことぐらいが一番マシな選択だったのかもしれないな)
結局、2024年が自分にとって地球での最後の一年になった訳だが、2024年には自分の知る限りフルダイブ型VRというものは存在しなかったし、経験することもできなかった。
それらが実際に市場に出回るのがいつになるかと問われれば、まだまだ先だとしか言いようがなかった。法整備も技術も何もかもがフルダイブ型VRには遠く及ばなかったと言える。
(…転生してしまったものは仕方がないし、とりあえずは現状の把握に努めるか)
───少し前───
…眼前には、ただひたすらに白いだけの空間が広がっている。
ゲームで例えるならキャラメイクの部屋のような感じで、転生モノなら死後、見知らぬ神との初めての邂逅の場面でよく見られるような、ああいう部屋だと言えば伝わるだろう。
奥行きが見えないところまで広がっていて不思議な感覚を覚える。
「…? ……え、嘘だろ?転生なのか?」
転生モノのアニメが大量生産されている時代に生きている身として、こういう光景には非常に見覚えがあるというか、既視感があるというか。
もし転生だとするなら、正直信じたくはない。
自分がもし、異世界に何の能力も特典もなくいきなり転生したらどうなるだろうかと何度か考えることがあったが、どう考えても良い未来が見えてこなかったからだ。
異世界に唐突に放り出された場合、自分には自活していくための能力が足りない。その一点に尽きるだろう。
もし唐突に異世界に放り出されても、様々な知識など無かったとしても、人間社会に潜り込めさえすれば一見何とかなりそうに見えるが、これには言葉が通じないという罠がある場合もある。
よしんば運良く言葉が通じたとしても結局自分にはなんの能力が無いため、最悪な人生になる確率が非常に高い。
転生モノの主人公たちはなんだかんだ言って知識量は最低レベルでもなかなかのものだったし、そういう主人公たちと自分を比べれば、相対的に自分に知識量がないことは明確だからだ。定番の中世に転生して知識チートなんて、実際は並大抵のことではないのである。
サバイバルに関する知識は、インドアだったことから全くと言っていいほど持ち合わせていないし、怪我や病気に対する対処方法なんかも、なまじ健康体だったため同じ様に持ち合わせていない。
健康体と言っても、怪我を負ったり病気になったりが少なかったというくらいのもので、不摂生はしていた。
なら料理はどうか?
インスタントや冷凍などの出来合いのものが食生活の大部分を占めていたことから、言うまでもない。
できるとすれば、男飯にも満たないズボラ飯くらいだ。突発的に本格的な料理をしようと思ったりすることも無いことはなかった。
だが、本格的な料理となると材料や調味料なんかを買い揃えなければならないし、もちろん料理ができない人間の家に豊富な材料や調味料があるわけもなく、買い揃えるのが面倒になって結局頓挫する、というのがいつもの負のループだった。
では護身術や武術の心得ではどうだろうか?
こちらも、特に何か武術を習っていたということもなく、強いてあげるならば中高での柔道の授業くらいになる。当然、この程度では技術なんか何一つ身についてはいない。受け身はなんとなく好きだったが。
そもそも痩せ型で脚も腕も細く、運動なんかも能動的には行っていなかったし、筋肉なんかまるで無い。体力のほどは推して知るべしだ。
では、知識チートで必要になってきそうな科学に関する知識はどうだろうか。
これは、もはや義務教育中の子どもたちにも劣るかもしれない。小高学年から中学三年間では問題児と言っていいほど授業をまともに聞いていなかったため、このあたりの学年で習うことに関しての知識は欠落している。もはや義務教育を受けているようで受けていない。
何でこんな事になっていたかと言うと、既にこの頃からファンタジー作品にのめり込んでいたからだ。生粋のファンタジー好きと呼んでも良いかも知れない。
ファンタジーにかまけているうちに努力をするべき時期や期間を見失い、そのままズルズルと生きてきた。
さて、お分かりいただけただろうか?
