スターカード

ダメ社員

第1話 独裁政治と反逆者

 ここは昼休みの12時20分の小学校の校舎。赤髪の少し背が低い少年が走る。廊下を走る。追っ手から逃げるために必死に走る。少年を追うのは4~5人の少年。

「おい待てやコラ!お前は先週の掃除前机運んでない上に罰ゲームサボってるんだから1ヵ月休み時間無しなんだぞ!!」

「嫌だね。なんで机運び忘れてただけでそんな事しなきゃいけねぇんだよ……ってしつこいなっうわぁ!」

「はい捕まえた~。燈真は今日も休み時間無しな~。」

 逃げていた少年は逃走及び取っ組み合いの末捕まり、教室に連れ戻される。そして彼を追いかけていた少年の集団は燈真と呼ばれる少年を彼の椅子にロープで縛りつけた。

「ちくしょうが……。ロープほどけよ。図書館行かせろよ。漫画読みてぇんだよ…。」

 縛られた少年が文句を言うと、髪が長く黒ずくめのファッションに身を包んだ少女が彼の椅子の前に歩いて来て彼を見下ろした。

「無様だな。ちゃんと机を運ぶなり素直に罰ゲームを受ければ縛らなかったものを。」

「……黒美てめぇぇぇぇぇぇ!!」

「黙れクズ。そこで大人しくしてろ。この下等生物が。」


 〇〇ヶ丘小学校の5年1組の教室掃除は掃除前に自分の机を運ばせるために机を運ばなかった生徒に罰ゲームをやらせていた。机を運び忘れた者は黒板前に専用のノートに名前を張り出される。罰ゲームの内容は宿題とは別に漢字ノートをやらされたり、腕立てや腹筋をやらされる。そしてそれらの罰ゲームをサボった者は、休み時間無しと称して休み時間に何もさせてもらえなくなる。教室掃除のリーダーの「夜乃 黒美(よるの こくみ)」という冷酷な少女には基本的には誰も逆らえないのである。

 このような教室掃除の独裁政治に逆らう1人の男がいた。彼の名は「赤城 燈真(あかぎ とうま)」。1ヶ月くらい前に机を運び忘れてから罰ゲーム宣告を受け続けているが、教室掃除に反抗してサボり続けた結果1ヶ月の休み時間無し宣告を受けた。休み時間の度に逃げるが教室掃除や他のクラスメイトに捕まって椅子に縛られるのがお決まりだ。教室掃除が気に食わない燈真は今日も暴れる。ある時は教室の黒板に「罰ゲームやめろ」と大きく書いたり、ある時は罰ゲーム宣告のノートを破ってゴミ箱に捨てたりした。因みに今の罰ゲームノートは5冊目である。しかし、燈真が暴れる度に彼は教室掃除のガタイのいい男子に取り押されられ、黒美に暴言を吐かれるのがオチである。

 学校の帰り道、燈真は友人と歩いていた。彼の名は「青葉 ハヤト(あおば はやと)」。燈真と同じクラスで、教室掃除と対立する彼の数少ない理解者のクールな性格で背が高い男である。

「今日も派手に暴れたな。」

「見てないで助けろよ……。」

「ごめんごめん。僕も罰ゲーム反対だし、教室掃除の事潰したいと思っているよ。黒美とか偉そうでムカつくんだよね。」

「じゃあなおさら助けろよ。」

 ハヤトは立ち止まる。

「本当は燈真の事助けたいと思っているけど、解決策が思いつかないんだよね。先生に教室掃除のやり方おかしいと思うって言った事もあるし1回それで罰ゲームも止まったけど、あいつらまた再開したしな。それも先生に見つからないようにやってる。」

「はぁ……。マジであいつら倒したいんだけどな……。じゃあなハヤト。」

 燈真は家に帰り宿題を終わらせた後、自分の部屋の窓から夜空を見上げていた。

「あいつらと戦える力が欲しいなぁ…。」

 燈真はいつも教室掃除に取り押さえられる自分の無力さが悲しくなり、目から涙が零れた。

「ちくしょうが……!」

 その時、夜空を流れ星が駆けた。流れ星が夜空に消えた時、燈真の右手に手の平サイズの固いものが収まる感触がした。

「なんだこれは……。」

 いつの間にか右手に来た物体は赤い宝石のような見た目で部屋の灯りで反射していた。赤く輝く物体をよく見ると何か英語が書いてあった。

「なんだ、Star Card, Ready Fight…?」

 学校でたまにある英語の授業でなんとなく見た事があった英語だったので読む事ができた。その瞬間、宝石は反射ではなく自ら強い光を放った。燈真の頭の中に低い声が響いた。

「私が力を貸そう。」

 声が聞こえた次の瞬間、1メートルくらいの赤いドラゴンが炎を纏って現れ、燈真の周りを1週飛んだ。ドラゴンは幻なのか、部屋を少し飛んだら消えた。その次の瞬間、宝石が小物入れのように開いた。その中には40枚くらいの見た事もないカードの束が入っていた。

「なんだこれは……。」

 燈真は困惑しながらカードを手に取った。






























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