お食事、ご宴会のご用命は八ツ釜亭まで!

ファイセルは大衆食堂たいしゅうしょくどうやツ釜亭がまていていに到着した。


なんでも、ルーネスとおりが出来たころから存在している飲食店らしい。


創業時から続く秘伝のスープやダシを8つの巨大なかまで煮ている。


そこからこの店名がついたという。


学院に近い場所にあり、料理もお手軽な値段なので生徒のいこいの場となっている


椅子イスの席だけでなく、床張りの部屋もいくつか完備かんびしている、二階建ての非常に大きな店だ。


今日は休暇入りたてという事もあり、ここも学生たちで盛り上がっていた。


店の入り口には既にチームメイト3人が集まっていた。


「お~い、ファイセル君、ここここ!!」


金髪のポニーテールをらして元気に声をかけてきたのはラーシェだ。


笑顔で手をひらひらと振ってきた。愛嬌あいきょうのある仕草である。


今は白めの肌色だが健康的に焼けているときもある。


天真爛漫てんしんらんまんを地で行く性格でチームのムードメイカーだ。


正義感が強く、女子には珍しい熱血な性格である。


悪は黙って見過ごさないが座右のめいらしい。


やや血の気が濃いが、女子らしいところは女子らしく、スタイルもいい。


クラスでは男女問わず誰にもしたわれるタイプだ。


ファイセルは優柔不断気味な自分より、彼女のほうがリーダーに向いているだろうと思っていた。


専攻は肉体強化で、魔術で自身を強化した肉弾戦を得意とする。


俊敏性しゅんびんせいと反射神経には定評がある。


特に素手での白刃取しらはどりからの武器破壊が得意だ。


手加減を知らず、何本もの武器を壊しているので、裏ではソード・ブレイカーとして恐れられている。


だが、試合後に必ず「ゴメンね!」と笑顔を見せられると怒るに怒れない。


「よう、珍しくちょっと遅かったじゃねぇか」


ガシッと肩をつかまれて振り返ると、チーム内もう一人の男子が来ていた。


彼はザティス・アルバール。


服装は着古きふるした魔法使いのローブを荒っぽく羽織はおっていた。


ガタイが良く、身長もファイセルを見下ろすくらいはある。


やや顔立ちが濃く、眉毛まゆげももみあげも濃い。


全体的にアウトローな雰囲気を持つ青年だ。


ただ、その笑顔からは時折、少年を垣間見かいまみることが出来る。


3年留年しており、同級生と言うよりは兄貴分である。


遠距離の魔術に憧れて学院に入ったのだが、接近戦しか使いこなせなかった。


そのまま意地を張って3留したという苦労人だ。


かつては酒にハマりさんざん飲んでいた。


そして酒場でケンカを売り売られるというすさんだ毎日を送っていた。


最初は負けてばかりでボコボコにされ、有り金を巻き上げられたりしていた。


だが、ケンカを繰り返していくうちに自分に適した戦い方を悟ったらしい。


そして学科を変えて以来、ストリートファイトでは負け知らずで留年もしていない。


今は闘技場コロシアムに熱を上げている。


そして次に合流したのが一緒にビンを買うのを手伝ってくれたリーリンカだ。


ほとんど凹凸おうとつのない体格で、スタイル的には見向きもされないタイプである。


しかし、噂によるとその瓶底眼鏡びんぞこめがねを外すと素顔はとても美人らしい。


ファイセルとしては眉唾まゆつばモノな噂ではないかと思っているが。


美しい青色の長髪の持ち主で、後ろ姿を見ただけでリーリンカとわかるほどだ。


チームの女子の中ではもっとも髪が長い。


可愛げのないしゃべり方で、一見して無愛想ぶあいそうに見える。


だが、話してみると人懐ひとなつっこく、チームメイトからは可愛がられている。


ファイセルにとって、彼女は性別を意識することなく話しかけられる親友だ。


チーム内で男子と女子とのけ橋になっている一面もある。


彼女はなんだかんだで色々とファイセルに押しつけてくる。


そのため、それなりには頼りにされているようではあった。


専攻は魔法薬学だ。


主に液状の薬に魔力を込めて魔法薬を生成するのが得意だ。


マヒや毒などを引き起こす奇襲攻撃。


飲み薬や塗り薬として使い、傷を癒す。


魔力を回復できたりする便利な技術である。


チーム内では唯一、貧しい東部の出身だ。


学費などはほとんど奨学金しょうがくきんに頼っている。


もっとも特待生に選ばれているから、払わねばいけない金額はあまり高くないようだが。


学院は貧しくとも、留学生であっても、亜人であっても受け入れるふところの深いところだ。


だから、国内外から受験生が大挙し、倍率の高騰こうとうに拍車をかけている。


「またアイネは遅刻か~。本当にマイペースなんだから……」


ラーシェはやれやれといった感じで肩をすくめた。


しばらく待っていると人の波にもまれるようにしながら、グラマーな女性がこちらにやってきた。


「皆さんこんばんは~」


遅刻しても何食わぬ顔をしているマイペースな女性はアイネ。


セミロングで毛先のウェーブがかった明るい栗色の髪をしている。


おしとやかで優しく、俗にいう癒し系で男子に人気がある。


ラーシェに比べるとだいぶ落ち着いた印象だ。


故に大して年齢差は無いのだが、ずいぶん大人びて見える。


ただ、少し天然ボケな節があってほっておけないところもある。


専攻は治癒術ヒーラーで傷を癒したり、病気の治療や毒の治療などができる。


時間をかければ大怪我おおけがをおっても延命可能だ。


回復だけでなく、不死者アンデッドを浄化する心得がある。


しぶとい連中を無力化できるのは貴重な戦力だ。


アイネは生まれたときにに平和、協調と慈愛を尊ぶルーンティア教の洗礼を受けた。


敬虔けいけんなルーンティア教徒なのである。


だからそれらの知識は幼いころから教会で学んでいるというわけだ。


このラーシェとアイネはクラスでも5本の指に入る美少女だ。


男子の間ではこの二人の魅力が語られて派閥はばつができている。


この2人のせいででファイセルとザティスはクラス中の男子から羨望せんぼうの眼差まなざしを向けられ、軽くやっかまれている。


そんな気はないのにとファイセルは参っていた。


一緒にチーム活動していると、いいとこ悪いとこが見えてくるので過度な憧れには賛同さんどうしかねるのだが。


これでもしチーム内恋愛にでも発展していれば血を見る事になるだろう。


2人が誰々に告白されたという話はしばしば聞く。


しかし、彼氏ができたという話を聞かないので、断っているのだろう。


5人揃ったのを確認して彼らは釜亭がまていへ入った。

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