自分の知識量の圧倒的な不足と、色々な努力をしてこなかったことによる見事な無能っぷりについて。
こうやって振り返って考えてみると、現代で普通に生きていれば、中世で必要になってくるような能力を意外にもほとんど養わないでいることになるのだ。
その分色々なことに時間を使える現代が良いか悪いかは個人による思う。
(だから転生なんてしたくないんだ。そこら辺を補う能力か何かを貰わなければ、ただの苦痛溢れる第二の人生のスタートになるだけじゃないか)
ここにきて、本格的に危機感を覚え始める。
だがまだ本当に転生だと決まったわけじゃない。幻覚を見ているだけというのも断然有り得る話だ。
まあ、勘というか、本心ではなんとなく転生だろうなとは思っているのだが。
転生だとすれば自分は既に一度死んでいることになるはずだが、そのあたりの記憶が全く無いのもそう思わせる一因である。
「さて、何が起きることやら…」
「ああ、お目覚めになりましたか?地球の人間さん」
「!?」
ビックリしたぁ…。
ふぅ、というか、こりゃあ言動からするに神様なのだろうな。
なんというか、認識阻害がかかっているみたいに神様の容姿が頭に入ってこなくて動揺する。
「私はデメトルと申します。それと、私の姿形は人間では捉えられない高位のものになりますから、認識できないのは普通ですよ」
「…流石に神様だなぁ」
しっかりと何を考えているか見抜かれている。神様あるあるとはいえやはり妙な感じだ。
まあこれは割り切るしかないか。
「そりゃあ、神ですから」
「…あはは。…うーん、こりゃ本当に転生か何かなんだろうか…」
経験してきた作品では転生モノの神様にも色々あったが、どうやらこの神様は物腰が柔らかい感じで安心した。
有無を言わせず転生とか、めちゃくちゃ悪趣味な神様とか、シンプルに嫌な神様とかの可能性も一応考えてはいたが、どうやら杞憂のようだ。
「そうですか?ありがとうございます。と、そうですね、まずそこから説明しないといけませんね」
そうして、神様は自分がここに来るに至った経緯を語ってくれた。
簡単に言うなら、どうやら自分は自室で寝ている内に突然死したらしい。そして自分は痛みを感じる間もなく死に至ったのだとか。
何とも、あっけないものだ。
うん、20歳とはいえ面倒くさがって一日一食とかザラにあったし、運動もほとんどしていなかった。不摂生をしていたといえば確かにそうだし、突然死という結果も十分にあり得るし理解できる。死んだ時の記憶が無いのも納得できた。
むしろ、あんな現実から苦痛もなく開放されたとなれば、諸手を上げて歓迎するべきことだと思えた。
「あなたはどうやら常日頃から希死念慮を抱いていたようですし、こういう結果も悪くはないのでしょうか。普通だったら喜べない状況のような気もしますけど」
そう言って神様は苦笑いをした。苦笑いといっても、姿を認識できないのでなんとなくそうなのだろうなという感覚だけなのだが。
「自分も普通だったら喜べないだろうなと思いますよ」
確かに普通だったら多少なりとも落ち込んだりするものだろう。家族、友人、恋人がいるなら、自分が突然死したということに悲しむかもしれない。
そういう人たちを残して死んでしまったことに負い目を感じることもあるだろう。
かく言う自分にも両親と妹がいたし、友人も一人だが存在した。彼らが自分の死に対してどう思っているのかはわからないが、自分の死体の第一発見者のことを考えると非常に申し訳無く感じる。
できれば死ぬときは他人に迷惑をかけたくないなと考えていたが、この死に方は思い切り他人に迷惑をかけてしまっている。
だが、落ち込むかと言われればそうでもない。自分が使っていたデスクトップPCに入っていたはずのHENTAIデータを完全削除する前に死んでしまったという唯一の心残りがあるだけで、あとはあの世界から開放されたという喜びがほとんどだ。
「なにはともあれ、自分の死に対して大きく動揺するような状態では無いようで助かります。今まで数人の方を異世界に転生させるお手伝いをさせていただきましたが、中には自分の死を知り大きく動揺したり泣いてしまったりした方がいて、対応に困ってしまって」
「ということは、これから行く世界には自分と同じ地球人が何人か居るということですか?」
「いえ、私は地球を含む複数の世界や星を管理していまして、そのそれぞれの世界に一人ずつ送らせていただいています」
この神様、一つの世界じゃなく複数の世界の神様なのか。思ったよりも大物なのかも。転生モノの作品では転生先の世界専属の神様がこういうことを担当することが多かったし、てっきりそうなのかと思っていた。
「ええと、中にはそういう神も存在していますが、これでも一応私は神の中では高位の存在になりますから、そういった神よりも転生の際には人間さんにより多くの特典を与えることができますよ」
特典…やはりあるのか。転生するしか無いのならもうここに一縷の望みを託すしか無い。
自分の知識量や経験の不足を補うことができるものであれば良いのだが…。
「あ、そういえばここまで聞いておいてなんですが、転生するというのはもう確定事項なのでしょうか?」
「そうなります、申し訳ありません…。あなたは死後の世界を希望しておらず、無を望んでいたというのは理解しているのですが、これは私達神でもどうすることもできない自然の摂理みたいなもので、勝手に曲げることはできないのです」
「そうですか…」
死後は無であってほしいというのは自分の、一個人の願望に過ぎないわけだし、自然の摂理だと言われれば自分にはどうしようもない。嫌ではあるが、粛々と従うしか無いのだろう。わがままを言うのはなんだかみっともないし。
「ということは、普通の人は死後、仏教で言うところの輪廻の輪のようなものに入ることになるのでしょうか?」
「そうですね、あなたのようにエネルギーを大量に内に秘めているのでないのなら、地球の輪廻の輪のようなものに還って行き、地球で輪廻転生を果たすことになりますね」
「なるほど…」
というか、サラッと言われたが内に秘めたエネルギーとはなんだろう。
魔力とかそういう類のことか?大量にあるということは、転生先でも多少は楽になるだろうか。
特典やら魔力やらは、先行き不安な自分にとってはあればあるほど助けになりそうだ。
「はい、エネルギーは魔力とも言い換えることができますね。あなたはその含有量が非常というか、異常に高く、そのまま輪廻の輪に戻ってしまうと何が起きるかわからないという理由から、あなたを神主導で転生させることになった、ということと、地球では御存知の通り魔力が使えないから、というのが転生の理由でしょうか」
「何が起きるかわからない、というのは一体?」
「例えば、あなたのような大量のエネルギーを持つ魂が輪廻に加わることで、他の多数の魂にも何らかの影響を与える可能性があります。その影響の良し悪しはさておき、そういった例外が発生することは世界の緻密なバランスが崩れることに繋がり、好ましくないのです。そして、あなたの魂もそういった偶発的な例外から生まれたことにより異常に多いエネルギーをその身に秘めることになった、というわけです」
「なるほど、その大量のエネルギーは自分になにか悪影響をもたらしたりするのですか?」
「いえ、世界のバランスが崩れてしまうのが良くないというだけの話なので、あなた自身には特に悪影響を与えることは無いと思われます。その、例外から生まれていらっしゃる分、何が起きるかわからないため私にも断言することはできないのですが、地球でのあなたもそのエネルギーを内包していましたが、特に悪影響があったようではないので」
確かに、言われてみれば生前の自分も同じエネルギーを有していたはずだが、特に何かあったということも無かったしな。
そして、この神様も全知全能の神というわけではないようだ。神とはそういうものなのか。
ともかく、大量の魔力による悪影響がないならそれでいい。メリットだけというのは性格上信用ならないが。
「全知全能となってくると、私は神において最高位であるセウス神しか存じませんね。それと、''あなた自身''に影響は無いですが、他人には影響を及ぼします」
「やっぱりそうなりますか」
そんなことだろうと思った。メリットのみをもたらしてくれるものというのは、早々ないのがお決まりの話だ。デメリットがあってこそようやっと信用に値し始める。
「その他人に与える影響というのはどのようなものなのでしょうか?」
「一番わかり易いところで言うならば、これから転生する予定の世界、エリュシオンには他人の魔力を視ることができる存在が時折います。そういう存在にあなたの魔力を視られた場合、あまり良いことにはならないと考えます」
ふむ、転生先の世界はエリュシオンと言うのか。神話などには詳しくないから分からないが、なんだか聞き覚えのある五感だ。
「それは人間や魔物に視られる、ということでしょうか?」
「はい、そうなります。人間にそういう能力を持つものは珍しくはありつつも一定数存在しますが、魔物に関してはそういう能力を持つものはそれなりに存在しています。視るということでなくとも、勘や特有の能力で同じことをする存在もいますね」
「あの、それって結構面倒なことになりそうな気がするのですが…」
「安心してください、わざわざ転生させるのですから、そういった点もサポートさせていただきます」
とりあえず助かった。転生して人間や魔物に狙われでもしたら、今のままの自分では対処のしようがない。
「具体的には、どのようなサポートを?」
「そうですね、ではまず、スキル【完全隠蔽】を覚えていただきます。このスキルは魔力を隠蔽することはもちろん、能力値や所有スキルも隠蔽することができ、偽のステータスを作りだせます。また、気配などあらゆるものがその対象です」
最高のスキルだ。あまりに良いスキルをもらったりするのに罪悪感のようなものを生前なら覚えたかもしれないが、正直今は必死だ。そんなものは気にしている場合ではない。
今ここで生きていく際に助かる能力を手に入れられなければ、それがそのまま直接自分の生死に影響する。少しでも安心できる要素を増やしたいところだ。
というか、やっぱりスキルという概念もあるのだな。魔法さえ使えるならと思っていたが、スキルも魔法のようなものだし、あって困ることもないだろう。
「スキルというのは発動に魔力などが必要だと思うのですが、そのスキルは自分の魔力的にどのレベルなのでしょうか?」
「安心してください。【完全隠蔽】はあなたの魔力の場合何ら問題なく運用できます。常時発動型のスキルですが、あなたの魔力総量には遠く及びません。そしてこれから選んでいただくスキルに関してもそれは同じです」
「スキルに関しては分かりました。そういえばエリュシオンに魔法は存在しますか?個人的に一番気になっているところなのですが…」
「ふふ、はい、魔法は存在しますよ。4つの基本属性、4つの上位属性、そして、これは現在この世界で殆ど知られていませんが、それ以外に特殊な属性が存在しています。基本属性は火、水、風、土。上位属性は雷、氷、光、闇。特殊属性は空間になります」
おお、このラインナップ、王道的で素晴らしい。あわよくば空間属性を持つことができれば最高なのだが…。
「ちなみに、自分の属性とかって…」
「あなたが望んでいる空間属性は、転生した人間には必ず備わっているものですから、あなたも扱えますよ」
マジか!これは嬉しい。転生作品の空間属性といえば万能かつ強力で、もし自分が属性を手に入れられるなら、空間か時間のどちらかだと言えるくらい好きな属性だ。
「空間属性が特殊なのはそういう理由からですね。あなたには他にも基本属性、上位属性ともにすべての才があります。突出しているのは空間属性の才です」
え、なんかチートすぎるような。
うーん、いや、でもためらってはいけない。快適な異世界ライフのために甘んじている状況ではないのだ。
「もちろん、才があるというだけであり、訓練を行わなければ強力だとは言えません。空間属性は最初からある程度使えるとは思いますが」
「そう…ですか。分かりました、なんとか頑張ってみます」
努力は非常に苦手だが、魔法が使えるとなれば話は別だ。好きなものに関しての努力は人一倍できるのだ。
それに、四の五の言っている場合ではない。今から行く世界で訓練をちゃんとやって自活していくための能力を身に着けなければ、せっかくの異世界も思う存分楽しめなくなってしまうからな。
「あの、それで転生先の自分ってどうなるのでしょうか?この体のままですか?それともどこかの家の赤ん坊として生まれ直すとかですか?」
「あなたは、ヤヌスという王国のリーベル子爵家の次男として、エリュシオンにおけるアルトリア歴522年、ノークライスの月の21日、ルミの日に生まれ直すことになっています。平民や男爵でも良かったのですが、ちょうどリーベル子爵家領主が剣術について教えることができる技量があるため、ちょうどよいと判断しました。子爵より上の爵位となるとしがらみも多くなっていきますので、それも判断の一助になっています。そして次男であれば家を次ぐということも無いでしょうから」
「分かりました。素晴らしいです」
「エリュシオンにおける月と曜日については…」
異世界の月の名前の例が、
1. アクシャル - 新しい生命が芽吹く月。春を告げる月。
2. ルーファス- 風が強く吹き、空が澄む月。
3. ノークライス- 成長と豊穣を象徴する月。農業が盛んになる季節。
4. ミルティア- 夏に向けて温暖な気候になる月。喜びや豊かさの意味が込められる。
5. ゼフィリス- 南風が強まり、海や川の恵みが豊かになる月。
6. タナビル- 暑さの最盛期。耐える心を象徴する月。
7. エシェラ- 森林が色づく月。静寂と感謝の意味を持つ。
8. クレイン- 秋の収穫期を象徴する月。
9. フェルネス- 温かさが薄れていく準備の月。秋が深まる時期。
10. シャーネス- 冬の入り口。冷気と月光が映える月。
11. ヴィサリス- 静寂と休息が重んじられる月。冬の中で光を待つ月。
12. ソルベイン- 冬の終わりを告げ、来る春の再生を待つ月。
異世界の曜日の名前の例が、
1. ルミの日- 光を象徴する日。新しい週の始まりにふさわしい。
2. ヴァイアの日- 大地を象徴し、安定や休息の日。
3. イーグリムの日- 火を象徴する日。活力や挑戦の日。
4. ネフィスの日- 水を象徴し、知恵や変化の日。
5. セレスの日- 風や空を象徴する日。広い視野を持つことが求められる。
6. サリエルの日- 戦や鍛錬を象徴し、勇気を鼓舞する日。
7. アルンの日- 休息や祈りの象徴する日。週の締めくくりにふさわしい。
それぞれ日本の1月から12月まで、曜日は月曜から日曜までに相当するらしい。
月における日数もほとんど日本のものと同じだそうだ。
こういう異世界の月や曜日って日本と数が合わなかったりしてゴチャゴチャになることもあるけど、エリュシオンではほとんど日本と同じか。わかりやすくて非常に助かる。
まあ正直今言われただけでは覚えられないので、生まれ直してから覚えておこう。この概念を知れただけ良かった。
というか、デメトル様、最高か?こちらの事情をよく汲んでくれるし物腰も良いし、異世界転生の幸先は絶好調かもしれない。
「あのー…はは、そこまで褒められると照れますね…。」
「ああ、えーっと」
そうだ、ダダ漏れなんだった。他人に対して直接褒めたりすることのない人生だったから、こういうことには慣れないな。
「ゴホン、さて、最後にスキルを選んでもらいます。」
きた、ここは転生モノの大一番。ここでの選択が人生を思い切り左右する。気合を入れていこう。
「では、こちらから10個ほどスキルを選んでください」
そう言うと、自分の眼の前に同名なディスプレイのようなものが浮かび上がった。そしてそこにはスキルがズラッと並んでいた。
【成長促進】【超回復】【魔力自動回復】【体力自動回復】【魔の才】【武の才】【鑑定】【鑑定妨害】【全耐性】【不老不死】【召喚術】【生産の才】【転移】【予知】【分身】【精霊術】【魅了】【美形】【物質変換】【死霊召喚】【ゴーレム創造】【錬金術】【調理】【鍛冶】【裁縫】【農業】【剣術】【槍術】【弓術】【盾術】【アイテムボックス】【言語理解】【オーバーチャージ】【弱点看破】【読心術】【テレパシー】【催眠】【変装】【盗み】【結界術】【夢操作】【無詠唱】
なかなかあるなぁ…。10個もあればかなり強くなれるのではないだろうか。
よし、本気で選ぶか。
───30分後───
「うん、よし。決めました。この10個にします」
ディスプレイをタッチして欲しいスキルを10個選んだ。自分が選んだスキルは、
【無詠唱】【言語理解】【全耐性】【鑑定】【魔の才】【魔力自動回復】【オーバーチャージ】【成長促進】【結界術】【武の才】だ。そして最初にもらった【完全隠蔽】
そして、選んだスキルの詳細だが、
【無詠唱】
詠唱せずに魔法を発動することができる
【言語理解】
あらゆる言語を理解できるようになり、その場に応じた言語を扱うことができる
【全耐性】
すべての異常状態に対する耐性を獲得する
【鑑定】
あらゆるものを鑑定することができる
【魔の才】
魔法に関するあらゆる才能を強化する
【武の才】
武術に関するあらゆる才能を強化する
【魔力自動回復】
魔力が自動回復する
【オーバーチャージ】
魔法発動に必要な魔力に対して更に魔力を重ねることができるようになり、限界を超えて魔法の威力が上昇する
【成長促進】
あらゆる才能の成長を促進する
【結界術】
魔力を使用し、様々な結界を作ることができる
せっかく魔力が多いのならそれを活かす魔法特化にしたほうが良いのではと考えたので、魔法寄りの構成にした。
【アイテムボックス】や【転移】という転生モノでも重要そうなスキルを選ばなかったのは、今まで読んできた転生モノでもそうしていたものがあったように、空間属性で補えられると考えたからだ。
空間属性でアイテムボックス、または収納や転移ができないのなら、それはもう空間属性とは言えないと個人的には思う。
さて、現実問題、やっぱり見知らぬ世界で【言語理解】のようなスキルは必須だろうし、【鑑定】なども地球と何もかも違う世界ではやはり欲しいところだ。
【武の才】だけなぜ魔法寄りのスキルではないのかというと、生前のままだとどう考えても転生先の厳しい世界についていけないと考えたため、少なくともこれくらいはと思い取得することにした。
おそらく子爵家でも武術指導を受けるだろうし、取っておかねば後が怖いのだ。
「分かりました。ではこれらのスキルを進呈しますね」
「ありがとうございます。助かります!」
「いえいえ」
さて、何か聞いておくべきこととかあっただろうか?
今なら大抵のことは聞けば分かりそうだ。
「一つ良いでしょうか?」
「はい、なんでしょう?」
「もしエリュシオンでまた死んだら自分はどうなるのでしょうか?エリュシオンの輪廻に加わるとかでしょうか?」
「おそらくはそうなると思います。あなたが転生しないといけないのは地球では魔力を扱えないからであり、エリュシオンでは問題なくその魔力を扱うことができるので」
そうか、まあ地球の輪廻に戻りたいとは思っていないし好都合か。
「分かりました。ありがとうございます。今後はもうお会いすることは無いのでしょうか?」
「エリュシオンでの死後ではまたお会いするかもしれませんが、それ意外だと場合によりけりだと思います」
「なるほど、ありがとうございました。エリュシオンで頑張ってみようと思います」
「はい、応援しています。…それでは転生させていただきます」
さて、第二の人生、少し頑張ってみるか。
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